スルメイカが極端な不漁に喘いでいる。農水省「漁業・養殖業生産統計年報」によると1963年には59万トンの漁獲を記録したことがあるスルメイカ漁獲量は、96年を境に右肩下がりに向かい、2023年漁期には1万5705トンと過去最低を記録した。最盛期と比べると97%以上の減少である。
価格も上昇、漁業情報サービスセンターによると、消費地市場での冷スルメイカ年平均価格は20年の814円から24年には1685円となっている。こうした影響もあり、24年には石川県のイカ生産直販組合と函館の水産物販売会社が倒産している。
この資源については98年から国が漁獲枠(「Total Allowable Catch(漁獲可能量)」の頭文字を捕って「TAC」と呼ばれる)を設定し管理している。しかし設定された枠は実際の漁獲量とは常にかけ離れていた。枠は形だけ、ないのとさして変わらない、というのは言い過ぎだろうか。
右肩下がりの漁獲量というのはスルメイカに限らない。農林水産省「漁業・養殖業生産統計」によると、海面漁業生産量は1980年代半ばからほぼ一貫して減少、最新の統計がある23年には過去最低を更新している。
不漁と資源の悪化に直面するなか、18年に漁業法が改正、20年に施行された。これに伴い「国連海洋法条約」にも謳われ、世界各地域、各国で広く取り入れられている「持続可能生産量(Maximum Sustainable Yield: MSY)」という科学概念に即した資源管理が本格的に導入されるに至った。20年、日本は遅ればせながらも漁業資源管理で世界と同じスタンダードの適用というスタートラインに立ったとも言える。
しかし、水産庁がスルメイカに関し、こうした動きに逆行する決定を下した。