地球46億年の歴史、地震のメカニズム、気候変動のからくり、日本列島の特徴、宇宙の成り立ちと進化……誰もが知っておくべき地球科学の教養。そのエッセンスが凝縮されているのが、「高校地学」だ。
本連載では、「最高の教養」である高校地学の中身を、わかりやすくご紹介する。地質学、古生物学、自然地理学、気象学、天文学、宇宙論など、幅広い学問分野の最新成果がまとまったその魅力を、存分にお楽しみいただければと思う。
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本記事は、『みんなの高校地学 おもしろくて役に立つ、地球と宇宙の全常識』(鎌田浩毅/蜷川雅晴・著)を一部抜粋・再編集したものです。
大陸移動説
現在の地球には、ユーラシア、アフリカ、北米、南米、オーストラリア、南極という6つの大陸が存在します。しかし、それらは最初から今の姿だったわけではありません。
1912年に、ドイツのアルフレッド・ウェゲナー(1880~1930)は、大陸移動説を発表しました。約3億年前には世界中の大陸がひとつにまとまっていて、これが分裂して現在の大陸の分布になったという学説です。世界中の大陸がひとつに集まったものを超大陸といい、約3億年前に存在した超大陸はパンゲア(Pangea)と呼ばれています。
超大陸パンゲア
ウェゲナーは、大陸移動説についていくつかの根拠を示しました。まず、アフリカ大陸の西側の海岸線と南米大陸の東側の海岸線が、大西洋を閉じるように近づけるとほぼぴったりとくっつきます。また、両大陸をくっつけると、地質構造もつながります。
北半球でも同様に、北米大陸とユーラシア大陸を近づけると、約5億年前に形成された北アメリカ東部のアパラチア山脈とヨーロッパ北部のスカンジナビア山脈がつながります。これらの山脈は、アパラチア造山帯、カレドニア造山帯と呼ばれています。
さらに、アフリカと南アメリカにおける約3億年前の氷河の分布や陸上生物の化石の分布などもつながります。たとえば、約3億年前に生息していた爬虫類のメソサウルスの化石が両大陸から見つかりますが、現在のように大西洋が存在していたら、メソサウルスは海を越えて別の大陸に行くことはできなかったと考えられます(図1─5─1)。
また、約3億年前に生息していた裸子植物のグロッソプテリスの化石は、アフリカ、南アメリカ、南極、オーストラリア、インドなどから見つかります。このような化石の分布から、約3億年前にはこれらの大陸がつながっていたと考えられます。
このような根拠をもとに、ウェゲナーは約3億年前には超大陸パンゲアが存在し、その後、各大陸が分裂して移動したと考えました。しかし、当時は大陸が動くしくみが不明だったため、大陸移動説を支持する学者はほとんどいませんでした。