日本政府が性犯罪規定見直し、今夏成立目指す 性的盗撮を処罰する「撮影罪」新設など

ケリー・アン、BBCニュース

Protesters gather at the rally in 2019 to criticize recent acquittals in court cases of alleged rape in Japan

画像提供, Getty Images

画像説明, 日本で2019年に複数のレイプ事件に無罪判決が相次いで出され、抗議する人々

同意なく性的搾取を目的とした写真やビデオを撮影する行為を取り締まる「撮影罪」を新設する法案が、日本の国会に提出されている。

日本政府は3月、性犯罪規定を見直す刑法などの改正案を閣議決定した。強制性交罪には要件を加えて「不同意性交等罪」とする。さらに、同意なく性的搾取を目的とした写真やビデオを撮影することを取り締まる「性的姿態撮影罪」を新設する方針。政府は今国会での成立を目指す。

撮影罪では盗撮や、性的行為を密かに撮影する行為などを、法律で統一的に取り締まる。これまでは自治体の迷惑防止条例などで取り締まってきたが、処罰の対象となる行為や罰則にばらつきがあった。

同意なしに誰かの性器の写真を撮影、配布、所持することを明確に禁止するほか、性的行為を密かに撮影することも犯罪行為とみなす。正当な理由なく、子どもを対象として、その性的姿態等を撮影することも処罰対象となる。

日本では、子供モデル(主に女子)が日常的に、性的に挑発的なかたちで描写される。例えば、下着や水着を着てポーズをとるよう要求されることもある。

違反者には「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が科される。

こうした撮影罪の新設は、刑法の性犯罪規定の大幅な見直しの一環。強制性交罪や強制わいせつ罪などの成立要件も拡大される。

改正法案は6月にも国会で可決される見通し。

他方で日本メディアによると、ユニフォームなどを身につけているアスリートの写真が性的または悪意ある目的で使用されることもあり、この問題については4月にシンポジウムも開かれた。隠しカメラや透視機能がついた赤外線カメラでの撮影は「撮影罪」の対象になるが、競技中のユニホーム姿などの撮影行為は、改正法案の規制対象に盛り込まれなかったため、弁護士やアスリートたちが法整備の必要性を訴えている。

増加する盗撮の検挙件数

日本では、携帯電話を使った盗撮を取り締まる法律の強化を求める世論の声が高まっている。

2021年に盗撮行為で警察に逮捕された人の数は5000人以上と、2010年の逮捕者数の約3倍だった。

航空各社の労働組合58団体でつくる「航空連合」は3月、客室乗務員を対象とした調査結果を公表。回答者の約7割が自分の写真を密かに撮影されたことがあるという内容だった。

すでに日本では、ほとんどの携帯電話メーカーが、盗撮を防ぐために携帯電話の撮影機能にシャッター音を搭載している。

アジアのいくつかの国には盗撮を禁止する法律があるが、内容にはばらつきがある。

韓国では、性的な内容を盗撮して有罪となれば、最高1000万ウォン(約100万円)の罰金または最長5年の禁錮刑が科される可能性がある。

しかし、韓国女性弁護士協会によると、2011年から2016年の間に法廷で争われた2000件の違法撮影事件のうち、実刑につながったのはわずか5%だった。

シンガポールでは、有罪となれば最高2年の禁錮刑や罰金、むち打ちのいずれか、あるいはこれらの複数が科せられる可能性がある。被害者が14歳未満の場合、禁錮刑に加えて罰金・むち打ち刑となる。

日本では2019年に複数のレイプ事件に無罪判決が相次いで出され、国民の反発を招いた。これを受け、性犯罪に対する法整備強化を目指した、刑法改正が検討されてきた。

2月には、法務省の法制審議会(法相の諮問機関)が、性的行為について自分で意思決定ができるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げることなどを盛り込んだ、刑法の性犯罪規定改正の要綱を斎藤健法相に答申した

要綱は、わいせつ目的で未成年を手なずける「懐柔」行為(グルーミング)を犯罪化し、強姦の定義を拡大することも目的としている。

また、強制性交等罪(強姦罪)の公訴時効を10年から15年に延長することも含まれる。

性交同意年齢は、若年者を保護するためのもの。現行の13歳は明治時代から変わらず、先進国の中で最も低い同意年齢で、主要7カ国(G7)の中でも最も低い。