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経営変革の切り札とされるDX。多くの日本企業が推進に取り組むが、「デジタル化」や「カイゼン」にとどまるケースが少なくない。本連載では、『まやかしDXとの決別! 生成AI時代を勝ち抜く真のデジタル事業変革』(横山浩実著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋、再編集。DXを真の事業変革につなげる要諦を考察する。
今回は、BPR(Business Process Reengineering)を前提にしたDXを実現するためのバックキャストアプローチと、捨てなければいけない「旧弊」について解説する。
アプローチⅡ――しがらみを打破し、先進技術を活用したビジネスモデルの決定
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■ 旧弊――現行を踏襲した個別最適のビジネスモデル
① BPR前提のビジネスモデル
第2章で述べた通り、DXのゴールである事業変革後のあるべき姿・目指すべき姿に対し、それをどのように実現し収益化するかについて、事業内容、事業オペレーション、実施体制(リソース)、営業・販売モデルなどを定めるものがビジネスモデルである。
DX時代のビジネスモデルは、デジタルの力を掛け算して事業変革を行うものであり、痛みにより生み出した成果を自身の果実にすべきものであり、そしてビジネス価値に対して適切な対価を設定すべきものである。
にもかかわらず、これまで多くの企業が採用してきたビジネスモデルは、現行の課題解決に終始するものになっており、抜本的な改革には至らないケースが非常に多く、新たな収益を得られるものではなかった。
目の前にある課題を解決することにフォーカスし、現在の業務プロセス上の支障になっている箇所を改善するための取り組みを行うものであるため、ビジネスモデルの事業オペレーションは現行のやり方の延長線上で決定されていた。
そのため、新たなソリューションを導入したり、既存のソリューションを大幅に刷新したりするケースにおいても、抜本的なBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を伴わないまま進行しているのである。