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小中学生のなりたい職業ランキングでも上位にランクインしているほどの人気を持つVTuber。
2016年にデビューしたキズナアイを筆頭に、にじさんじやホロライブなどさまざまなVTuberが誕生しており、いまや世界に4万人以上いると言われるまでにVTuber業界は急成長を遂げている。しかし、VTuberが増え続ける一方で、有名になれるのはほんの一握りである。
そのためVTuberは少しでも多くのファンを獲得するために差別化を図り活動を行なっている。そうした流れの中のひとつに、YouTubeというプラットフォームを飛び出し、TikTokを主戦場とするVTuberが増えているというのだ。今回はその理由を探る。
TikTokで活動するVTuberはどういうことなのか?メリットは?
そもそもTikTokで活動するVTuberはどういうことなのか?今まで通りYouTubeでの活動ではだめなのか?何ならYoutube Shortsでいいじゃないか、と疑問を持つ方々も多いであろう。
筆者は元々VTuberとして活動していたことがあるので体験談を元にTikTokの優位性について分析したい。
SNSならではのコミュニティとトレンド
TikTokは、特にダンス、チャレンジ、ミームといったトレンドを作り出し、短期間で多くのユーザーが参加する現象を生み出している。TikTokのトレンドは瞬時に世界中に広がり、その影響力は非常に大きい。TikTokはSNSという側面からクリエイターだけでなく、一般もユーザーも多く彼女たちもトレンドのコンテンツを投稿してくれたりする。その爆発力がTikTokの魅力であり、一番の長所だ。SNSならではの短期間でトレンドが生まれ、次々と変化する流動性と動画コンテンツという掛け合わせはやはりTikTokならではと言えるだろう。YouTube Shortsでもトレンドを生み出す環境はあるが少し傾向が異なる。後述するがVTuberの課題である認知の拡大において、TikTokのトレンドに乗ることは非常に有効なのだ。もちろん、動画コンテンツが主体であるVTuberが同じく動画SNSであるtikTokと相性がいいのは言うまでもない。
アルゴリズムによる拡散力が他と比べ物にならない
TikTokは、ユーザーが視聴した内容に基づいて動画をおすすめするアルゴリズムが強力。このアルゴリズムによって、VTuberが一度バズると短期間で多くの人に見てもらえるチャンスが増える。筆者も度々バズったことがあるがそのたびに新規ファンの獲得において非常に有効だったと感じる。TikTokのアルゴリズムはユーザーの好みに基づいて非常に精度高く動画を推薦する仕様となっている。興味を持ちやすいコンテンツを瞬時に表示し、ユーザーが見続けたくなる体験を提供するため、これによりコンテンツがバイラルになりやすく、短期間で大きなリーチを得ることができるのである。
若年のユーザー層を獲得できる
TikTokは、特に10代から20代前半の若者の間で圧倒的に人気があり、全体のユーザーの中で、特に若年層が活発に使用しているプラットフォームである。アメリカのデータでは、TikTokのユーザーの60%以上が10代および20代の若者という結果が出ており、この層をターゲットにしたコンテンツが非常に盛況だという発表もあった。この層はVTuberがターゲットとする層とも一致している。
若い視聴者が短いコンテンツに慣れ親しんでいると言う点は、VTuber側にとっても親和性が高い。近年ではYouTubeでの配信は「切り抜き」と呼ばれる短い動画へとまとめられる文化がある。こういった文化に馴染みが深い若年ユーザーにとって、tikTokのような短尺で面白い部分だけを見られるフォーマットとの親和性が高いと考えられる。
YouTubeへの誘導
そしてやはりTikTokで活動するVTuberもYouTubeでの活動を視野に入れている人も多い。TikTokの短い動画を通じて魅力を拡散、認知を広げた先、他のプラットフォームへの誘導がする際に、長時間配信は YouTube、ショート動画はTikTokやYouTube Shortsへと誘導できるので、他のメディアを掛け合わせた活動を展開する足がかりとなる。
TikTokで活動する一番大きいメリットは?
その中でもやはり短い動画でターゲット層に自分の魅力を届け、一度バズれば容易に数字が伸びるといったことをメリットとして活動しているVTuberが多いだろう。
TikTokがバズり、今けっこう「キテる」VTuberとして活動している方々もたくさん見る。やはりこの「拡散力」の高さが、VTuberがTikTokで活動する際の最大の利点であると筆者は考えている。まずは注目度を短期間で集めたい、もしくはトレンドを活かして素早くフォロワーを獲得したいのであれば、TikTokから始めるのも良い選択だと思う。TikTokで注目を集め、その後YouTubeに誘導する形で活動の幅を広げる戦略がかなり有効だと筆者も感じている。実際に最初にTikTokで注目を集め、その後YouTubeで本格的に活動するというのが、VTuberの中でのトレンドである。
VTuber活動をする上で出てくる課題を解決してくれるTikTok
VTuberをする上で一番困ったのはPR動画をつくってはみたものの、ユーザーに見てすらもらえないということである。意外にも思うかもしれないが、これが悲しい現実である。
YouTubeでは大手のVTuberを除き検索をかけないと動画すら視聴者の目にする機会が少ない。一方でTikTokでは色々な動画を検索にかけることもなく流れてくるまま視聴するスタイルをとっている。いまやYouYube Shortsがありその問題も緩和されてきてはいるが「検索しないと出てこない・知ってももらえない」問題をTikTokでは「指一つスライドしてもらうだけで、まず知ってもらえる」のである。まず自分を知ってもらわないと何も始まらないVTuberにとっては、その問題を解決できるプラットフォームがTIkTokだったのだ。
YouTubeからTikTokに人が流れるのも頷ける話である。
取材・文/^悪魔的ネッコ^