AIの進化がすさまじい。このまま人間の仕事は奪われてしまうのか。文筆家の御田寺圭さんは「AIは人間の知性を陳腐化させる方向に進んでいる。人間の『頭の良さ』を使った仕事はどんどん失われていくことになる」という――。
ダンベルを手にフロントランジをしている男女
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

「村上春樹風」の文章を当たり前のように出力する

私が参加しているとあるグループチャットでは「●●風(任意の作家やライターを挿入)の文体で**についての社会評論を書いてください」といったプロンプトでo1(※ChatGPTで知られるOpenAIが開発したAI)により出力された文章をそのまま貼り付けて遊んでいる人がいる。

もうすでに相当にそのレベルは高く、破綻のない文章を当たり前のように仕上げてくる。たとえば「村上春樹風」なら本当に村上春樹が書いているように見える。しかもそれは単純に文体を似せているだけではない。作家それぞれが持っているであろう考え方や発想の「角度」まで相当に酷似しているのだ。

こうした光景を目の当たりにすると、「ライティング」の仕事はいったいいつまで存在するのだろうかと思わずにはいられない。

「文章」はいつまで仕事だろうか

幸いにも私はいまはまだこうしてプレジデントオンラインのための原稿を書いているのだが、今後おそらく、どこかの出版社がAIによってそれっぽい文章を書かせて、編集者がそれにちょっと手を入れてリリース――といったワークフローを打ち出してくるだろう。書籍よりまずは雑誌やウェブメディアからはじめるのがボリューム的にも丁度良いかもしれない。

話のフォーマットが決まっている「こたつ記事」はいまの水準のAIでも十分なクオリティのものが出せる。たとえば、さまざまな雑誌でよく見かける「タワマン悲喜劇」的な記事はほとんど内容的なフォーマットが決まっている(憧れのタワマンを購入したパワーカップルのトラブルや転落を面白おかしく書くとPVが大きく伸びる)。書き手がAIであることを伏してしまえば、一般読者はそれがAIによって紡がれた文章であることを見抜くことは容易ではない。