直訳すると「災害復旧」。様々な天災や人災によりコンピュータシステムが稼働できなくなったときに備えて、業務を継続するための代替手段を用意しておく体制を指す。

 2004年10月23日に新潟県中越地区を襲った地震で、被災地にある企業は大きな被害を受けました。停電に見舞われた地区では情報システムが止まり、業務の復旧に長い時間を要した企業も少なくありません。様々な業務がIT(情報技術)に大きく依存するようになった現在、システムの停止は企業活動を停滞させることを意味します。

 地震や火災などの災害によってシステム障害が発生した場合に、素早く復旧するための仕組みや組織体制を「ディザスターリカバリー」と呼びます。2001年に米国で起こった同時多発テロ以降、その重要性が再認識されつつあります。

◆効果
業務の停滞を防ぐ

 業務を停滞させないためには、災害が発生した際にシステムを障害から守るとともに、障害発生時の復旧体制を整備することが欠かせません。

 システム障害を防ぐには、ハードウエアやソフトウエア、データを二重化することが有効です。例えば、大手の銀行では、古くから同じ構成の勘定系システムを東日本と西日本に設置するといった体制を築いています。

 このほか、自社で運用しているシステムと同じ構成のシステムをデータセンターに預け、障害発生時に本番システムを切り替えるといった運用方法もあります。

 ただし、システムが復旧すれば、業務が継続できるというわけではありません。工場の設備や物流体制の障害といったことも含めて、総合的に計画を作らなければなりません。業務を継続するための総合的な体制は「業務継続計画(ビジネス・コンティニュティー・プランニング=BCP)」と呼ばれます。

 BCPとは、情報システム関連だけでなく物流手段や指揮命令体制、そして定期的な訓練の実施なども含めた総合的な対策を指します。あらかじめ、だれが何をすべきなのか手順を決めて訓練を重ねておくことで初動が早くなります。

◆事例
対策マニュアルを作成

 ヤマハ発動機は、東海大地震などの天災や自社の工場が火災を起こすといった様々なリスクに備えて、危機対策マニュアルを作成しています。有事に、製品供給をいつまで継続できるのかという検討を3日以内に実施し、7日以内に復旧後の増産計画を策定するといったように、いつまでに何をすべきかを明確に決めています。

 例えば、地震が起こった場合は、まず復旧対策本部を設置します。この本部内に、「情報システム」「物流」「調達」「生産」の役割ごとに対策部隊を設置することが決められています。新潟県中越地震で初めて、この復旧対策本部が活動しました。

(西 雄大)