ヒッポの司教。西方教会最大の教父。恩寵の博士。アフリカ人にして西洋の教師。そして、牧会者。伝記としては、P.ブラウン『アウグスティヌス伝』(出村和彦訳、教文館)が白眉。 1.生涯の概略 アウグスティヌス(Aurelius Augustinus, 354-430)は、ヘレニズム時代末期(古代末期)の354年、北アフリカの小都市タガステに中産地主の父パトリキウス(後にキリスト者となる)と熱心なキリスト教信者(カトリック教徒)モニカの長男として生まれる。父はローマ人だが、母はベルベル人だった。アウグスティヌスにとって母語はベルベル語であり、彼はローマに憧れつつローマに反感を抱いていたと思われる。また彼が若い日に遊学したカルタゴという場所は、かつて地中海世界に覇を唱えたフェニキヤ人の植民地であって、ポエニ戦争では象に乗った英雄ハンニバルがローマに対して奮戦した。対岸にある帝都ローマに対するアンビバ