地球防衛家族「八坂家」の結束が明確になった第3巻。
その前に、ハス太が八坂ママにプレゼントした“宇宙でただひとつの吸引力が変わらないサイクロン掃除機”のサイクロンボイスが、なんと若本則夫!
4話の「一人ひとりは小さな火だが、二人合わせれば炎になる」は、『トップをねらえ!』のオータコーチの名セリフ。オータコーチを演じたのが若本則夫。このセリフを伏線にして、掃除機の掛け声に起用するとは! なんという、もったいないキャスティング。
TV版一期から続くニャル子の油断ならないところは、意外なところで無駄に「大物」を使ってくるところにある。
もうひとつ今回の見所はエンディングだろう。クー子の思念を投射したかのようなファンタスティックなスクリーン映像をバックに、トランポリンで跳ねるクー子とクー音。クー子役の松来未祐とクー音役の柚木涼香のしっとりした歌い方がよくマッチしている。演出のセンスがいいな、と思っていたら、なんと鶴巻和哉! 3期があるとすれば、ぜひ本編のほうも演出願いたいところです。
ところで、『這いよれニャル子さんW』は、ハイテンション混沌ラブコメディとされているが、実はホームドラマ&コメディではないの? 地球人と邪神=宇宙人が一軒の家で、起居寝食を同じくしながら学校に通う。友達以上の結びつき、しかし夫婦ではない微妙な関係というのは家族、ないしは家族と同様ということになりませんか。
この中で唯一家族の一員になりきれていないのが、クー子。なぜならば、クー子が好きなのはニャル子で、真尋君のことは、「悪いけど、少年に興味はない!」とテレビ版1期第4話で全力で言い切っています。
そんな居候に寝食の場を提供し遊ばせるほど寛容な人物は、この地球には存在しない。普通であれば、早々にたたき出す。しかも、クー子はルーヒーにそそのかされて一度裏切っている。いくら八坂ママとゲームの趣味が一致しようとも、心を通わせない存在は家族ではない。
クー子をいかに八坂ファミリーに取り込むか。苦心惨憺して作り上げた結果が、この第5話、6話ではないかと(チェインバー的には)推測する。
第5話の特筆すべきところは、八坂家から一歩も外に出ず、お話が展開する。これぞまさしくホームドラマの典型。
ニャル子とクー子のジョーカージョーカージョーカートランプに続くサイクロン掃除機。ご飯を食べて、メタフィールド生成機による個室作り。三邪神それぞれ個性的な部屋模様。黄色尽くしのハス太の部屋。ニャル子グッズで溢れたクー子の部屋。意外に普通なニャル子の部屋。しかしながらニャル子の策略にかかってお風呂に誘い込まされる真尋君。ニャル子との合体絶命、いや絶体絶命のピンチにクー子が乱入。メタフィールド空間を破壊しかねないニャル子とクー子の闘争を、フォークパワーで一喝。反省するニャル子とクー子。
そこに宅配を装ったクー音登場。いきなりのポーズが北斗の拳。「おまえはもう死んでいる」の鉄板セリフ。
クー子の許婚という立場で八坂家を訪れたクー音。このままではクー子はクー音と結婚させられ、宇宙に帰らなければならない。まさか自分が好きなのは、ニャルラトホテプのニャル子なんてとても言えない。そんなこと言えば、ニャルラトホテプとクトゥグァの間で種族間闘争が巻き起こるのは必須。そこで、クー子は真尋との偽装婚約を思いつく。
演出がライトなのであまり深刻さはないが、ここから始まる真尋、ニャル子、クー子、クー音の緊張状態が、5話6話を妙に味わい深いものにしている。
一般的には日常回と呼ばれるストーリーになるが、確かにアクションもドタバタも控えめである。というよりほとんどない。
それらを期待する向きからすると拍子抜けかもしれないが、ホームドラマとして考えた場合、キャラの家族的結びつきを確認するためには、ここは抜かすことのできない大切な回だろう。
6話の最大の見所は、ニャル子役の阿澄佳奈の泣きの演技。クー子と真尋の偽装婚約者とはいえ、自分にもやってくれないラブラブの姿を見せ付けられ、焦りと不安にかられたニャル子は、けしからん下着姿で真尋君の寝室に這い寄る。
ここで涙ながらに自分の心情を吐露し、真尋君の本心を問い質すニャル子の独白。改めて阿澄佳奈という声優さんの演技力に感心。この演技を見るためにだけ、この第3巻を買っても損はない。
さて、最後は、クー子との徹夜のゲーム三昧に疲れて眠り込むクー音を、メタフィールド空間に閉じ込め、八坂家に再びいつもの日常が戻ってきた…、ホンマかいな?
すでに8月に入り残り3分の一となった朝ドラの『あまちゃん』だが、7月4日の放送で、「バールのようなもの」という聞き捨てならないセリフが! さらに7月9日の放送では、観光協会事務所の机の上に、どうにてもクトゥルーダイスとしか思えない小物が!
バールのようなものだけなら偶然だろうが、クトゥルーダイスが置かれていた時点で、ほぼ確信した。脚本家の某先生&スタッフは、ニャル子に影響されている!?
パロディや楽屋裏ネタを含め、両者には共通点が多い。おそらく「あまちゃん」放送終了後に明かされる真実。これによって、案外ニャル子の、作品世界とその制作手法は再評価されるのではないか。