
中国東南部に位置する江蘇省徐州市といえば、『項羽と劉邦』や『三国志』が好きな人ならピンとくる地名だろう。
周辺一帯は項羽が楚の首都(彭城)を置いた土地で、漢の高祖・劉邦の故郷。また後漢末期には三国志の英雄・劉備の最初の領地でもあった(ほか、大戦中に流行した小説や同名の軍歌『麦と兵隊』でも有名だ)。そんな歴史ある土地で、現在思わぬバトルが展開中だ。

天下を巡って争う項羽と劉邦(横山光輝『項羽と劉邦 若き獅子たち』より)。もっとも、現代中国の争いはもっとみみっちい
騒ぎの発端は、2017年6月下旬に中国国務院がゴーサインを出した徐州市の「城市総企劃(都市総計画)」が、市内にある豊県を「劉邦の故郷」と記していたことだ。これに対して、隣接する沛県の住民が「うちこそ本家」と激怒。対して豊県の住民は「すでに国家が決定したことだ」と反論し、ネット上においてプチ戦争の様相を呈している。
この記事は会員限定です。
さらに有料会員になると、すべての記事が読み放題!
PROFILE
Text by Minetoshi Yasuda
安田峰俊 ノンフィクション作家。多摩大学非常勤講師。著書『中国人の本音』(講談社)、『和僑』『境界の民』(角川書店)、『野心 郭台銘伝』(プレジデント社)ほか