雪かきがはかどる方法が何かないものか-。骨伝導タイプのヘッドホンを購入した。耳をふさがず、周囲の音を聞き取りやすいのが気に入った。スマホでインターネットから曲を探し、ヘッドホンにつなぐ。
体力が落ちているので数曲ごとに休み、水分を補給する。音楽に気を取られて危険に気づかなかった、というわけにはいかない。音量はできるだけ小さくする。
ビートルズは単調な作業を穏やかに後押ししてくれる。最後の新曲とされる「ナウ・アンド・ゼン」もいい。ジョン・レノン(1980年死去)が70年代に録音したカセットテープの音源から、人工知能を用いて余計な音を取り除き、ジョンの声だけをきれいに取り出した。2023年に発表され、54年ぶりに全英シングルチャートで首位に輝いたのは記憶に新しい。
ビートルズといえば、名曲の数々から「ブラック・バード」を、黒人女性の人気歌手ビヨンセが最新アルバムで取り上げている。公民権運動が盛んだった60年代の米国でつらい目に遭っていた黒人女性たちへ思いを寄せた曲だ。今の時代に歌う意味とは。日常のニュースから感じるより米国社会の分断は深いのだろうか。
いずれにしろ、最新技術で、新たな解釈で、音楽の命は未来へとつながっていく。耳を傾けながら、雪を踏むリズムも、厳冬に落ち込んでいる気持ちも、少しだけ軽くなる。