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世界に冠たるブランド企業が、あれよあれよと土俵際まで追いつめられた。もう、打つ手はほとんど残っていない。社長が替わっても、人と事業を切っても、やはり会社の根っこは変えられないのか。
戦い、そして敗れた
急転直下。黒字から赤字へ、2000億円以上の転落劇だった。
実に合計9000億円超の赤字を計上、財界に大きな衝撃を与えてからわずか2年足らず。シャープが再び崖っぷちに追い込まれている。
3月3日に駆けめぐった「シャープが主力銀行に支援要請」「工場閉鎖、リストラを検討」という一報。2月初めから、'15年3月期決算で計画を600億円も下回る300億円の赤字を計上する見通しが示されていた中、このニュースは「死の宣告」にも等しかった。
もはやシャープには余力も未来もない—株価は暴落、国内の格付け機関は同社の株を「投機的水準」に格下げした。不採算事業の撤退と工場閉鎖を断行すれば、最終的な赤字は2000億円にも膨らむ見通しだ。市場では、主力行の三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行も「見捨てた」とすら囁かれる。
前回の巨額赤字計上から、社長は2回も替わった。ほんの数年前まで、「世界一の液晶メーカー」だった大企業が、銀行の救済がなければ即座に破綻という状況にまで追い込まれた。これが本当の「最終局面」なのか。30年以上同社に技術者として勤務、液晶や太陽電池の研究開発に携わり、現在は立命館アジア太平洋大学で教鞭をとる、中田行彦氏に聞いた。中田氏は今年1月に上梓した『シャープ「液晶敗戦」の教訓』でも同社の失敗を分析している。
まだシャープが「早川電機工業」と呼ばれていて、業界12位のメーカーにすぎなかった'71年に入社した私にとって、このニュースは本当に残念です。「今期は黒字」と言われていたのに、大赤字だった。「健康体になった」という油断があったのかもしれません。これまで以上に厳しい再建策が要求されるのは確実ですから、もう以前のようなシャープには戻れないでしょう。