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「伊藤さん! リクエストありがとう〜! ワールドイズマイン、歌います!」――ヤマハは「CEATEC JAPAN 2009」(千葉・幕張メッセ、10月6〜10日)で、女性型ロボットがVOCALOID技術を利用して歌ったり話したりするデモを披露した。自動演奏するピアノをバックに観客に話しかけ、歌を歌う。
歌声と呼びかけも、韻律(イントネーションと音の高さ)データをPCでリアルタイムに処理して合成。ロボットは音に合わせて口を動かしたり、曲のリズムに合わせて首を振ったり、声量が必要なところでは力むなど、リアルに動く。「VOCALOIDの可能性を示したかった」と、同社でVOCALOID開発を担当する剣持秀紀さんは出展の狙いを話す。
VOCALOIDロボットのベースは、産業技術総合研究所(産総研)が開発した女性型ロボット「HRP-4C」だ。身長158センチ、体重48キロと、日本人女性をリアルに再現したのが特徴で、ファッションショーに出演したこともある。
CEATECでは1日4回デモを披露。その都度内容が変わり、「初音ミク」や「GUMI」(メグッポイドのキャラクター)、HRP-4Cオリジナルの姿で登場する回がある。ミクに扮するのは初日と3日目、GUMIは2日目と4日目で、それぞれミク、メグッポイドの声で登場する。
オリジナルの姿の時は、クリプトン・フューチャー・メディアが用意した新VOCALOID「CV-4Cβ」の声で歌う。CV-4Cβは、HRP-“4C”にかけた名前。商品化は未定という。
ミクに扮した回では、HRP-4Cが緑のツインテールとコスチュームを身に付けて登場。ミクの声で話しかけ、「メルト」「ワールドイズマイン」「みくみくにしてあげる」といったミクの代表曲を披露する。
歌声や、「伊藤さん! リクエストありがとう〜!」といった呼びかけはあらかじめ録音したものではなく、VOCALOIDを使ってリアルタイムに生成している。
VOCALOIDは、音符(メロディー)と歌詞のテキストを与えればそのまま歌ってくれる仕組みだが、デモでは音符の代わりに韻律(イントネーションと音の高さ)データと歌詞を与え、音声をリアルタイムに合成。HRP-4Cに送信して再生している。
「伊藤さん」といった名前を呼びかける際は、「いとうさん」というテキストと、イントネーションを手動で入力。「リクエストありがとう〜!」は人が話した際のイントネーションをあらかじめ入力して再生しており、音声として自然に聞こえるよう工夫した。
口パクの動作もリアルタイムだ。母音と一部の子音について、口の動きをHRP-4Cにあらかじめプログラム。歌や呼びかけの音に合わせて口を動かす。
首を振ったり力んだりといった動きも、ある程度は自動で制御。ビートに合わせた動きをプログラムしておき、音に合わせて動かしたり、伸ばす音が長く続くところでは目を細めるといった動きをプログラムした。
歌の伴奏は、人の演奏を打鍵の強さまで記録・再現するピアノ「ディスクラビア」が自動演奏している。歌う曲は、iPhone用拡張現実(AR)アプリ「セカイカメラ」を利用してデモの観覧者から募集。周辺のセカイカメラユーザーにエアタグを飛ばしてメッセージを送る機能「エアシャウト」を活用する。
「演奏を記録できるピアノは、いわば『自動演奏ロボット』。自動演奏ロボットがあるなら、自動VOCALOIDロボがあってもいいんじゃない?」と、ヤマハが産総研にコラボレーションを持ちかけ、参考出展が実現した。「よりリアルで、より自由な韻律を目指す。組み込みVOCALOIDも作りたい」と剣持さんはVOCALOIDの今後について話し、ロボット分野への進出に意欲を見せている。
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