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irienchy「バイバイ」ジャケ写

irienchy バイバイ

思わず口ずさみたくなる、とにかく明るい別れの歌

文 / ナカニシキュウ

結成5周年を迎える4ピースバンド・irienchyが2022年にリリースした「バイバイ」が、じわじわと注目を浴びている。てらいなくまっすぐに響く宮原颯(Vo, G)の特徴的な歌声とノスタルジックなメロディライン、確かな演奏力に基づくテクニカルなバンドアンサンブルが混然となった、実直かつ晴れやかなサウンドがリスナーのハートを着実にキャッチしているということだろう。

この不思議なバンド名は「イリエンチー」と読み、メンバーである(入江)諒孟(G)の家でのセッションから生まれたバンドであることが由来なのだという。バンドのモットーとして「少年の頃のワクワクを忘れずに、人生を謳歌すること」を掲げており、そのフィロソフィーの片鱗は本楽曲でも至るところに見て取ることができる。

例えば、思わず口ずさみたくなってしまう「バイバイ別れがやってきた」というサビのフレーズ。この“思わず口ずさみたくなる”は音楽の最も根源的な喜びのひとつであると言え、しかも別れを歌っているにもかかわらず圧倒的にカラッとした能天気ソングのように響くところが本楽曲の非凡さを象徴している。それはもちろん軽快に跳ねるビート感や明朗な歌メロによるところも大きいが、それ以上にとにかく本人たちが心から演奏を楽しんでいることが最大の要因と考えられる。

ブレイクで差し込まれるカントリー調のギターフレーズ、2コーラス目の「僕は2回やるんだろう」でボーカルとユニゾンするライドシンバル、そののちにうねるように歌い出すベースラインなど、テクニカルな要素の多いアレンジだが、卓越したテクニックをひけらかしている印象は皆無。単に「そうしたほうが楽しいよね」という理由でさまざまな技巧を凝らしているようにしか聞こえず、その快活な音像がバンドの思想を雄弁に物語っている。「音楽とは、バンドとは楽しいものだ」という、至極当たり前の事実を改めて思い知らせてくれる1曲だ。

irienchy「バイバイ」

irienchy「バイバイ」
2022年10月12日(水)配信開始 / BIGRANDE MUSIC
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irienchy(イリエンチー)

宮原颯(Vo, G / ex. MOSHIMO)、(入江)諒孟(G)、井口裕馬(B)、本多響平(Dr / ex. MOSHIMO)からなる4人組。2020年1月に入江(諒孟)の家で行われた作曲セッションをきっかけに生まれた。バンドのモットーは「少年の頃のワクワクを忘れずに、人生を謳歌すること」で、日常に潜む感情や繊細な心の声を表現した歌詞と、温かみのあるメロディが特徴。