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新型コロナウイルスのためにどこに出掛けることもかなわないが、せめて気分だけでも旅したつもりで。写真特集最終回は、昭和基地との別れ、復路のしらせで見たオーロラや動物たちを紹介する。特集のために撮りためた写真のほぼ全量をチェックしたが、楽しい旅路だったと改めて思う。帰国後の私が担当することになったのはウイルス対策に奔走する東京都庁。深夜、都庁の記者クラブで南極の写真を見ていると、その美しさにため息さえ出る。さらば南極、また会う日まで。(気象予報士、共同通信=川村敦)
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①出会いあれば別れあり。昭和基地での仕事が終わった夏隊員たちは1月下旬から順次、しらせに戻った。基地に残る越冬隊員とヘリポートで抱き合う夏隊員。思いが表情からあふれる。(2月1日)
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②昭和基地には業務用の無線のほかに、アマチュア無線の装置もある。趣味でやっている隊員がときに交信を試みる。日本など各地の愛好家にとって、南極の基地との交信は今でも楽しみのひとつとなっている(2月2日)。
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③私が昭和基地を離れるヘリに乗り込んだところ、越冬隊員がQRコードを印刷したボードを掲げていた。読み取ってみると…(2月4日)。
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④そして、ヘリは昭和基地を離陸した。いつまでも手を振る隊員たち。私が再び昭和基地を訪れる日は来るだろうか(2月4日)。
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⑤昭和基地からの復路で、南極観測船「しらせ」の艦上から海洋観測を取材していると、クジラが現れた。水面で身をくねらせると尾が見えた(2月16日)。
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⑥研究のため、海底の泥を採った観測隊員の板木拓也さん(手前)。サンプルの泥を処理する表情は真剣そのものだ(2月22日)。
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⑦海氷上で見かけたアザラシは、遠くからだとナメクジがはっているようにしか見えない。だが、近づくと堂々たる体である。この日はアザラシをよく見た(2月27日)。
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⑧アデリーペンギンのほかにコウテイペンギンもよく目にした。アデリーより体が少し大きい。のしのしと歩く姿はおじさんっぽい(2月27日)
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⑨氷海の朝日を撮影した。視界に動く物もなく、ただただ、静かだった(3月3日)。
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⑩星空としらせのマスト。文字通り満天の星空で、きれいとしか言いようがなかった。夢中になって撮った(3月4日)。
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⑪水平線の彼方の氷山が、蜃気楼で宙に浮いているように見えた(3月4日)。
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⑫しらせの艦首を洗う荒波をブリッジから撮影した。この後、この波はブリッジの窓にばっしゃーん。ときにはこういう日もある。私は幸い吐くようなことはなかったが、何人かの隊員は青い顔をしていた。暴風圏を抜けると、寄港地であるオーストラリア・シドニーはもうすぐ。観測隊員はそこでしらせを降り、飛行機で帰国した。新型コロナウイルスの影響で帰国日程を繰り上げることになり、シドニー観光はできなかった(3月12日)。
長きにわたり、ご愛読ありがとうございました。(終わり)