Text by Régis Arnaud
2024年11月に発表された、英語力を示す国際ランキングで、日本は116ヵ国中92位と過去最低順位を更新。しかも、若年層の英語力低下が深刻だという。日本人はなぜここまで「英語ができない」のか。その理由を探るため、仏紙記者が日本に暮らす外国人識者に話を聞く。
日本人は英語を「死語」にしようとしているのだろうか──。イー・エフ・エデュケーション・ファースト社による最新の英語能力指数(EF EPI)を見れば、そう考えざるをえない。
2024年、同指数の国際ランキングで日本は116ヵ国中92位。91位は中国、93位はミャンマーだった。地域別ランキングでも23ヵ国中16位と、アジア第2位の経済大国としては驚くべき低さだ。
さらに悪いことに、日本人の英語のレベルは年々落ちている。2014年、63ヵ国のみの統計ではあるが、日本は26位でフランスより3つ順位を前につけていた。それが10年経ったいまでは、フランスより43位も下だ。しかし、もっと悪いことがある。世代別の傾向を見ると、日本においてここ10年で最も英語力を落としたのは、若い世代(18〜25歳)だというのだ。つまり、これは将来、もっとランクを下げることを示している。
日本の主要メディアはこの「国際ランクでの格下げ」に対して、笑って面白がるか不幸な運命を託(かこ)つか、という反応しか示さなかった。日本政府も大規模な教育計画を示すわけでも、反省の色を見せるわけでもない。彼らは翻訳アプリに頼って窮地を脱しようとしているようだ。
一方で、日本を訪れる外国人観光客たちは、次から次へと現れるぎこちない──ときに詩的とさえ言える──英語表記に愕然としている。歩行者に転落の危険を伝える「この先危険、これ以上前に行かないで下さい」という標識は「The future is dangerous, don’t go any further(未来は危険、それ以上進むな)」である。
英語力の低さは社会のあらゆる階層で見て取ることができる。まずは上のほうから見てみよう。G7のような主要な国際会議で、どこにでもわざわざ通訳を連れてくるのは日本の首相だけだ。
日常生活でも、英語での会話は良く言ってもお粗末なもので、まったくできない場合もある。ライティングも上手ではない。仕事で日本を訪れた人たちは皆、ホスト側が相変わらず英語を使えないことに驚いている。経営陣の出席するような会合であってもそうなのだ。
まもなく新しい外国人社長を迎えるフランス高級ブランドのある日本人幹部は、「いまの社長は日本人です。次の人が来たら、彼のためだけに会議は英語になるかもしれません。オフィスはパニックですよ」と笑う。
一方で、日本を訪れる外国人観光客たちは、次から次へと現れるぎこちない──ときに詩的とさえ言える──英語表記に愕然としている。歩行者に転落の危険を伝える「この先危険、これ以上前に行かないで下さい」という標識は「The future is dangerous, don’t go any further(未来は危険、それ以上進むな)」である。
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ほとんど犯罪のない国、ニッポンの“のどかさ”の秘密を仏紙が探る |
外国人上司に「オフィスはパニック」
英語力の低さは社会のあらゆる階層で見て取ることができる。まずは上のほうから見てみよう。G7のような主要な国際会議で、どこにでもわざわざ通訳を連れてくるのは日本の首相だけだ。
日常生活でも、英語での会話は良く言ってもお粗末なもので、まったくできない場合もある。ライティングも上手ではない。仕事で日本を訪れた人たちは皆、ホスト側が相変わらず英語を使えないことに驚いている。経営陣の出席するような会合であってもそうなのだ。
まもなく新しい外国人社長を迎えるフランス高級ブランドのある日本人幹部は、「いまの社長は日本人です。次の人が来たら、彼のためだけに会議は英語になるかもしれません。オフィスはパニックですよ」と笑う。
日本では、この10年間で移民の人口も(約210万人から約340万人に)、外国人観光客の数も(約1340万人から3500万人以上に)急増した。それにもかかわらず、どうしてここまで英語力が弱体化しているのか。
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