電車で向かいに座っている5歳くらいの女の子とその母親が目に入る。母親はキャリーバッグ、子供はリュックサックを背負い、いかにも帰省するという感じだった。終点の大阪空港から飛行機に乗るのかもしれない。 その女の子は今時見かけないおかっぱ頭に白のワンピース、麦わら帽子をかぶっていた。まん丸ではっきりした目が帽子の下からのぞいている。その視線は私の胸のあたりをまっすぐ捉えていた。 子供の眼力にはいつも圧倒されるし狼狽えてしまう。私の考えていることがすべて見抜かれているように感じるのからだ。赤ん坊なんかは特に目が合うとじっと見つめてくる。それに対してうまく微笑みかけてやることも苦手だし、彼らのような繊細な生き物をどう扱ってよいかわからない。ようするに私は未熟なのである。自分が目を合わせている彼らよりも幼く思えてしまう。そしてその考え自体が伝わっているような気がするから、居心地悪くソワソワしてしまう。
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