企業の業績を示す「決算書」。さまざまな数字が並び,そこには現在の体力だけでなくその企業の将来をも指し示す“意味”が含まれている。ただし,見慣れていない人には複数の表にちりばめられた各種の項目や数字が,暗号のように見えることもあるだろう。
この連載では,主要なIT企業の業績を分析するための基礎的な会計の知識を解説する。最終的な目標は,実際の決算書を使ってその企業やIT業界の動向を理解すること。そのために,基礎的な知識から順を追って“数字の意味”を理解できるようにしていこう。
●決算書の全体像
(1)一定期間ごとの業績を判定する
(2)貸借対照表と損益計算書
●貸借対照表の構造
(1)ポイントは左右と上下
(2)流動性の有無で上下に配列
●損益計算書の構造
(1)利益は段階的に計算される
(2)営業利益と経常利益は似て非なる
●キャッシュ・フロー計算書の構造
(1)利益とキャッシュは一致しない
(2)フリー・キャッシュ・フローの概念
●財務分析
(1)収益性は資金提供者の立場で判断する
(2)代表的な収益性指標であるROAとROE
(3)ROAは売上高事業利益率と総資本利益率に分解される
(4)総資本回転率で企業の“ぜい肉”を判定する
(5)倒産に対する安全性を分析する
(6)長期的安全性は固定比率で判断する
●生産性分析
(1)基本は,インプットに対するアウトプットの比率
(2)売上総額だけでは企業の強さはわからない
●株主関連指標
(1)配当による還元「インカム・ゲイン」
(2)株価によるキャピタル・ゲイン
●損益分岐点分析
(1)固定費と変動費を見極める
(2)変動費中心型と固定費中心型に分ける (最終回)
筆者■金子 智朗 (かねこ ともあき) 【略歴】 コンサルタント,公認会計士,税理士。東京大学工学部卒業,東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。日本航空株式会社情報システム本部,プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント等を経て独立。現在,経営コンサルティングを中心に,企業研修,講演,執筆も多数実施。特に,元ITエンジニアの経験から,IT関連の案件を得意とする。最近は,内部統制に関する講演やコンサルティングも多い。 【著書】 「MBA財務会計」(日経BP社),「役に立って面白い会計講座」(「日経ITプロフェッショナル」(日経BP社)で連載)など。 【ホームページ】 http://www.brightwise.jp/ |