コラム:中国依存強めるアップルに政治的リスクも

コラム:中国依存強めるアップルに政治的リスクも
 10月27日、米アップルは、中国向け事業が大きな特徴というハイテク企業になろうとしている。写真は同社のロゴ。都内で2011年10月撮影(2015年 ロイター/Yuriko Nakao)
Robert Cyran
[ニューヨーク 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米アップルは中国向け事業が大きな特徴というハイテク企業になろうとしている。7─9月期の売上高515億ドルの約24%を中国が占め、過去1年間の売上高では3分の2に及ぶ。
「iPhone(アイフォーン)」の割賦販売方式導入で、この割合はさらに高まるかもしれない。中国に賭けるティム・クック最高経営責任者(CEO)の戦略は魅力的な配当をもたらしているが、実在する政治的リスクも伴う。
アイフォーンは現在、アップルの売上高に占める比率は63%で、利益となるともっと高い。新機種がどの程度まで成功するのか、株主やウォッチャーたちが正確に見極めるには次の四半期まで待つ必要があるだろう。新型スマートフォンの販売時期は7─9月期のごく一部しか含まれていないからだ。それでも、アップルの業績からは海外販売、とりわけ中国への依存度の高さが目立つ。アップルは中国で125億ドル相当の商品を販売したが、金額は昨年の2倍近くに達している。このうちの大半は携帯電話だ。
アップルが最近導入した販売プログラムのおかげで、中国のアイフォーン販売台数は今後数年にわたり伸びる可能性がある。米国や他の一部の国々の携帯電話事業者は、割賦販売を通じた電話機の販売に移行しつつある。アップルもこの仲間に加わった。顧客は2年間にわたり購入代金の支払いを続けるが、新たな2年契約に同意して旧型機をアップルに返却すれば1年後に新機種へのアップグレードが可能だ。返却されたこれらの端末の多くは最終的に中国で販売される。
中国は、修理や調整後に再出荷された「リファービッシュ」と呼ばれる携帯電話の再生品の一大市場。チャイナ・モバイル<0941.HK>の通信網では、同社が2013年にアイフォーンの販売で合意する前に既に約4000万台のアイフォーンが使用されていた。アップルは現在では再生品の販売が可能で、格安携帯電話機の大規模な市場である中国には最適の商品と言える。
ただ、さらに中国依存度を高めることにはリスクもある。オラクル、IBM、EMCなどの企業に聞いてみればいい。中国が政府調達リストから海外の有力ハイテク企業を除外した結果、これらの企業は販売が打撃を受けた経験があるからだ。アップル自身もよく知っている。2013年に中国メディアから度重なる攻撃を受けた末、クックCEOはアップルの中国における「放漫で不注意な」手法について謝罪した。中国が再びアップルに敵意を抱く事態となった場合、今度は謝罪では済まないだろう。
●背景となるニュース
*アップルが27日発表した第4・四半期(9月26日まで)決算は、純売上高が約22%増の515億ドルとなった。純利益は111億2000万ドル(1株当たり1.96ドル)で、前年同期の84億7000万ドル(同1.42ドル)から増加した。
アイフォーンの販売台数は22%増の約4800万台。タブレット端末「iPad(アイパッド)は20%減の990万台、パソコン(PC)「Mac(マック)」は3%増の570万台だった。
*同社の発表内容は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
apple.co/1MgSOnZ
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