出生数過去最低 少子化対策は総合的な見地で
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多くの若者が「子供を持ちたい」と思える社会をどう作っていくか。国力を維持し、社会保障制度を持続させていくための方策を考えたい。
政府が、2024年の人口動態統計の速報値を公表した。昨年の出生数は前年比5・0%減の72万988人となり、9年連続で過去最低を更新した。
特に近年の出生数の減少幅は深刻だ。22年からは3年連続で5%以上の減少となっている。
新型コロナが
速報には在日外国人の出生数も含まれている。6月に発表される日本人だけの出生数は初めて70万人を下回る見通しだ。
昨年の婚姻件数はほぼ50万組だった。戦後最少を記録した前年から2%増えたが、それでも戦後2番目に低い水準だった。
婚姻件数が低迷し続ければ、出生数の回復は期待できまい。
若い人が結婚する上でまず重視するのは、結婚後も安定した生活を営めるかどうかだろう。
総務省の調査によると、正社員として働いている30歳~34歳の男性の6割が結婚しているが、非正規の場合のこの年代の既婚者は2割にすぎなかった。
また、20歳代後半の未婚の女性の場合、正社員として働いている人の6割が「子供を持ちたい」と考えているのに対し、非正規の人は4割にとどまった。
若い世代の生活を安定させるには、正社員を増やしていくことが欠かせない。
日本の人口は、今世紀末に6000万人程度に半減するという推計もある。1930年と同水準だが、高齢化率は、当時が5%弱だったのに対し、今世紀末は40%に達するという。少ない現役世代で多くの高齢者を支える形だ。
子供を持たない、という若い世代も増えている。事情は様々だろうが、そうした人も高齢者になれば年金や医療、介護など公共サービスを利用することになる。若者も、人口減は自分たちの問題であることを忘れてはなるまい。
岸田前内閣が決定した大規模な少子化対策は、児童手当の拡充や育児休業への給付の充実など、経済的な支援が中心だ。
少子化が続いている様々な要因を分析し、総合的な見地から見直していく必要がある。