日立製作所のICタグ

 日立製作所は9月2日、0.4mm角のICチップ「ミューチップ」にアンテナを“内蔵”したICタグを開発したと発表した。通常、ICタグはICチップとそれよりも大きなアンテナで構成される。今回はアンテナをICチップからはみ出さない大きさにして取り付けることで、従来のチップと同じ大きさのICタグを実現できた。中央研究所知能システム研究部研究主幹の宇佐美光雄氏は、「ICチップにアンテナを内蔵した形でICタグを実現したのは、おそらく世界で初めて」と話す。

 これまでのICタグは、生産規模にもよるが1個数十円から100円前後とコストが高く、適用範囲が限られていた。これはチップ製造後のアンテナ取り付けの際に、チップの4~5倍ものコストがかかっていたことが大きい。今回はこの工程が不要になることから、価格の大幅な引き下げが可能となる。井村亮ミューソリューションズベンチャーカンパニー長&CEO(最高経営責任者)は「2~3年後には確実に5円を切る」とみる。ICタグが普及するには、単価5~6円というのがひとつの目安と言われている。

 ただしアンテナが小さい分、ICタグのデータを読み書きする装置であるリーダー/ライターとの通信距離は短くなる。データを読み取る際にはリーダー/ライターと数ミリの範囲で「密着」させることが必要だ。その一方で、セキュリティ上のメリットもあると井村氏は指摘する。「離れた機器から自動的に読み取られることがなくなるので、心配されるプライバシの保護にも役立つはずだ」(同)。製品化には、早くても1年ほどかかる見通しである。

三浦 佳世=日経コンピュータ