新浜レオン、SHOW-WAとMATSURI、ZANPA……演歌歌謡曲×J-POPの融合から生まれる音楽シーンの新潮流

ZANPAら演歌歌謡曲×J-POPの融合

 現在の音楽シーンにおいて、ルーツミュージックへの原点回帰ともいうべき現象が起きている。アメリカにおけるカントリーミュージックしかり、南米発のラテンポップスの大ヒットしかり。ここでは、ルーツミュージックと最新ポップスとの“温故知新”的な融合による新たな世界的潮流が生まれてきているといえるだろう。

 日本に目を向けてみると、そのルーツミュージックは演歌・歌謡曲であるとひとまずは定義することができる。

 例えば、氷川きよし。昨年末の『第75回NHK紅白歌合戦』のパフォーマンスでは、活動休止明けから見事に復活、その健在ぶりを示したように、彼はもちろん演歌というジャンルのトップランナーであり続けているが、20年を超えるキャリアの中で都度都度、演歌からJ-POPへのアプローチを試みている。その象徴的な楽曲が、アニソンとしてスマッシュヒットした「限界突破×サバイバー」(2017年)。ジャンルをまさに突破したヒットソングとなったことは記憶に新しい。

氷川きよし / 白雲の城【公式】
氷川きよし / 限界突破×サバイバー ~DVD「氷川きよしスペシャル・コンサート2018 きよしこの夜Vol.18」より【公式】

 歌謡曲をバックグラウンドにした男性コーラスグループ・純烈の成功とその人気の継続もまた、その流れの延長線上にあるといえよう。スーパー銭湯を拠点にライブ活動、イベントを積み重ねることで、地道にファンダムを作り上げ、その活動が地上波テレビの情報番組に取り上げられるや、一気にスター街道を突き進み、成功をつかんだ。そんな彼らの道のりは、古き良き歌謡曲のリブランド化と接触系イベントでのCD拡売施策をマッシュアップした斬新なアプローチであり、歌謡曲というジャンルの新たな転換点になった。

第75回NHK紅白歌合戦 歌唱曲|純烈「夢みた果実」MV

 そして、まさにいま、そんな先人達が切り開いた道の延長線上で歌謡曲とJ-POPのミクスチャーがより積極的に展開され、新たなシーンを生んでいる。

 その象徴的な新星として最初に挙げたいのが、新浜レオン。昨年末の『紅白』で一気に注目が集まった彼は、90年代のJ-POPを牽引したヒット制作集団であるビーイング(現:B ZONE)所属の初の演歌・歌謡歌手という出自からしてユニークだ。上記2アーティストとは逆のアプローチ、J-POPサイドからの演歌歌謡曲サイドへの接近がここにみられる。2019年のデビュー以降、往年のカバーソングを織り交ぜつつも、現代解釈の演歌歌謡曲のヒットソングの王道を目指して作られたオリジナルソングはポテンシャルが高く、クオリティが担保されていた。そして、2022年にはTVアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』OP主題歌「捕まえて、今夜。」がスマッシュヒット。2024年には、木梨憲武プロデュース、所ジョージ作詞・作曲のオリジナル楽曲「全てあげよう」で一気にブレイクし、そのキャラクターとともに、お茶の間をざわつかせて念願の『紅白』初出場を勝ち取り、時の人となった。思えば、前出の氷川きよしもビートたけしの肝入りというのが一つの決定打となったことが想起され、マーケティング的な“温故知新”がなされているとさえ感じ取ることができる。

新浜レオン「捕まえて、今夜。」ミュージックビデオ(フル Ver.)【公式】
新浜レオン「全てあげよう」ミュージックビデオ(フル Ver.)【公式】

 常に時代の仕掛け人であり続けるプロデューサー・秋元康も黙っていない。彼の手掛けるアーティストは“昭和歌謡リバイバル”をコンセプトにした男性グループ、SHOW-WAとMATSURIだ。応募資格25歳以上という異例のオーディションを開催。3000人以上の応募者の中から、元Jリーガー、ごみ収集作業員、料理研究家など、様々な経歴を持ったメンバーが選ばれ、昭和歌謡男性グループとしてこの2グループが誕生した。SHOW-WAはデビューシングル『君の王子様』がオリコン週間シングルランキングで初登場2位、MATSURIはデビューシングル『アヴァンチュール中目黒』が同ランキング初登場1位を獲得。デビュー作で一気にスタートダッシュを決めて、気を吐いてみせた。

SHOW-WA / 君の王子様 -Music Video-
MATSURI / アヴァンチュール中目黒 -Music Video-

 そんな中、温故知新を取り入れ、演歌歌謡曲というジャンルとJ-POPのハイブリッドに徹する、今最注目のグループを紹介したい。ZANPAである。時代を斬り開く新しい波、“斬波”として命名。現在はアルファベット表記で活動中だ。

 今年結成11年を迎えるZANPAは、YOMA、孝介、航、義文からなる4人組のダンス&ボーカルグループ。メンバーそれぞれの声の魅力に加え、アカペラでコーラスワークをも多彩に繰り広げ、ボーカルの声質・声量・技術力が、演歌歌謡曲ジャンルにとどまらないポテンシャルの高さを感じさせる。この4人体制になった初期のキャッチフレーズ、”新感覚歌謡男子”は、まさにそんな彼らを体現し、様々な場所でのライブ、イベント活動を通じ、従来の演歌歌謡曲リスナー層だけでない、新たなファン層を獲得。彼らの持つ幅広い魅力が、80~90年代の歌謡曲~J-POPへの移行期、その両方を聴いて育ったようなリスナーにも浸透していく。こうして、順調にファンダムを増やしながら、オリコンチャートでも存在感を示していくのだった。

ZANPA
YOMA
ZANPA
孝介
ZANPA
ZANPA
義文

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる