ドイツの有権者は政権交代を選んだ。2月23日の連邦議会選挙で、フリードリヒ・メルツ氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が首位に立った。メルツ氏は復活祭(4月下旬)までに新政権を発足させると約束した。
だが同党が議席の過半数を確保するには社会民主党(SPD)との連立、または緑の党も加えた三党連立が避けられない情勢だ。党の政策の隔たりは大きく、連立交渉の難航が予想される。
メルツ氏が次期首相の座に「王手」
今回の選挙では予想通り、保守と極右が躍進した。選挙管理委員会の2月24日の発表によると、CDU・CSUは前回の選挙(2021年)での24.2%に比べて得票率を4.4ポイント増やして28.5%を確保し、首位に立った。
CDUのメルツ首相候補は、2月23日夕刻に早くも勝利宣言。同党左派のアンゲラ・メルケル氏とは対照的にCDUの保守本流に属するメルツ氏が、次期首相に就任することは、確実となった。ドイツで保守本流に属する政治家が首相の座に就くのは、ヘルムート・コール氏が首相の座を去った1998年以来27年ぶりだ。
もう一人の勝者は、極右政党ドイツのための選択肢(AfD)だった。同党の得票率の増加率は、今回の選挙で最も大きかった。同党は得票率を21年の10.3%から約2倍の20.8%に増やし第二党となった。13年の結党以来、最も高い得票率だ。
同党は欧州連合(EU)やユーロ圏からの脱退、ロシアからの天然ガスの輸入再開などを求めるなど、過激な政策変化を提唱している。AfDの一部の州支部は憲法擁護庁から「民主主義体制の転覆を目指す極右勢力」として監視されている。それにもかかわらず、有権者の5人に1人が同党に票を投じた。
旧東ドイツ地域では、AfDの得票率は首位だった。AfDのアリス・ヴァイデル共同党首は、「我々はもはや少数政党ではなく、国民政党になった」と述べて成果を強調。同氏は「次の連邦議会選挙では、CDU・CSUを追い抜く」と述べた。
これに対し与党は、有権者から厳しい判定を受けた。オラーフ・ショルツ首相が率いるSPDは得票率を前回の25.7%から9.3ポイント減らして16.4%と惨敗。結党以来最も低い得票率だ。
緑の党の得票率も3.2ポイント減って11.6%となった。昨年11月まで連立政権の一部だった自由民主党(FDP)の得票率は前回の総選挙に比べてほぼ半減し、4.3%となった。
ドイツでは小政党の乱立を防ぐために、得票率が5%未満の政党は会派として議会に議席を持てない。FDPは連邦議会を去って野に下ることになった。