わたしはその日「行った先の飲食店で男性に逆ナンを仕掛ける」というテロ的な企画の第2回目をやるために渋谷に来ていた。今回も「みんなのごはん」編集部のTさんが同行してくれている。
T「…今日はお客さんが少ないみたいですね」
暇「雨ですからねえ…」
記録的な集中豪雨のせいもあってか店内にはカップル一組、外国人4人組、サラリーマン1人しかいなかった。
「もしこの店で良さそうな人が見つからなかったら他の店にも行ってみよう」と話し合い、一杯だけ飲むことにした。
暇「Tさん、浮気ってしたことありますか?」
T「浮気・・・ですか」
「しても不思議ではないですよね」
私は温厚なTさんであれば、すぐさま浮気などという不埒な行いを否定すると思っていたのでひどく驚いた。驚いてその店の名物「りんごビール」を一気に飲んでしまった。
「浮気しない男なんて病気なんて言う人もいるからね」などのTさんの話を耳で聞きながら頭の中は混乱していた。
前回の上野編では家族にまつわる良い話を披露してくれたのに、この落差はいったいなんなんだ。
「結婚してる男の半数は浮気するらしいよ」と未婚の私にさらに夢の無い話を続ける。
合鴨スモーク盛り合わせ
T「暇女さん、 僕の話なんかどうだっていいんですよ。そろそろ逆ナンの時間ですよ」
T「お店の人に、あの1人で飲んでるサラリーマンに声をかけていいかどうか聞いてみよう」
先ほどから1人で飲んでいたサラリーマン
陽気で美人なスタッフさん
「へえ~ライターさんなの? すごいね」
T「逆ナンを仕掛けるっていう企画でやって来まして、それでこの子が『暇な女子大生』っていうんですけど…あそこで飲んでる男性と引き合わせても大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。ね、Iさん?」
I「うん。俺は全然OK」
暇「Iさん宜しくお願いします」
I「よろしく。近いな」
I「ライターだって聞いたけど」
暇「はい。ぐるなびさんに雇われています」
暇「あそこで酔っぱらっているのがぐるなびの社員です」
暇「ちなみに私は『暇な女子大生』という名前でブログを書いています」
I「知らないな」
Iさんは大手メーカーに勤める45歳で既婚・子持ちだった。
暇「奥さんのこと愛してます?」
I「ああ、愛してるよ」
暇「浮気しようなんて全然思ったことないんだ?」
焼きしいたけのチーズ乗せ(正式名称失念)
I「ないなあ」
Iさんの話を聞いて『やっぱり世の男性は浮気なんてしないじゃないか。ゲスいのはぐるなび編集Tさんだけじゃないか』と思った。
T「いやでも~そうは言っても昔はIさんだって色々やらかしたでしょう~?ほらバブルの頃とか~」
T氏はどうしても「男性総ゲス説」を押し通したいようで、Iさんを罠にはめようとしている。
I「そうだなあ、俺たちの若い頃は『ねるとんパーティー』ってのが流行ってて、そういうのには何回か行ったことあるけど」
*ねるとんパーティーとは今で言う「婚活パーティー」や「合コン」のようなもの。とんねるず司会の番組「ねるとん紅鯨団」の中の1コーナーのお見合い企画が人気を博し、以来お見合いパーティーのことは総じて「ねるとんパーティー」と呼ばれるようになった。
暇「婚活パーティーなら私だって行ったことあるよ。まるで健全じゃん」
I「うん、まあ健全だよね」
T「・・・」
Iさんは「キミと話していても娘と話しているようにしか感じられない」などと色気の無いことを言い、全然「逆ナン」っぽくならないので次のターゲットを探すことにした。
店を見渡すと雨が止んだこともあってか少しお客さんは増えていた。
すでに出来上がっているおじさんがいた
暇「おじさん、一緒に飲んでもいいですか?」
「いいよ」
「近いような気がするけど、気のせいかな」
おじさん(Mさん42歳)は近くのIT会社の社長で、これまた既婚・子持ちだった。
暇「Mさん、奥さんのこと愛してますか?」
M「ああ、愛してるよ」
Mさんのイチオシメニュー「ちびひょうたんのしば漬け」
暇「やっぱり皆奥さんのこと愛してるじゃないか」
M「俺のところはさ、中々子どもが出来なくてさあ」
M「でも、去年やっと生まれたんだ。家族ってね、いいもんだよ」
わたしはMさんの話を聞いて「逆ナン」などという企画をやっている自分を少し恥じた。
M「キミってさ、ホントに『小悪魔』って感じするよね。よく言われない?」
暇「そんなに言われたことないかな。でも『小悪魔な女になる方法』っていう本は持ってるよ」
暇「Mさんはやっぱり檀れいが好きなの?」
M「上戸彩が好きだね」
暇「おじさんはみんな檀れいが好きだと思ってた」
T『いいぞ…いいぞ女子大生…その調子でおじさんのハートを鷲掴みにするんや…!』
暇「Mさんは何してるときが一番たのしい?」
M「おれ? パズドラ」
暇「パズドラかあ」
M「君の好きなことは何なの?」
暇「Twitterを眺めているときに『楽しい』と感じるよ」
M「暗いなあ」
暇「お互いさまでしょう?」
「Mさん、鼻の下伸ばすんじゃないよ。若い子と飲めて嬉しいのは分かるけどさ」
「あの二人、見てて超おもしろいっすね。キスとかしないんすか?」
T「いくらなんでもキスはまずい・・・」
T「はっ!!!」
T『まずい…もうすぐおじさんの理性がファー・アウェイ……』
T「暇女さん、そろそろおいとましましょう」
暇「はい」
M「ええーー…」
「今度はプライベートで遊びにきてくださいよ」
私とTさんはみんなにお礼を言って店を出た。
T「NAVERまとめに『2014年!彼氏が欲しいなら【立ち飲みバー】に行くべし!!』っていう記事があって、そこに載っていたからあの店を選んだんだけど…」
T「まさかあんなにアットホームな店だったとは…」
暇「お客さん全員常連さんでしたしね」
暇「『ナンパ』はちょっと違うかもしれないけど友達ならすぐに出来そうな店だな…」
逆ナン企画第二回を迎えて、わたしは「男性の年齢をピタリと言い当てる」スキルを身に着けた。
しかし、未だに「逆ナン」の定義は分からないままなのであった…。
【今回遊びに行ったお店】
http://r.gnavi.co.jp/2t7b7rhp0000/
お酒はオール500円。常連さんだけでなく、一見さんも気軽に寄れる立ち飲みバー。支払は明朗会計なキャッシュオンスタイル(食べ物を受け取る際にその場で代金を支払う方式)です。
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。