ここのところ寒い日が続いているので、
店と自宅のちょうど中間にある休憩処(居酒屋です)で
暖をとって(熱燗をいただいて)帰ることが増えました。
その居酒屋は3時までなので、ラストオーダーぎりぎりに行く私は
たいてい、店じまいの準備をする大将たちを眺めながら
ぼんやりと30分2合勝負をするのですが、
先週は、カウンターに楽しげな先客が。
若い男の子2人組が、景気よく熱燗のとっくりをあけながら
高校時代の思い出話をずっと繰り返しているのです。
20代男子が熱燗をぐいぐい飲んでいるのも
近頃は見ない光景なので、(いい眺めだなぁ)と
ほほえましくチラ見していたら、年上に見えるほうの男の子が
話しかけてきて、通常はめんどくさいのでかわすんですが
のみっぷりと会話のほほえましさに、つい返事をして、
お酒が好きそうなので、バーをやっていることを名乗り、
よかったら来てください、と、名刺を渡して帰りました。
そしたら、今週の火曜日、ほんとにその2人が来てくれて
いやぁ、飲むは飲むは、アンカーのリバティエールから始まって
ウィスキー、シングルモルトでおすすめを、というので、
飲みやすいのがいいという方にはグランリベット、
リバティエールを知っていたおませくんには、
タリスカーをすすめて、うまいっす、の連呼なので
こちらも張り切ってしまって、グレンリベットくんには
(飲めるかなぁ)と一抹の不安とともに
アードベッグ10年、「好きな人はtenって呼ぶんです」との
説明をしながら、出してみたところ、
「これ、うまいっすね!」と。
聞けば、その2人は、山形出身の高校時代の同級生。
高校を卒業後、それぞれ別々のタイミングで
上京し、リバティエールくんはライブハウス、
アードベッグくんは創作居酒屋の厨房で働いていて
ときどき会って、友情をつなげている、とのことでした。
年齢を聞いてびっくり。なんと、20歳+α。
酒の飲み方は、お父さんや親戚の人たちを見て、自然におぼえたそうです。
で、そのリバティエールくん、
フレンチとイタリアンの違いを話していて、
ムール貝を「アムール※貝」と言ってしまうような子なんですが
(※アムール(仏語で「(男女の)愛」)という意味。アムール貝って
大人はにやにやしちゃいますよね。あ、すみません…)
人生経験豊かなうちのご常連さんたちでも出ないような
すてきなせりふを、聞かせてくれたんです。
なんでも、二人とも、明日も仕事、だとかで。
「俺は、今日、おまえと飲めて、すごくうれしい。
でもお前は、さっきから、明日仕事だし、と
気にしながら飲んでいる。
明日のことは、明日のお前ががんばればいいんだ。
いまこんなに楽しいのに、まだ来ていない明日のことを
考えて、心配するのは、もったいない」。
「明日のことは、明日のお前ががんばればいい」
大人になると、常に、予定をたて、先々に支障のないような
生き方が身についてしまいますよね。
実は、私もすごく心配性で、
まぁ、自営業はある程度心配性でないと危険なのですが、
それにしても、彼のこの言葉に、
常に心配事を抱えている身としては、ふっと心が軽くなり、
救われる気持ちがしました。
「明日のことは、明日のおまえががんばればいい。
そのときのことは、そのときのおまえががんばればなんとかなるんだ」
すてきでしょう?
こんな若者に会うと、学歴や教養って、関係ないよね、と
思ってしまいます。
バーに厳しい時代が続く中、新しいモットーをもらうことができました。
「明日のことは、明日の私ががんばれば、いい」。