湖の侵略的外来魚に「勝利」、どうやった? 米五大湖のウミヤツメ

生態系規模で成功した唯一の外来魚駆除プログラム、関係者が勝利宣言

2024.11.25
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大西洋原産のウミヤツメは、1800年代に北米の五大湖に侵入し、運河を通ってさらに広がった。(Photography by Andrea Miehls/GLFC)
大西洋原産のウミヤツメは、1800年代に北米の五大湖に侵入し、運河を通ってさらに広がった。(Photography by Andrea Miehls/GLFC)

 北米の五大湖で、年間70億ドル(約1兆800億円)の規模を誇る漁業を崩壊寸前に追い込んだ外来魚ウミヤツメ(Petromyzon marinus)の駆除プログラムが、まれにみる成功を収めている。数十年におよぶ努力の末、人類は侵略的外来種の広大な湖全域における制御に成功した。世界でも類を見ない、野生生物管理の成功事例だ。

 ヤツメウナギの仲間で大西洋原産のウミヤツメは、100年以上前に人間の活動によって五大湖の全域に侵入し、サケやレイクトラウト、ウォールアイといった在来種を食い荒らすようになった。

「ウミヤツメは、ただ泳いで入ってきただけです。我々人間が運河を建設して扉を開けてしまったのです」と、ウミヤツメの管理に取り組む五大湖漁業委員会(GLFC)の立法問題・政策担当責任者であるグレッグ・マクリンチー氏は言う。「彼らに何ができるのかを、完全には理解していませんでした」

 ウミヤツメは成魚になるとほかの魚に寄生する。1匹のウミヤツメは、その生涯で合計18キロ分もの魚を死に至らしめることができる。メスは約10万個の卵を産み、およそ75%が孵化する。(参考記事:「傷ついた五大湖」

「多いときには、年間4万5000トン以上の魚がやられてしまいました」と、マクリンチー氏は言う。「資源を巡る競争で、人間は後れを取ってしまいました。生態系に対して、人間よりも大きな損害を与える生物など、めったにいません」

 五大湖周辺の魚たちは、ウミヤツメから身を守る備えができていなかっただけでなく、ウミヤツメの被害を抑えられる天敵も存在しなかった。

 その侵略的外来種との闘いでカギを握ったのが、新しいタイプの駆除剤だった。この薬剤のおかげで、2024年の時点で五大湖流域のウミヤツメの90~95%が駆除された。しかも、在来種には実質的に何の影響も与えていない。

次ページ:獲物の体に穴を開け、血を吸う手ごわい敵

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