Photoshop登場までの知られざる歴史
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by Pidz111
Adobe Photoshopは写真編集、画像加工をする人であれば必須のツールです。しかし、意外とその出自を知らない人は多いのではないでしょうか。最初のPhotoshopが発売されたのは1990年2月のことですが、そのきっかけは意外なところにありました。
Story Photograpy: History of Photoshop - History_of_Photoshop_Feb_2000.pdf
https://thedigitalstory.com/notes/History_of_Photoshop_Feb_2000.pdf
ミシガン州アナーバーに住む大学教授のグレン・ノール教授は写真が趣味で、家に暗室を作っていました。息子のトーマス・ノールも影響を受けて写真に興味を持ち、高校では写真部に所属して白黒印刷やカラープリントの技法、色のバランスやコントラストについて学びました。
もう一人の息子、ジョン・ノールは父親が家に持って帰ってきたパソコンに興味を持ちました。初めてパソコンに触ったのは1978年発売のメモリを64Kに増設したApple II Plusだったそうです。1984年にはMacintoshの登場を知ってすぐ父親に声をかけ、ノール教授はMacを購入することに。
やがてトーマスもプログラミングに興味を持つようになりました。1987年、デジタル画像処理についての博士研究のため、Macintosh Plusを購入したトーマス。しかし、Macではイメージ中のグレイスケールレベルを表示できなかったため、処理結果をシミュレートするためのサブルーチンを自分で書き上げました。
トーマスが購入したMacintosh Plus
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このルーチンに目をつけたのが、当時、Industrial Light and Magic(ILM)社で働いていたジョン。トーマスがしていた作業が、デジタル化された画像の中の物体をコンピューターにいかに認識させるかということと関係していたため、トーマスにいくつかの画像処理ツール群を作ってもらったそうです。これがピクサーの画像処理ツールに似ていたので、トーマスはコード部分をまとめ上げ、「Display」という小さなアプリを作り上げました。
この「Display」に、異なるフォーマットで画像保存できる機能を追加したり、ガンマ補正ツールをつけたりしていって、1988年、「ImagePro」が完成しました。このころ、ソフトの改良はトーマスの研究の主目的からは外れていましたが、トーマスはパソコン上で画像を編集するということの可能性に興味を持ち始めていました。
ここで、ジョンはImageProを商用アプリにすることを提案。ちょうどトーマスの研究補助費は底をつき、また奥さんが子どもを欲しがっていたので、仕事を見つける必要に迫られていました。そのため、トーマスは6ヶ月でImageProのベータ版を終わらせ「Photoshop」として完成させることを決めました。ジョンはシリコンバレーでPhotoshopの売り込みを始めましたが、画像編集ソフトのPixelPaintをリリースしていたSuperMac社はこのPhotoshopがどのようにPixelPaintを補完できるのか理解できず、申出を拒否。しかし、BarneyScan社が興味を示し、自社のスキャナにPhotoshopをバンドルしてくれることになりました。
トーマス・ノールが作ったPhotoshopのアイコン。アプリケーションのアイコンは本当に写真屋(Photoshop)のアイコンだったわけです。
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1988年9月、ジョンはPhotoshopをAdobeの内部クリエイティブチームにデモを見せました。AdobeのチームはPhotoshopをいたく気に入っていて、このあとすぐにライセンス契約が結ばれ、10ヶ月の開発期間を経て、1990年2月にリリースされました。このあともトーマスはCS4までPhotoshopプロジェクトに関わり続け、肝心の研究を終えることができませんでした。
一方のジョンはというと「ミッション:インポッシブル」「スタートレック」で特殊視覚効果のスーパーバイザーを務めたり、ILMで「スター・ウォーズ:ファントム・メナス」に関わったりしています。
写真左がトーマス・ノール、右がジョン・ノール。
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by Terry White
ちなみに、グレン・ノール教授は今もミシガン大学工学部の教授職にあり、家ではPowerbookG3を使っているそうです。ただし、家にあった暗室はなくなりました。Photoshopが取って代わったせいです。まさか本人も、自分の趣味がPhotoshopを生み出すきっかけの1つになるとは思っていなかったでしょうね。
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