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米ホワイトハウスは25日、ドナルド・トランプ大統領を直接取材できる報道機関を決定する権限を、1世紀以上にわたりに担ってきたホワイトハウス特派員協会(WHCA)から奪い取る方針を発表した。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官が発表した今回の変更は、大統領に関連する行事を取材したり、ほかの報道機関と資料を共有する、「プール」と呼ばれる記者団の一員になる報道機関を、今後はホワイトハウスが決定していくことを意味する。
これまで権限を担ってきたWHCAは、「報道の自由という独立性を引き裂くもの」だとした。
大統領関連の取材をめぐっては、トランプ政権が米AP通信の記者を締め出している。トランプ大統領は就任直後、政府の文書でメキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に変更することを命じた。これについてAP通信が、記事の表記などを定めた「スタイルブック」で名称を変更しないと発表したところ、大統領記者会見などへの取材を禁じられた。
AP通信は、この禁止措置が報復的であり、言論と報道の自由に関する合衆国憲法修正第1条に違反していると主張している。
トランプ氏が任命したコロンビア特別行政区連邦地方裁判所のトレヴァー・マクファデン判事は、AP通信の取材を認める緊急要請を認めなかったものの、3月20日に新たな審理を行うとした。
今回の変更は、AP通信が取材禁止措置の取り消しを求める中、突然発表された。
ホワイトハウスのレヴィット報道官は25日の記者会見で、「(大統領専用機)エアフォース・ワンや大統領執務室のような非常に特権的で、アクセスが限定的な空間について、誰がその特権を享受できるかは、現政権のホワイトハウス報道担当チームによって決定されることになる」と述べた。
また、ストリーミング・サービスやポッドキャストなど、「新たなメディア」が「この素晴らしい責任を共有する」ことができるようになるだろうとした。
「ここで長年活動するレガシー・メディアも記者団に参加するが、新たな声も歓迎されることになる」
「限られた報道記者団を構成する報道機関を日ごとに決定することで、ホワイトハウスは米国民に権力を戻すことができる」と、レヴィット氏は付け加えた。
1914年設立のWHCAは、大統領に関する日々の取材をめぐり、いくつかのロジスティクスを担ってきた。中でも注目すべきは、大統領を直接取材する「プール」と呼ばれる記者団の決定だ。プールには米テレビの5大ネットワークのうちの1社のカメラクルーや、ラジオの特派員、紙媒体の記者が含まれる。
WHCAは長らく、「プール」は大統領が迅速にニュースを広めることを可能にするとともに、広範なメディアへの報道内容や画像、動画、音声の共有を可能にするもので、大統領とメディアにとって有益だと主張してきた。
「プール」の記者たちは毎日、週末や休日を含め、大統領がホワイトハウスに居る時も出張中も勤務している。
BBCニュースもラジオ・プールの一員となっている。
米政権に「好意的な」報道機関の優遇を懸念
WHCAは、今回の動きについて、ホワイトハウスに共感的あるいは友好的とみなされた報道機関に取材の機会が与えられることになると懸念を表明した。
「今回の動きは、国民に権力を取り戻させるものではなく、ホワイトハウスに権力を与えるものだ」と、WHCA理事で米フォックス・ニュース記者のジャッキー・ハインリッヒ氏はソーシャルメディアに投稿した。
WHCAは声明で、この決定は「大統領を取材するジャーナリストを現政権が選ぶことを示唆している」と指摘。
また、ホワイトハウスからは決定について事前に知らされていなかったとした。
ホワイトハウスのレヴィット報道官は、WHCAが「プール」を管理する「独占権」を持つことはなくなると述べた。
トランプ大統領は25日、大統領執務室で記者団に応じた際、この発表について質問を受けた。「これからは我々が采配を振る」と、トランプ氏は述べた。
(英語記事 White House takes control of press pool that covers Trumpov)