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ニワシロユリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニワシロユリ
オニユリ
ニワシロユリ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: ユリ目 Liliales
: ユリ科 Liliaceae
: ユリ属 Lilium
: ニワシロユリ L. candidum
学名
Lilium candidum
英名
Madonna lily, white lily

ニワシロユリ(英:Madonna lily[1][2], white lily[3])は、ユリ科ユリ属の植物

概要

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バルカン半島中東が原産地。フランスイタリアウクライナなどのヨーロッパ地域や北アフリカカナリア諸島メキシコなどにも帰化している[4][5]

古くから3000年以上栽培されており、多くの文化にとって大きな象徴的価値を持っている[6]。ユリに共通するウイルス病に罹り、またボトリティス菌にも弱い。ウイルス病の問題を解決する術の一つとして種子から育てることが挙げられる。

特徴

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他のユリと異なり、冬の間に葉のロゼットを成長させて、翌年の夏に枯れる。葉の付いた花茎1.2mほどに成長し、時には2mに達することもある。花は純白で、花弁の奥が黄色に染まっている[7][8][9][10][11]

文化

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母子とパドヴァのアントニオ、ニコーラ・ダ・トレンティーノ。両聖人とも白いユリの花を持っており、その貞節な生活を象徴している。

ニワシロユリは、古代ミノアクノッソス宮殿跡にある『ユリの王子』と題されたフレスコ画に描かれている。

聖書の翻訳によっては、ヘブライ語のShoshannahを『歌の中のユリ』と訳しているものもある。 例えば、アブラハム・イブン・エズラは、「良い香りを放ち、6枚の花弁と6本のの雄蕊を持つ白いユリ」と表現している。しかし、『峡谷のユリ』という言葉があるように、一般的に山地に生育し、谷間には生育しないため、その正体は不明である。

聖書には、ソロモン神殿と真鍮製の海(水盤)にニワシロユリの意匠を施された[注 1][注 2][12]

カトリック教会正教会の一部の図像において、白いユリは純潔を象徴している。例えば、中世の受胎告知の描写では、大天使ガブリエルが聖母マリアに白いユリを手渡ししている。更に白いユリはナザレのヨセフ[13]パドヴァのアントニオ、マリア・ゴレッティなど他の処女や貞潔な聖人の象徴でもある。

フランスでは、ニワシロユリを様式化したものと表現されるフルール・ド・リスの象徴が採用されたが[14][15]、この象徴の形状は、より正確にはキショウブまたはニオイイリス英語版に似ている[16][17]。ユリの花はイエフド・メディナータの古代硬貨やサラディン時代のシリアの中世の旗にも描かれている[要出典]。西洋の文脈で初めて登場するのは、アッコにある聖ヨハネ騎士団の施設の食堂を飾る石彫で、おそらくヴァロワ=アンジュー家が採用した事との関連を示している。

1999年以前、ニワシロユリはケベック州の州花であり、これはおそらくケベック州旗のフルール・ド・リスに因んだものであろう。しかし、ニワシロユリはケベック州には自生していないとして批判され、1999年にケベック州原産のブルーフラッグ英語版に変更された[18]

食用

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台湾では花も球根も食用として利用されており、ニワシロユリの他にハカタユリオニユリイトハユリなどが食べられている[19]

動物への毒性

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ニワシロユリの種の鞘と種子 - トゥールーズ自然史博物館

ネコはこの植物の毒性に対して極めて敏感で、摂取するとしばしば致命的となる[20][21][22]。ネコが出入りする家庭や庭では、この植物を栽培したり、ドライフラワーを置いたりしないことが強く勧められる[23]。摂取した場合は活性炭の投与や催吐処置を行うことによって吸収される毒素の量を減らすことができる。治療は一刻を争うため、場合によっては獣医師が自宅で行うことを進めることもある。ネコに大量の輸液を点滴で行い、腎臓への被害を軽減し、生存の可能性を高めることができる[23]

ギャラリー

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脚注

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注釈

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  1. ^ 柱の上にある頭は四キユビトの百合花の形にして廊におけるがごとし(列王記上7:19)
  2. ^ 海の厚は手寛にして其邊は百合花にて杯の邊の如くに作れり海は二千斗を容たり(列王記上7:26)

出典

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  1. ^ BSBI List 2007”. イギリス・アイルランド植物学会. 2015年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月17日閲覧。
  2. ^ USDA Plants Database”. plants.sc.egov.usda.gov. 2016年1月24日閲覧。
  3. ^ Lilium candidum L. GRIN-Global”. npgsweb.ars-grin.gov. 2022年6月1日閲覧。
  4. ^ Plants of the World Online | Kew Science” (英語). Plants of the World Online. 2023年7月26日閲覧。
  5. ^ Lilium candidum [Giglio bianco di S. Antonio - Flora Italiana]”. luirig.altervista.org. 2023年7月26日閲覧。
  6. ^ Haggett, Peter (2002) (英語). Encyclopedia of World Geography. Marshall Cavendish. ISBN 978-0-7614-7289-6. https://books.google.co.jp/books?id=6BqVsXdHWAIC&pg=PA2089&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 
  7. ^ Tutin, Thomas G., ed (2010). Flora Europaea. vol. 5: Alismataceae to Orchidaceae (Monocotyledones) / ed. by T. G. Tutin (1. paperback print ed.). Cambridge: Cambridge University Press. pp. 1-452. ISBN 978-0-521-20108-7 
  8. ^ Davis, Peter Hadland, ed (2008). Flora of Turkey and the East Aegean Islands. Vol. 8. 8 (Reprinted ed.). Edinburgh: Edinburgh Univ. Press. ISBN 978-0-85224-494-4 
  9. ^ Danin, Avinoam (2004). Distribution atlas of plants in the Flora Palaestina area. Jerusalem: Israel Acad. of Sciences and Humanities. pp. 1-517. ISBN 978-965-208-167-4 
  10. ^ Ikinci, Nursel; Oberprieler, Christoph; Güner, Adil (2006-10). “On the origen of European lilies: phylogenetic analysis of Lilium section Liriotypus using sequences of the nuclear ribosomal transcribed spacers”. Willdenowia 36 (2): 647–656. ISSN 0511-9618. https://epub.uni-regensburg.de/19487/. 
  11. ^ Turland, Nicholas J.; Dimopoulos, Panayotis; Raus, Thomas et al., eds (2013). Vascular plants of Greece: an annotated checklist. Berlin: Botanic Garden and Botanical Museum Berlin-Dahlem. ISBN 978-3-921800-88-1 
  12. ^ 列王紀略上(文語訳) - Wikisource”. ja.wikisource.org. 2023年9月26日閲覧。
  13. ^ ALL SAINTS: Flowers in Christian Symbolism”. ALL SAINTS. 2023年7月26日閲覧。
  14. ^ THE SYMBOLS OF MARY”. www.catholictradition.org. 2018年4月6日閲覧。
  15. ^ Lewis, Robert E. (1973) (英語). Middle English Dictionary. University of Michigan Press. p. 1051. ISBN 978-0-472-01125-4. https://books.google.co.jp/books?id=heLRKxy-uawC&pg=PA1051&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 
  16. ^ Buczacki, Stefan (2015-02-02) (英語). The Herb Bible: The definitive guide to choosing and growing herbs. Octopus. p. 223. ISBN 978-1-78472-023-0. https://books.google.co.jp/books?id=uROWBAAAQBAJ&pg=PA223&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 
  17. ^ McVicar, Jekka (2006) [1997]. Jekka's Complete Herb Book (Revised ed.). Bookmark Ltd. ISBN 978-1845093709 
  18. ^ Harlequin blue flag (Iris versicolor), our floral emblem”. Espace pour la Vie Montréal. 2022年5月3日閲覧。
  19. ^ 可供食品使用原料彙整一覽表”. 2014年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月25日閲覧。
  20. ^ Frequently Asked Questions - No Lilies For Cats.”. 2022年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月26日閲覧。
  21. ^ Fitzgerald, Kevin T. (2010-11-01). “Lily Toxicity in the Cat” (英語). Topics in Companion Animal Medicine 25 (4): 213–217. doi:10.1053/j.tcam.2010.09.006. ISSN 1938-9736. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1938973610000711. 
  22. ^ The trouble with lilies: fabulous but fickle”. www.telegraph.co.uk. 2023年7月26日閲覧。
  23. ^ a b Lily Poisoning in Cats” (英語). www.petmd.com. 2023年7月26日閲覧。

外部リンク

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