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Inclusion & Diversity これからのチームの話をしよう

アクセンチュアとパーソルが考える本気のI&D。真のカルチャー浸透を進めるためには?

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対談写真

撮影/中山実華

企業にとって、これからのインクルージョンやダイバーシティをめぐる戦略はどうあるべきなのだろうか。企業内の制度整備やKPI設定の次に来たる課題とは? 今回から『シリーズ:本気のI&D推進。インクルーシブなカルチャー醸成への道』と題し、前後編を通してそれらを明らかにしていく。

前編では、人を最大の資本と捉え、I&D(インクルージョン&ダイバーシティ、DEIとも)への本格的な取り組みとその社内での浸透に注力している2社、アクセンチュアとパーソルグループに話を聞く。2014年からインクルージョン&ダイバーシティ日本統括として様々な改革に携わってきた常務執行役員 堀江章子さん、そして、総合人材サービスを展開するパーソルホールディングス 執行役員 CSO 峯尾太郎さんに、企業が真のインクルーシブで多様な組織文化を築くための糸口を聞いた。

コンサルも働き方を見直す時代に

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堀江章子(ほりえ・あきこ)アクセンチュア インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)日本統括 常務執行役員。大学卒業後、アクセンチュアに入社。99年にマネジャー、2007年にマネジング・ディレクター、2020年に常務に就任。金融各社のデジタルトランスフォーメーション、事業拡大・営業強化、次世代のテクノロジー組織の構築支援などを、担当クライアントを中心に行っている。2014年からはインクルージョン&ダイバーシティ統括 執行役員として、能力や年齢、国籍や宗教、性別、LGBTIQ+などの背景に関係なく、多様な人材がリーダーとして最大限の力を発揮できる組織作りに尽力している。

撮影/中山実華

──まずは、アクセンチュアのI&D推進の歩みを伺います。「ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス」において、過去6年間で4度目の世界第1位にランクインしたアクセンチュア。2000年代からI&D領域で積極的な改革を進められてきましたが、その道のりは平坦ではなかったようです。特に根本的なアクセンチュアの組織風土改革を加速させたきっかけの一つに、採用に苦戦していた頃に受けた峯尾さんからの貴重なアドバイスがあったそうですが……。

峯尾太郎さん(以下、峯尾):コンサルティングファームは求める人材のレベルが高く、なかなかご期待にそえる人材をご推薦できなかったという背景があります。当時は「コンサルは激務」という印象から、転職希望者が少ないという現実もあり、採用市場での現在地をお伝えしました。

堀江章子さん(以下、堀江):女性活躍の取り組みは2006年頃から本腰を入れて行ってきましたが、当時の女性社員比率は17.7%、女性管理職は8.7%でグローバルと比較して最下位レベル(2007年時点)。峯尾さんからアドバイスいただいた2014年時点でも、数字が伴っていないという現状でした。いよいよ課題感を持ち、翌年の2015年から、アクセンチュア独自の働き方改革「Project PRIDE」をスタートさせました。いかなる改革もこれらを踏まえてKPIを設定し、PDCAを回すことが徹底されています。このProject PRIDEとI&D推進は両軸で進化し、変革が進んだという実感があります。

峯尾:キャリアアップや将来の展望がある人にとって、極めて魅力的な会社になりましたよね。

堀江:ありがとうございます。私たちはコンサルタントなのに、深夜まで働かなければアウトプットができないのは、仕事のクオリティが高いと言えるのか? という観点に立ち返りました。短時間でも質を上げ、結果を出すことに仕事の仕方を変えたのは大きかったと思います。すると自ずと余裕が生まれ仕事もしやすくなり、会社の見え方も変わってきました。

──女性採用や管理職登用の数字が好循環に入ったのは、トップのコミットが影響していますか?

堀江:そうですね。トップダウンのメッセージは大きかったと思います。何かを判断するときに「女性も対象に考えられているか」を聞かれますし、常にその視点を持つことが求められました。そして採用後の育成をしっかり行い、フェアネスを高めることも意識しました。

私がマネジング・ディレクターになったのは2006年で、その前の約10年間を見ても日本人女性のマネジング・ディレクターは2人ほどしかいませんでした。その間にいた先輩たちは辞めてしまったのですが、今はすべてのプロジェクトに女性リーダーがいます。現在、社員の女性比率は38.2%、女性管理職は21.8%まで向上しました(2024年4月時点)。

採用市場でI&D推進は重要な指標に

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峯尾 太郎(みねお・たろう)パーソルホールディングス株式会社 執行役員CSO。新潟県出身。中央大学理工学部卒業後、1994年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)入社。ITコンサルティング、アウトソーシング、人材紹介、求人メディアなどの事業成長を牽引した後、2016年、代表取締役社長に就任。社長在職中は、公益社団法人全国求人情報協会の理事を務めるなど、行政や業界各社と連携し求人メディアの適正化や信頼性の向上に尽力。2022年4月より現職。グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、経営戦略策定、サステナビリティ推進、ブランディング強化をリード。

撮影/中山実華

──人材サービス会社として日頃から多くの企業と対面される峯尾さんから見た、I&D推進の価値とは?

峯尾:I&Dが進む会社とそうでない会社には違いがあり、経営戦略を実現するための要の戦略として人事戦略を位置付けられているかどうかが大きなポイントです。次に、実行力が高いかどうか。リーダーが強い意志を持ち、社内に推進するメソッドを作ることができれば、I&Dは必ず進みます。また、採用の母集団を広げられるかどうか、つまり“多様性”ですね。同質性の高い集団から縦にも横にも広げていくことで、どのように経営戦略の達成に貢献できるか。そのような思考になっていない経営層は少なくありません。そしてCHRO(Chief Human Resource Officer)のミッションとして適切に設定されていない場合もあります。

堀江:そうですね。アクセンチュアも2013年頃にDXを推進しはじめ、その時期にデザイナーやクリエイティブ系の人材の採用が始まりました。専門性を高めるには多様な人材が必要ですが、組織の中では異質なキャリアの人たちの採用で現場が戸惑ったのも事実です。しかし、「お互いを尊重しながら成果を出そう」という意識を醸成する大きな転換点だったと思います。

──アクセンチュアにとってI&Dの推進は、採用の数字にも大きく変化があったのではないですか?

堀江:そうですね。女性の採用を積極的に行ってきたこともあり、今では全ての部門に女性のマネジング・ディレクターがいます。多様な形で活躍している女性の姿を見せられるようになりました。どんなバックグラウンドの女性でもキャリアを具体的にイメージできるようになったことが、採用の幅を広げ、安心感の醸成に繋がったと思います。成功事例がたくさんありますから。

峯尾:求職者は当然、各企業のI&D推進や女性活躍を見ています。女性が活躍している会社は人気があり、女性が圧倒的に増えていきます。採用におけるI&Dの推進は、メリットしかありません。採用の母数が広がること、そして組織力が上がること。母集団が広がるので、相対的に企業が採用したい方との出会いは広がります。また、中に入った人の活躍度も高まりますよね。

堀江:いろんなリーダーの方とI&D推進について話をしたときに興味深かったのが、シェアホルダー(株主)バリューに一番影響している因子についてです。ファイナンシャルの数字よりも女性役員の比率のほうが評価されると話題になりました。そういう観点も踏まえて、I&D推進を加速させるべきだと思いますね。

一人ひとりが輝ける職場をつくるには?

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──今の採用市場では「働きやすさ」を求める声が多いと聞きます。2社では、どのような働き方を理想としていますか?

峯尾:働き方には4つの象限があります。「働き方がハードで、働きがいもない」、「働き方がハードだけれど、働きがいがある」、「働きやすいが、働きがいがない」、「働きやすく、働きがいもある」です。「働きやすい環境」だけで選ぶと、やりがいがない、仕事が楽しくないというケースも生じます。しかし、それを望む人もいますから、どれが理想の働き方かは個人差があります。つまり、一概には言えない。パーソルグループのビジョンは「はたらいて、笑おう。」ですが、個人が自分にとっての働きがいとは何か自己理解すること、企業側がそれをしっかり理解し、どこまで実行するかが重要です。

堀江:働き方改革が働きやすい環境に変えるのは間違いありません。しかし、個々の価値観の違いや、キャリアの進め方、やりがいなどが影響し、すべての従業員が100%満足するわけではありません。働き方改革はあくまでも基本的な取り組みにしか過ぎず、やりがいやモチベーションには直接影響しません。そこをどうするかが次のステップだと考えています。

それは、「真に一人ひとりがその人らしさ」を発揮して働ける職場づくりであり、社会に求められるI&Dです。同時に、それが企業の成長につながると考えています。

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──一人ひとりがその人らしさを発揮できる職場をつくるために、2社ではどのような取り組みを行っていますか?

堀江:アクセンチュアのコア・バリューの一つに「個人の尊重(Respect for the Individual)」があります。人々の多様性を認め、一人ひとりの独自の貢献を尊重しながら、オープンで、信頼しあい、受け入れあう環境を作り上げる。アクセンチュアの価値観を反映したやり方で一人ひとりに接していくというものです。よく考えられているな、と思うのですが、個々人が違うのは大前提であり、やる気を引き出すポイントも異なります。総合力で成果を出すには、誰か特定の人だけでなく、さまざまな人が活きる仕組みが理想ですよね。全員が成果に対して貢献できるようマネジメントすることが大事で、現在はそれに取り組んでいるところです。

峯尾:つまりは、インクルーシブ・リーダーシップですね。パーソルグループでも、カチッと枠にはめるのではない “柔らかい組織”を目指しています。「キャリアオーナーシップ」(個人が自分のキャリアに対して主体性を持って取り組む意識と行動)を推進していて、組織の固定度を崩せるように、手上げで異動できる仕組みや社内副業の制度をつくりました。

堀江:アクセンチュアは、部署ではなくプロジェクト制なので比較的フレキシブルですが、マネジャーはプロジェクト内が澱みなく“清流化”できているかを見ています。対話やネットワーキングも重要ですし、研修を行ったり、チームメンバーの追加やシャッフリングも行います。そこに新しいチャレンジやモチベーションが生まれ、プロジェクト内のコラボレーションも最良の形になっていくと考えています。

インクルーシブなカルチャー醸成に向けて

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──女性活躍推進にフォーカスしたり、制度化などの基盤構築に注力する企業は少なくないと思います。しかし、I&Dが目指すものはもっと先にあると考えます。お二人はどのように捉えられていますか?

峯尾:I&Dは経営の観点から見てもメリットがありますが、経営側と現場がうまくかみ合わず、進められないというケースもあります。経営側からすると5年、10年、20年と長期で見ていく取り組みになりますが、現場は今日のこと、明日のことに目が行きがちです。だから、かみ合わない前提でどう進めるかという議論が必要です。組織全体のチェンジマネジメントなので、時間がかかるのは当然ですね。

堀江:そう思います。現場はやはり効率を求めたくなりますから。コンサルタントは同じ業界の人と話す方が楽ですし、テクノロジー系の人も同様です。しかし一度そこを突破してみると、「あのように動くとこんな結果が生まれる」という経験になり、コラボレーションができるようになります。いろんなコラボレーションをするチームをつくり、たとえば経営側が最強のチームを表彰するなどの取り組みを進めることでも現場は変わっていくと思います。工夫しながら継続的に進めていけば、少しずつでも浸透し、変化は訪れます。

峯尾:揺り戻しも当然あります。リーダーは納得して進めたのに、現場のコンフリクトに押されてしまうこともあります。新しいことには必ず反対意見が出るので、マネジメント側は根気強く、試行錯誤を続けることが求められます。

堀江:アクセンチュアでは「Allies in Action(アライズインアクション)」という取り組みを行っています。日本ではアライというと性的マイノリティを理解する人を指しますが、そうではなく、全ての人が全ての人の味方として協力するという考え方で、お互いを尊重しながら仕事をする活動です。どのような属性であっても、それは関係なく、一つのテーブルで仕事の話ができる関係をどうつくるか。そのためにはアライマインドを持つことがとても大事だと思います。そして、I&D推進は「主体性」がなければ進まないし、トップが手を緩めたら止まってしまいます。

峯尾:そうですね。トップが「I&Dは経営にメリットがある」と腹落ちしていること、取り組みにコミットしていること、主体的に動くことでI&D推進は必ず成功します。

堀江:I&Dはお客様への価値提供を含め、組織の成長にも必ずつながります。アクセンチュアも更なる推進を行っていきたいと思います。

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取材・執筆/島田ゆかり

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