※本稿は、金光隆志『戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
きっかけは書店で見つけた「赤い本」
経済学の書棚に並んだ赤い背表紙の一冊の本。
それが自らの人生を大きく変えることになるとは、想像もしませんでした。
当時、大学の法学部生であった私は、大型書店にしょっちゅう通っていましたが、いつもなら脇目も振らず政治か哲学のコーナーへと向かうのに、その日はなぜか経済学の棚に足が止まったのでした。
次の瞬間、私の目に飛び込んできたのが、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の創業者ブルース・D・ヘンダーソンが記した『経営戦略の核心』(ダイヤモンド社)でした。
何気なく手に取り、ぱらぱらとページをめくって、私はその本を買うことにしました。
経営に何の関心もなかった自分が、なぜ経営書を買ったのか。いまだに合理的な説明は難しいのですが、強いて言うなら「戦略」という言葉があったからでしょうか。国際政治戦略論に興味があったため、センサーにひっかかったのかもしれません。単純なものですが、家に帰って一読したときの衝撃は、いまだに覚えています。
異例だった「関西から新卒でBCG」
経営戦略とは、なんとダイナミックなのだろう。
ビジネスの世界に、これほど頭の切れる人がいるのか。
そうして、いてもたってもいられず、何が何でもこの本の著者がいる会社に入りたいと思いました。
それが私と経営戦略との出会いです。
当時、BCGは私の住む関西では新卒を募集していませんでした。そこで私は大学卒業生名簿にあたりました。個人情報保護も何もなかった牧歌的な時代、ご丁寧に勤め先と住まいの住所が載っていました。一人だけいたBCG在籍者を見つけ、その先輩に熱い思いを綴った手紙を出しました。しかし残念ながら、音沙汰なし。まあ、急に知らない奴から手紙が届いたら気持ち悪いですよね(苦笑)。
ところが、偶然にも東京の大学の友人から「東京ではコンサルティング会社が流行っていてマッキンゼーやBCGが新卒を募集している」との情報を聞きつけました。
「自分は関西にいるけれど、どうしても応募したい」とBCGに直談判して、おそらく関西から一人だけ応募が許され、インターンの採用試験を経て入社にこぎつけました。思えば、ずいぶんユニークな就職活動でした。