*1一九五二/五三年に発表された「ツェルリーナへのオマージュ」は、アドルノによるモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》論。出典のデータをみると「フランクフルト市立劇場プログラム」とあり、予想ですが、おそらくこの劇場で《ドン・ジョヴァンニ》を上演した際のプログラムに寄稿したものなのでしょう。そういった性格で書かれたせいか、文章は非常に短く、翻訳されたものはわずか三ページしかありません。ひとりごとをつぶやくような文体が『ミニマ・モラリア』に集約されたアドルノの短いエッセイを彷彿とさせ、大変意味が掴み取りにくいのですが≪ドン・ジョヴァンニ≫のストーリーを把握しているのであれば「はぁ……? 何言ってんの?」と受け流せるような内容。正直言って、スベっているとしか言いようがありませんが≪ドン・ジョヴァンニ≫のストーリーをしらない人にとってはなんだか有難そうに読めてしまうのかも。 タイトルにあるツェルリー