ナインティナイン矢部浩之の凄み
私はお笑い芸人の熱い話が好きです。普段語らない人が語る熱い話ならば、なおさらです。
先日の「めちゃイケ」でお酒を飲む企画がありました。お酒の勢いで語られた熱い話があったなかで、私は静かに語るナインティナイン矢部さんの言葉に凄みのようなものを感じてしまいました。
ジャルジャル福徳はナインティナイン矢部に憧れていた
2012年6月9日放送「めちゃイケ」(フジテレビ)
登場人物はナインティナイン矢部、ジャルジャル福徳。
「一番お酒が強いメンバーは誰か?」を決めるため、ただひたすらお酒を飲む「酒豪No.1決定戦SP」。最後まで寝なかった人が優勝となります。この企画には「めちゃイケ新メンバーとオリジナルメンバーの溝を埋める目的もある」と話す仕切り役のよゐこ濱口さん。
企画開始から10時間が経過したところで、ナイナイの岡村さんが脱落。最後に残ったのが、ジャルジャルの福徳さんとナイナイの矢部さんでした。どちらもツッコミです。2人っきりになると、「矢部さんに憧れてお笑いを始めた」とぶっちゃける福徳さん。照れてごまかそうとする矢部さんに構わず、その理由を熱く語り始めます。
お笑いで大事なのはツッコミか、ボケか
福徳さんが中学生のときに見ていた「めちゃイケ」。矢部さんがオファーシリーズ(マネージャー編)でお笑い養成所に行くと、正直あまり面白くない漫才をする若手コンビがいた。何かの流れで、そのコンビのボケはそのままで、ツッコミを矢部さんに入れ替えて漫才をしたところ、すごい面白いモノになった。
この光景に、衝撃が走った福徳さん。
福徳「アレ?と思って、お笑いってボケだけじゃないんや」
矢部「ふふっ」
福徳「ツッコミがお笑いなんや、と正直思ったんです、そんとき」
矢部「あ~、なるほどね」
福徳「んで、そんときにツッコミの大事さに気付いて」
矢部「いや、それは……」
福徳「同じネタやったのにツッコミさん変わっただけで、こんなに変わるんや!って」
矢部「(福徳の発言を苦笑いで聞きながら)違う違う、それは、お笑いである以上、ボケが一番じゃないとアカンねん」
福徳「……あっ、はい」
矢部「そう、変な人が一番じゃないとアカンねん、もうコレ、俺の持論やで」
福徳「はい……」
矢部「ボケがいないと、俺らは成立せえへん、変な人がいないと」
福徳「そうですね」
矢部「そう、やっぱ変な人が……大事やと思う」
福徳「はい」
(お酒の入ったグラスを持ち、福徳を見つめる矢部)
福徳「そうっすね」
このときの矢部さんと同じような発言をしていたツッコミ2人がいます。南海キャンディーズの山里さんとオードリーの若林さんです。そう、「たりないふたり」です。
「たりないふたり」をやって気付いたボケの重要性
2012年6月20日放送「山里亮太の不毛な議論」ポッドキャスト(TBSラジオ)
パーソナリティは南海キャンディーズ山里亮太。
ゲストはオードリー若林正恭。
「たりないふたり」で漫才を作っているときに喧嘩寸前まで行ったことがある、と南海キャンディーズの山里さんが言うと、
若林「あの~ほら、山ちゃんが」
山里「うん」
若林「あの~、あと1時間半ぐらいで、どっか入んなきゃいけないってとき、赤坂のカラオケボックスで、3人か4人だけで、それで1時間でネタの……」
山里「そう!作んなきゃいけない」
若林「設定出さなきゃいけないときに、俺がず~っと『その設定じゃあ、ダメじゃないですかね?』つってて」
山里「そう」
若林「みんなが『いいじゃん、コレで』って言ってて」
山里「『コレで行っちゃおう』つってね」
若林「異常な勢いで貧乏ゆすりしてたもんね、山ちゃん」
山里「してた」
若林「くふふふっ」
そのときの心境を語る山里さん。
山里「でも、絶対これは言葉に出しちゃいけないし」
若林「うん」
山里「ね、『いや、いいじゃん!コレで』って言うのも、若林君と俺の関係上、絶対違うと」
若林「うん」
山里「で、この『たりないふたり』で漫才を作っていく上で、やっぱボケの人のほうが、ボケの人の意見のほうが絶対大事だってことに、俺『たりないふたり』ずっとやってて気付いたの」
若林「あ~、そう」
山里「そう、ボケの人の出すモノに、ツッコミが根本にある人間は勝てないね」
若林「なるほどね、なるほど」
「たりないふたり」ではボケもやった若林さんは、
若林「いや、確かに、ボケやってみて」
山里「うん」
若林「やっぱボケの人間の肉声っていうか……じゃないと、もう一個上に行けないなっていうのは思ったね」
山里「いや、それはあるね」
若林「う~ん」
山里「絶対そうだわ、だからさ、ツッコミの人間がさ、ボケにこうやって欲しい、こう動いて欲しい……なんてさ」
若林「うんうん、ね!」
山里「これ難しいよね!」
若林「まっ、でも言っちゃうとお互いそうだからね」
山里「コンビとしてね、うちはね、一応ブレーンだからね」
若林「うちもそうだから」
山里「オードリー、南海キャンディーズの」
ツッコミはボケに勝てない。ボケの存在感なくして、高いステージには行けない。そう語る「たりないふたり」。
今までのツッコミは、漫才のツッコミでした。しかし、コントでツッコミ役を演じる芸人も、これまた同様のことを語っているのです。それは、東京03の飯塚さんです。
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東京03飯塚「機嫌よくボケてもらったほうが絶対面白い」
2012年5月8日放送「芸人たまご」第4回(フジテレビONE)
講師は東京03飯塚、北陽(伊藤さおり・虻川美穂子)。
人力舎のお笑い養成学校「スクールJCA」に現役のお笑い芸人がやってきて、講義を行う番組です。
JCAの生徒から「3人でずっとうまくやっていく秘訣は?」と質問された東京03の飯塚さん。
飯塚「うちは、角ちゃん(角田晃広)と俺と、2人で(ネタを)作ってるんだけど、俺がツッコミで角ちゃんがボケだから、あの~、ボケの人の意見を一応尊重してるね」
虻川「ほぉ~」
伊藤「これすごい(拍手)」
飯塚「これ……やっぱ機嫌よくボケてもらったほうが絶対面白いから」
(感心する生徒)
伊藤「じゃあ、譲る……」
飯塚「譲る譲る、ノッてるときのほうが面白いのよ」
(納得する北陽)
伊藤「でも、確かにそうですね」
飯塚「(質問してきた生徒に向かって)機嫌よくやってるほうが絶対いいよ」
この番組にアンタッチャブル柴田さんも登場していまして、ツッコミについて熱い講義をしてくれました。こちらも紹介させて下さい。
アンタッチャブル柴田「ツッコミは超勉強しないとダメ」
2012年6月11日放送「芸人たまご」第8回(フジテレビONE)
講師はアンタッチャブル柴田、ダンディ坂野。
質疑応答の時間。生徒から「誰にでもツッコミが出来るようになるには?」と質問されて、
柴田「どうやったら行けるか?っていうのも、多分、自分でツッコミの言葉が浮かべば、言えるわけじゃない、『これから消費税問題についてしゃべりましょう』といった時に、知識が無かったら入れないじゃん」
(生徒)「そうですね」
柴田「それと一緒だよね、そのボケに対するツッコミの知識があるからツッコめる、だからそういうのを自分の引き出しとしていっぱい持っとけば、ツッコめるんじゃないかな?と思うよね」
そして、この質問の答えに繋がるような言葉で講義を締めくくる柴田さん。
柴田「ツッコミとして言いたいのは、超勉強しなきゃダメっていうことですよね、カラオケとか俺、毎日行って、その歌う代わりに一画面ごとにツッコむの、それが切り替わったらまた次の人がツッコむみたいな、誰よりも早く、誰よりも長文で、誰よりも間を埋められる、っていうのを練習してたんだよね、だからみんな勉強して道具を持って、え~、これからステージに挑んでいただきたいな、と」
この話で思い出したことがあります。
かつて放送していたラジオ番組「松本人志の放送室」に、宮川大輔さんがゲストに来た時です。宮川さんは、天然素材というユニットでナインティナインと一緒に活動していて、彼らを若手時代からよく知っています。
そんな宮川さんが、矢部さんについてこう言いました。
あの人の努力は僕はスゴイと思います
そんな素振りを全く見せない矢部さん。そういう姿に凄みを感じてしまい、やっぱりお笑いはツッコミなのかも……と考えてしまいます。福徳さんが言ったように。