65億光年先にまたたく単独の星を40個以上発見!
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡によって単独の星の観測記録を大幅更新
2025年01月07日
研究・産学連携
千葉大学先進科学センターの札本佳伸特任助教、大栗真宗教授、阿部克哉特任研究員 (当時)、同大学融合理工学府の河合宏紀特別研究学生らを中心とする国際共同研究チームは、重力レンズ注1)と呼ばれる自然の集光現象を利用することで、65億光年離れた遠方の銀河内の単独の星40個以上を発見しました。これらの星は、重力レンズによる個々の星の見かけの明るさの変動を、2022年12月と2023年12月に得られたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡注2)の観測画像を比較して捉えることで発見されました。この成果は、これまでの遠方銀河内の単独の星の発見数の記録を大幅に更新するとともに、宇宙が生まれてから現在までの銀河の進化についての研究や、宇宙を満たす謎の物質ダークマター注3)の正体に迫る研究に新しい道を切り開く研究成果です。
本研究成果は英学術誌Nature Astronomy電子版に1月6日に掲載されました。
注1)重力レンズ:アインシュタインの一般相対性理論で予言され観測されている、重力場による光の経路の曲がり。遠方天体の見かけの形状を歪めるのみならず、遠方天体からの光を虫眼鏡のように集めることで、遠方天体の見かけの明るさを増光する効果も生じる。
注2)ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡:米国NASAが2021年12月25日に打ち上げた、主鏡口径6.5mの巨大な宇宙望遠鏡。わずか3年の間に初期宇宙の銀河の観測で革新的な成果を数多く挙げている。
注3)ダークマター:宇宙の物質のうち、約20%は恒星、銀河、原子、生命を含む通常の物質、すなわち「バリオン」物質で、残りの約80%は重力のみ作用し、光学的には直接観測できない「ダークマター」(「暗黒物質」とも呼ばれる)でできていると考えられている。ダークマターの素粒子としての正体はよくわかっておらず、基礎物理学の重要な未解決問題のひとつである。