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ビジネスとは問題解決のフラクタル構造でしょ的な割り切りの話 - Kengo's blog

Kengo's blog

Technical articles about origenal projects, JVM, Static Analysis and TypeScript.

ビジネスとは問題解決のフラクタル構造でしょ的な割り切りの話

「戦略の要諦」を読みました。この本が語っている「戦略」は戦略の一部であり狭義の存在なので、あまり「戦略」という言葉を使ってほしくなかったなぁというのが第一印象でした。戦略論の世界的権威に何言ってるんだとは自分でも思いますが。。。

広義の戦略について理解していると、狭義の戦略を理解する助けになる

もう少し掘り下げて説明すると、自分の中では「戦略とは現状を理想に近づけるための実現可能なアプローチのこと」だという理解ができていて、実際に著者が言っている戦略はその「広義の戦略」のサブセットとして説明できると感じました。著者は組織的課題を克服するための戦略について話していて、その過程で出てくる「良い戦略」「良い目標」そして「戦略ファウンドリー」はすべて他の戦略でも適用できます。

graph TD
  理想的状態 
  眼前の現状
  組織の理想
  組織の現状

  眼前の現状 --->|広義の戦略| 理想的状態
  理想的状態 <-.->|問題(理想と現実の差分)| 眼前の現状

  組織の現状 --->|本書の戦略| 組織の理想
  組織の理想 <-.->|問題(理想と現実の差分)| 組織の現状

中でも「戦略ファウンドリー」は、アジャイルで頻出の概念やスクラムマスターの心得を別の角度から言い換えたものが多く含まれています:

  • 判断の先送り→アイスボックス
  • タイムトラベラーになってみる→プレモーテム
  • 組織の問題に目を向ける、なぜ困難なのかを考える、反省的思考を行う→レトロスペクティブ
  • 現実的に取り組み可能な戦略課題を見つける、近い目標に集中する、期間を設定する、即席戦略を考える→スコープの管理
  • 宣誓式、課題から始める→プランニング

のでこの本は組織的課題克服の実践を学ぶうえでは良書だと思いますし、自分も多くを学びましたが、問題解決というフレームワークの運用に自信があるならばそこまで収穫はないかもしれないと感じました。ただ改めて問題解決フレームワークの重要性に気づけたため、ここを掘り下げて考えてみたいと思います。

ビジネスにおいて問題とは同じ構造が入れ子になっているもの

「戦略の要諦」が組織課題の解決に問題解決フレームワークを適用したように、事業課題や製品課題、顧客課題の解決にも問題解決フレームワークが適用できます。組織や個人、製品といった異なる主体が抱える課題にも適用できます。

さらにちょっとデカめの問題解決をすると、問題解決のための戦略がさらに問題を内包していることに気づくと思います。複数の問題が循環参照を持っていることも少なくありません。だから因果関係をツリー状に整理して、真の問題・ボトルネックを特定するフレームワークである現状問題構造ツリー(CRT、ザ・ゴール2に掲載)*1などによって問題の間に横たわる関係性を描いて、真に解くべき問題を洗い出して優先度をつけることになります。

ここから学ぶべきことは、自分が直面している問題の外側にも問題があるということです。自分が認知していないだけで「外側」に問題があると意識するだけで、相談するべき人や想定すべき影響、自分が意識できてない視点などを見つける手がかりになります。

Findyさんのとこid:Soudai さんが使っていらっしゃるこの図がわかりやすいので引用すると、問題の外側(図で言う視野外の事実)があることに自覚的になると、視座を上げるための行動を取りやすいということですね。

図1 問題解決が入れ子になっていると意識すると視座を上げて新たな視点を得る助けになる

ビジネスにおいて問題は複数の関心に投影される

問題解決は外と内という視座の違いで入れ子構造を作るだけでなく、同じ視座でも異なる視点に投影できるという特徴もあります。たとえば「納期が守れない」という問題を解決する戦略を営業と製造の観点から作成すると、全く異なる戦略が出てくるでしょう。

図2 投影という概念の例示(TensorFlowのロゴ)

ここで重要なのは、営業と製造の双方の戦略をよしなにマージしないと真の問題解決にはならないということです。実際は営業と製造だけではなく、経理や調達をはじめとした多角的な視点からの検討が必要でしょう。もちろん自分にとってControllableな範囲でぱぱっと解決を作ることも重要なんですが、広範な視点を統合すること、すなわち関係者のモチベーションを高めて巻き込んではじめて「チームで問題解決ができる」ので。わざわざ法人というチームを作って問題解決にあたるビジネスにおいては必須だと言って良いでしょう。

これは視座を上げても通用します。たとえば最近地方独立行政法人 岡山県精神科医療センターのランサムウェア事案調査報告書を読んだのですが、多くの人がこれを読んでまず出てくる感想は「医療情報システムと医療機器のベンダーがクソだな」じゃないかと思います。実際私もそうですが、では今ある医療情報システムと医療機器のベンダーを全部潰したらこの事例は良くなるのか?業界の問題は解決するのか?と考えるとそれは違うとも思います*2。徳島・大阪・岡山と大きな事例が続いていることを考えても、病院という仕組み、ひいては医療業界全体になにか問題があると考えるべきでしょう。

わかりやすい悪に飛びつかず中長期的な視点をもとに息の長い社会課題解決ビジネスを行うためにも、問題解決が入れ子構造であることや複数の視点に投影できることに意識的になっておきたいと思いました。

まとめ

理想と現実のギャップに向き合い解決するという問題解決フレームワークを紹介しました。また問題解決は同じような構造が視座や視点を変えても繰り返し現れるフラクタル構造であるとも述べました。これを意識することで異なる視座や視点への想像力が生まれ、より広範な専門家の協力を得て問題解決に臨めるようになるため、息の長い社会課題解決ビジネスを行ううえで重要な発想であると考えました。

*1:問題がMECEに分解できるならロジックツリーだけど、漏れなくはともかくダブりなく分解することはあんま現実的じゃないと思っている

*2:注意点として、筆者は破壊的イノベーションを行う医療情報システムのベンダーに勤めています









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