刺し身はいずれ日本人の口に入らなくなる、そんな噂がささやかれている。欧米の和食ブームだけではなく、中国、タイ、インドネシアなど新興国の中間層から魚介類の需要が高まり、価格の急騰につながっているのだ。このままでは、高くても魚を食べたい外国に対して、安いものしか買わない日本の「買い負け」が顕著になる。刺し身や焼き魚が高級品になる未来に対し、私たちは何ができるか。『 安いニッポン 「価格」が示す停滞 』(日本経済新聞出版)より抜粋する。 「安いニッポンが続くと、庶民の味方だった刺し身に、手が届かなくなる日が来るかもしれない」 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストはそう危惧する。 水産庁の年次報告「水産白書」によると、「買い負け」という言葉が話題になったのは、2003年ごろのこと。 この頃から欧米やアジアで健康志向が高まり、和食ブームで高級食材としての魚の需要が急増。その結果、水産物が高
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