2月9日、港町・兵庫県神戸市にて「めざせ! 海技者セミナー IN KOBE」が開催された。同セミナーは、毎年、全国各地で順次開催され、海運事業者と船員志望者の雇用のマッチングを支援している。
過去最大規模の「めざせ! 海技者セミナー」
今年度最後の開催を主催した国土交通省 神戸運輸監理部によると、昨年は70社強の出展希望がありながら会場のキャパシティの都合で50社程度の参加しか受け入れられなかったことから、今回は3,800㎡の展示面積を有する「神戸国際展示場第3号館」に変更。
日本内航海運組合総連合会の協力に加え、初めて神戸市の特別協力を得るなどして、過去最大規模での開催が実現した。
出展した海運事業者は91社にのぼり、300名以上の船員志望者が来場。3隻の練習船に乗って訪れた海技短大の実習生をはじめ、兵庫県立香住高校や京都府立海洋高校といった水産高校の生徒や一般の求職者らが足を運んだ。
変わる内航海運業。各社、働きやすい職場環境をアピール
最近の就活トレンドとしては、適切で良好な労働環境が整っているかどうかが学生たちの就職先選びを左右する傾向にあり、内航海運業も例外ではない。
4,000トン以上の巨大なタンカーで石油類を輸送する「旭汽船株式会社」は、深刻な人手不足に警鐘を鳴らす。エネルギー物流の一翼を担っているからこその危機感なのだろう。「当社は、給与と休暇のバランスが優れています」と訴えた。
神戸を代表する「神戸製鋼所」グループが手がけた鉄鋼製品や鉄を作るための原材料を中心に海上輸送している「神鋼物流株式会社」は、定着率の向上を目指して働きやすい職場づくりに注力しているという。
「現在は、福利厚生の充実を図っています。福利厚生メニューの中から従業員が付与されたポイント内で好きなものを選択できる『カフェテリアプラン』を導入したり、乗船中に船内休日を利用して下船する際の旅費を支給したりするようになりました」
兵庫県姫路市に本社を構える「七洋船舶管理株式会社」は、船員派遣業にも携わっている。自社の所有船のみならず、さまざまな船に乗れるのが魅力だ。そんな同社では、平成30年に海技士免状を持たない高卒の女性船員が誕生して以来、女性の船員が毎年入社している。
「いち早く女性船員を採用し、女性も男性も働きやすい職場環境を整備してきました。今では女性船長もいて、性別や年齢、経験に関わらず、責任ある職務に就いていただいています」
会場には女性の来場者の姿も目立ち、積極的にブースを回って熱心に耳を傾けていたのが印象的だった。
広島県・尾道市にある「向島ドック株式会社」は、令和6年に「船員安全・労働環境取組特別賞」を受賞した企業だ。
「当社は船舶修繕事業も運営しているため、ライフスタイルによって海上勤務か陸上勤務を選択可能です。船員の人生に寄り添い、育児休暇や介護休暇などを必要な時期に取得しやすい体制にしています」
どの企業も労働環境の改善に着手している今、内航海運業全体が変わろうとしている。そんな様子が垣間見えた。
また、地元・神戸を拠点とする企業のブースにも学生たちが殺到。終始、人気を博していた。
港町・神戸で今年度最後を飾った「めざせ!海技者セミナー」は、大盛況のうちに幕を閉じた。