教職教養問題の書類写真はイメージです Photo:PIXTA

教員不足の現代、なんと4月から“担任不在のクラス”が発生するというから驚きだ。その直接的な原因は正規雇用教員の欠員にあるが、複数の要素が絡み合い、担任不在につながっているという。大学で教員の育成に携わる著者が担任不在に陥る理由について解説する。※本稿は、佐久間亜紀氏『教員不足――誰が子どもを支えるのか』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。

「4月から担任不在」という
事態が起きるのはなぜ?

 なぜ、4月にいるべき正規雇用教員が欠員となり、年度当初から担任の先生を探し回らなければならなくなったのか。ある県(以下、X県)の公立小中学校のデータに即して、なぜ第一次未配置(編集部注/配置されているべき正規雇用教員が、年度当初から配置されない状況)が生じるようになってしまったのか、検討しよう。

 X県では、その原因は大きく2種類に大別できた。

 1つは、教育委員会が計画して生じさせる予期的欠員の増加であり、もう1つは教育委員会の想定外で生じる予期せぬ欠員(突然の退職など)の増加である(表3-1)。

表3-1同書より転載 拡大画像表示

 本稿では、第1の予期的欠員の要因についてみていこう。私たちの調査からは、その要因として3点がみえてきた。第1の要因は、少子化を背景にした長期的な過員対策、いわゆる採用控えである。過員とは、学校に配当されている定数より多い教員が配置される状態を指す。X県では、10年先までの人口予測にもとづいて教員需要を推計し、長期的な教員採用計画を立てていた。義務標準法(編集部注/国が学級規模や教職員定数の標準を定めた法律)の本来の趣旨にもとづけば、その年度の学級数に応じて必要になる教員数は、すべて正規雇用教員を配置することが想定されている。

 ところが、県全体として少子化傾向が続くため、2015年度から35年度までの20年間で、県内の中学校を卒業する生徒は約1万9000人減少することが予測される。