個人的なことも含めて、2024年は悲しい別れが多い年だった。 年齢を重ねれば別れも増える。それは必然かもしれない。だが、たとえそうだとしても、大切な人との別れに慣れることはない。僕は今年、心が割れてしまいそうな苦しみを何度も味わった。 2024年3月8日もそうだ。 突然訪れた鳥山明先生逝去の報せも、耐えがたく悲しい出来事だった。 僕がドラクエのスタッフになって間もない頃、業界のベテランの先輩と食事をご一緒させていただいたことがある。その方は出版系の大ベテランで、まだ新米の僕たちに、業界の裏話など面白い話をいくつも披露してくださった。 連れていってくれたのは六本木で、店の名前は忘れたけど床いっぱいにピーナッツの殻が敷き詰められた小さなバーだった。六本木自体が初めてだった僕にとっては、目に映るものすべてがキラキラして見えていた。 その先輩は鳥山先生と旧知の仲で、ご自身があるキャラのモデルなのだ
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