■気象観測の黄門さま 奇特な人がいるものだ。国が行うべき仕事をたった一人で実行している。気象学者で東北大学名誉教授の近藤純正さんである。神奈川県平塚市に住む近藤さんは、この6年間、全国の気象観測所(測候所)などを130カ所ほど訪ね歩いてきた。気象観測の世界の水戸黄門だ。 そして今年2月には、岡山県津山市内の観測所横の土地の買い取りなどに必要な500万円を津山市に寄贈した。 どうして近藤さんは貴重な時間と生活資金を観測所のために投じる気になったのか。それは観測する気象要素の質が重要で、その維持の必要性を強く感じたからである。 今夏も異様に暑い。地球の平均気温は100年間で約0・7度高くなっている。日本の場合はより高く、1・1度の上昇とされている。 たったこれだけの変化で、猛暑が到来し、気候変動が起きるのだから、気候監視のためには精度の高い観測が必要なのだ。 ところがである。3年前の平成19(