「ただ世界が燃えるのを見たいだけ」という破壊的な性格特性「Need for Chaos」とは?

政治的な対立が深まる現代社会において、単なる党派的な敵対関係では説明できないような破壊的な行動がしばしば話題になります。そういった行動を起こす人々の一部は社会秩序の崩壊を目的として行動する「Need for Chaos(混沌の希求)」という特性を持っていると、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの政治学者であるブライアン・クラース氏が解説しています。
The "Need for Chaos" Voter - by Brian Klaas
https://www.forkingpaths.co/p/the-need-for-chaos-voter-a68
オーフス大学の政治学者であるマイケル・バング・ピーターセン氏とマティアス・オスムンドセン氏、パリ政治学院の政治学者であるケビン・アルセノー氏が提唱した「Need for Chaos」は性格特性の一種ですが、生まれついての先天的なものではなく、特定の状況下に適応する形で発達する心理状態や反応パターンである「特性的適応」だと説明されています。
The “Need for Chaos” and Motivations to Share Hostile Political Rumors
(PDFファイル)https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/7E50529B41998816383F5790B6E0545A/S0003055422001447a.pdf

特性的適応(characteristic adaptation)は、個人の環境と性格特性が相互作用することで生まれる特性で、特定の文脈における行動傾向を示すとされています。そして、Need for Chaosは、社会的地位を獲得するための特殊な心理戦略として定義された新しい特性的適応の1つです。
Need for Chaosは支配志向の性格特性と社会的な疎外感が組み合わさって発生し、十分に強くなると「破壊的な思考様式」として定着します。Need for Chaosを持つ人々は、既存の政治秩序を「燃やし尽くす」ことで新しい始まりを望み、その過程で自分の地位を向上させることを目指します。この欲求は単なる生物学的な欲求ではなく、地位の維持と獲得に関連する進化的な問題を表現しているとされています。
たとえば、映画「ダークナイト」で、執事のアルフレッドが「Some men just want to watch the world burn.(ただ世界が燃えるのを見たいだけというやつらもいるのです)」と述べ、単に混乱を意図的に引き起こそうとする存在を指摘しました。クラース氏は、アルフレッドが指摘している存在は、Need for Chaosという特性を最もよく表わしていると述べています。
The Dark Knight (2008) - Some Men Just Want to Watch the World Burn Scene | Movieclips - YouTube

特徴的なのは、Need for Chaosを持つ人々は敵対者を標的にした「悪意のある噂」を無差別に広めようとする点です。この行動は単なる党派的な動機とは異なり、政治システム全体への不満から生じているとのこと。彼らは、より良い社会を作るために既存の秩序を破壊しようとする理想主義者ではなく、自分が個人的に受けるべきだと考える尊重を得られていないと感じているため、破壊的な行動を取るというわけです。
クラース氏は、極右陰謀論者で知られるジェイコブ・ウォール氏を「Need for Chaosを持つ典型的な人物」として紹介しています。ウォール氏はリベラル政治家や政府職員を性的暴行で虚偽告発しようとしたり、少数派コミュニティに向けて選挙手続きについての虚偽情報を広めようとしたりした人物です。クラース氏は「ウォール氏は単に政治的な目的だけではなく、意図的に社会的混乱を引き起こそうとする行動パターンを示しており、その行為は必ずしも合理的な政治的利益を追求するものではありませんでした」と述べています。

バング・ピーターセン氏らは、Need for Chaosが社会的地位の喪失や疎外感と強く結びついていることを発見しました。特に個人的な地位の喪失は、Need for Chaosを強く刺激する要因となるとのこと。また、サイコパシーや社会的支配志向性など、他の反社会的な特性とは区別される独自の特性であると主張しています。
クラース氏は、Need for Chaosが特に白人男性の間で危険な形で現れる可能性があると主張。また、ソーシャルメディアの時代において破壊的な個人の及ぼす影響力が増大していることを警告しています。結論として、オンライン上での悪意のある行動に遭遇した際、相手が単なる政治的な対立者ではなく、意図的に混乱を引き起こそうとする「Need for Chaos」の特性を持つ人物である可能性を考慮するべきだと提言しています。
・関連記事
通勤をちょっと楽しくする秘密のポーカーゲーム「Subway Poker」とは? - GIGAZINE
ドナルド・トランプはジョー・バイデンより「ダークな性格特性」を持っているとアメリカ人は認識している - GIGAZINE
「孤独な人」は変わった考え方や話し方をする傾向があることが研究で確かめられる - GIGAZINE
楽観主義者は貯蓄額が多いという調査結果 - GIGAZINE
爆音で走る車が好きな人は「サイコパスかサディストの男」との研究結果 - GIGAZINE
ナルシシストの性格特性は陰謀論者に通じるものがあり陰謀論を信じやすいという研究 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article What is the destructive personality trai….