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企画記事
PlayStation 2が今日で20周年! 史上最も売れたゲーム機と,ここから生まれた名作タイトルを振り返る
真・三國無双 2000年8月3日発売
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「無双シリーズ」はゲーマーなら知らない人のほうが珍しいコーエーの有名シリーズだ。そして,その実質的な初代作品と言えるのが「真・三國無双」だ。なぜ“実質的な”と添えているかというと,「真・三國無双」は実は2作目で,本作の前に「三國無双」というゲームが存在していたからだ。
「三國無双」は,現在の無双シリーズとは大きく異なり,なんと格闘ゲームとして世に登場していた。どことなくキャラクターデザインが似ていたり,一部の攻撃モーションが似通っていたりするものの,基本的には全く別のゲームだ。
現在では三國無双のスピンオフだけでなく,ガンダム無双やゼルダ無双など,他作品とのコラボが行われるほどの一大ジャンルがどのようにして始まったのか,その原典とも言える「真・三國無双」を約20年ぶりにプレイしてみよう。
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ゲームを起動すると,コーエーテクモではなく懐かしのコーエーロゴが登場。いつものオメガフォースのロゴ演出はこの当時から健在だ。
最初に使用できるキャラクターは,蜀の「趙雲」「張飛」「関羽」,魏の「夏侯惇」「典韋」「許褚」,呉の「周瑜」「陸遜」「孫尚香」の9人だ。他のキャラクターは,ゲームをプレイして解禁する必要があるのだが,そういえば「確か全キャラ出現の隠しコマンドがあったよなぁ」と思い出す。
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さすがにコマンドは覚えていなかったのであれこれと調べ,タイトル画面でコマンドを入力。これによりプレイ可能なキャラクターは一気に28人となり,「劉備」や「曹操」といった各勢力の大将はもちろん,言わずと知れた「呂布」もフリーモード限定ながら使用可能になった。
本編となるのは「無双モード」。今回使用するキャラはなんとなくシリーズの主人公的な雰囲気を持つ「趙雲」にしてみた。ちなみに無双モードとはストーリーモードのようなもので,時系列順に各勢力が参加した戦いをプレイできる。
第1ステージはシリーズおなじみの「黄巾の乱」だ。ステージ開始前にいつもの戦闘準備画面が表示されるが,武器の変更も無ければ装備アイテムも無く,戦闘準備と言っても戦いの概要と両軍の情報を見られる程度のものとなる。
ステージ開始後,最初の戦闘で真っ先に感じたのは「攻撃範囲が狭い」ということだ。本作が2以降のタイトルと大きく異なるのは「連続攻撃が4回までしかできない」点だが,他作品も序盤は4回攻撃なのであまり気にならなかった。むしろ,攻撃範囲の狭さにより一度に攻撃できる敵の数が減り,そこに攻撃回数の少なさも相まって,雑魚兵の処理すら手間取ってしまうことに苦労を覚えた。
正直なところ「昔の自分はよくこれをプレイしていたな……」と最初は思ったが,なんだかんだで最後まで黙々とプレイ。無双シリーズは基本的にプレイヤーが仕事をしないと負けるので,「自分が敵を倒さなければ」と各所に意識を配る忙しさが,いい具合にゲームに集中させてくれるのだろう。
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このほかに「遠くが見えない」ことにも今回,初めて気付いた。おそらく描画の負荷軽減のためなのだろうが,一定の距離から先はモヤがかかったように隠されている。「右スティックでカメラを動かす」といった操作もなく,全体的に視界は悪い。
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なにぶん20年前のゲームなので,いろいろと不自由なのは仕方のないところだが,逆に「この頃はこんなに強かったのか」と感じた要素もある。
まず1つは弓だ。前述の通り攻撃範囲が狭く,数を相手にするのがやや億劫な本作において,1発あたり攻撃3,4回分の威力がある弓は雑魚の処理にとても役立った。また,敵将と戦う際に相手をダウンさせてしまうと,アイテムを使われ回復されてしまうのだが,弓ならその心配がないので,安心してダメージを与えられるのだ。
もう1つは騎乗攻撃だ。これは“鐙(あぶみ)”系のアイテムがまだないので馬に乗れる状況が少なく,馬という存在がレアだったためだろう。慣れてくると1体の敵に騎乗攻撃を複数回当てられるようになり,地上にいるより早く敵を倒すことができた。
これらのほかにも,プレイアブルキャラクターでもムービーシーンと攻撃時以外はしゃべってくれなかったり,モーションが割と使いまわされていたり,騎乗した状態で落ちているアイテムを拾えなかったり,諸葛亮がビームを撃たなかったりと,久々のプレイで驚いたことが本当に多かった。
現在「真・三國無双」はナンバリングタイトルとしては8作目が登場し,ステージ制ではなくオープンワールドのゲームになっている。使用可能な武将も90名に達しており,旧作ではモブだった武将が新作でイケメンになっているのを見るとなかなか感慨深いものがある。
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さすがに「初代のほうが面白い」とは言えないが,以降のシリーズ作品とは違うステージの作りや雰囲気がある。日々進化を遂げる「無双」というジャンルの基礎となる本作は,間違いなくPS2時代の名作である。
鬼武者 2001年1月25日発売
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2001年にカプコンより発売されたアクションゲーム「鬼武者」。開発中のコード名は「戦国バイオ」であり,固定カメラが描写する映画の様なシーンを冒険できること,回復アイテムなどの各種リソースが有限であること,パズル的な仕掛けがあること……などなど,「バイオハザード」との共通点が多かった。プレイヤーは若武者「明智左馬介」となり,戦国時代に人々を襲う異形の怪物「幻魔」と戦う。
ちなみに,PlayStation 2で発売されたゲームタイトルで,はじめてミリオンセラーを達成した記念すべき作品が,この「鬼武者」だ。
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本作を語るうえで欠かせないのが「一閃」と「弾き一閃」だろう。これは,敵からの攻撃を受ける寸前に斬り付ける(一閃),もしくは敵の攻撃を直前で防御する(弾き一閃)ことで発動する特殊技だ。筆者はギリギリでガードしたり,技を返したりといった特殊防御系のシステムが大好きで,一発でハマってしまった。
雑魚なら一発で倒せるし,複数の敵が群がっていれば,一瞬で全てに斬り付けられる。「鬼武者」のウリである“バッサリ感”の源とも言えるだろう。
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しかし,強力なぶん出すのが難しい。攻撃を引きつけるにしても,防御するにしても,そのタイミングは本当のギリギリ。わずかでも反応が遅れるとこちらがダメージを受けてしまう。雑魚の中でも色々な技を使う者がいて,技によって難度がさらに上がる。まずは斬られまくって体でタイミングを覚えるしかないわけで,なかなかにしんどい。
前述の通り,回復アイテムは有限なので,そうそう斬られ続けるわけにもいかない。無難に倒して先に進むか,少し粘って練習するか……という選択がなかなかに悩ましいのだ。発動のキーがタイミングなのもポイントだ。さっきまで一閃できていたはずの技がなぜか失敗するようになったり,弾き一閃の防御が早すぎたり,遅すぎたりと調子がずれることも起こる。苦労するだけに,ある程度タイミングを掴めた時には強い達成感を味わえるのだが。
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「一閃」ばかりに夢中になっていた筆者は,ロクに先へ進まず,雑魚相手に練習してはリセットを繰り返していた。バトルのみを楽しめる「魔空空間」が解禁されたときには,小躍りして喜んだものだった。
一閃が時代劇的な雰囲気を生み出していたことも見逃してはならないだろう。構えも取らずにたたずむ主人公,そこに敵が斬りかかった瞬間,剣が閃いて決着がついている……という静と動の対比は,それこそ時代劇のワンシーンのよう。言い換えれば,西洋剣による激しいバトルが一般的なアクションゲームの世界において,「鬼武者」はギリギリまで攻撃させないことにより,和を思わせるアクションを成立させ,差別化をはかったのではないか。
このように,世界観とシステムの両面で時代劇の雰囲気を追及した「鬼武者」だが,シリーズは2006年の「新 鬼武者 DAWN OF DREAMS」で途絶えている。「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」が多くのGOTYを獲得するなど,和風ゲームが再び脚光を浴びている今だからこそ,静と動の一閃を現行機でまた楽しんでみたくなっている。
シャドウハーツ 2001年6月28日発売
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筆者が今までに遊んだPS2タイトルで,1番面白いと思っているのが「シャドウハーツ」シリーズだ。その1作目となる「シャドウハーツ」は,2001年にアルゼ(現:ユニバーサルエンターテインメント)から発売された。アルゼはゲーマーより,パチスロを打っている人の方が馴染みがあるかもしれない。あの「大花火」や「ミリオンゴッド」などを展開しているメーカーである。
物語の舞台は1913年,1914年の中国とヨーロッパ。第一次世界大戦前の時代なので,やや暗いシリアスな雰囲気が漂っている……が,そんなの関係ねぇと言わんばかりのイロモノキャラ率でボケ倒してくるのがこのゲームのポイントだ。
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戦時中のシリアスな雰囲気と,ギャグのギャップが本作の魅力を高めているのは間違いない。チンピラ主人公であっても可愛いヒロインを命がけで救うし,世界のために必死で戦う。だから余計カッコよく見えるのだ。
そんなギャグとシリアスが良い塩梅にバランスを取ったストーリーと,神話やオカルトなどを織り交ぜた独特な世界観を生み出した,監督・脚本の板倉松三氏(現在は町田松三の名義で活動中)が,それまでグラフィッカーとして活動していたと聞いた時は驚いたものだ。
パッケージに封入されていたブックレットには,板倉氏自らが本作を作るうえで試行錯誤したことや,キャラクターたちに対する思いが書き綴られ,映画監督の石井克人氏との対談も載っている。これだけでも本作に懸ける熱量の高さがうかがえるので,そんな作品をボケ倒しているなんて紹介してしまって申し訳なく思うが,本当に最高に笑えるのだ。
本作を語るうえで,ユニークな戦闘システムの紹介も欠かせない。戦闘画面は一見すると,よくあるコマンド式バトルなのだが,アクションを実行するには「ジャッジメントリング」を成功させなくてはいけないのだ。
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攻撃をするにも,特技や魔法を発動させるにも,アイテムを使うにも,すべてこのジャッジメントリングを成功させなくてはいけない。毎回いちいちやるのはめんどくさそうだと思われるかもしれないが,慣れれば手が覚えた感覚でトントントンっと止められるし,クリティカルエリアを狙うときはそこそこの緊張感がある。本作でゲームの上手い下手を決めるのが,プレイヤーの「目押し力」というのも,とてもユニークなポイントだ。
また,このジャッジメントリングが存在することによって,本作に登場する状態異常にも面白いものが含まれる。毒や麻痺,混乱といった基本的なものに加えて,ジャッジメントリングに異常をもたらすステータスが存在するのだ。キャラクターではなく,操作するプレイヤー自身に対して大打撃となることが,いろいろと興味深い。
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今回は第1作目を紹介したが,続編の「シャドウハーツII」,第3作目の「シャドウハーツ・フロム・ザ・ニューワールド」がPS2用ソフトとして発売されている。「II」はとくに人気があり,IGNのPS2 Best RPGに選ばれるほどだ。ちなみに,「II」の楽曲は弘田佳孝氏に加え,ゲストコンポーザーとして光田康典氏と伊藤賢治氏が参加している。光田氏が作る街のBGM,伊藤氏が手掛けるダンジョンのBGM。神曲にきまっているじゃないか。そして,ナンバリングを重ねるごとにギャグがパワーアップしていくことも余談として加えておこう。
有名タイトルの陰に隠れてしまっている感も否めない「シャドウハーツ」シリーズだが,“笑って泣ける”RPGをお探しの人には全力でオススメしたい。
ICO/ワンダと巨像
2001年12月6日/2005年10月27日発売
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上田文人氏が制作した「ICO」と「ワンダと巨像」(以下,ワンダ)は,いまも語られることが多いPS2の名作だ。ここでは筆者の「ICO」と「ワンダ」それぞれの出会いを振り返りながら,その魅力をお伝えしてみたいと思う。
「ICO」との出会いは十代後半という,いろいろ“こじらせている”時期だった。もう20年近く前の話なので,なぜ手にしたかははっきりとは思い出せないが,ビジュアルやパズル要素のあるアクションアドベンチャーという情報を見て,自分が好きな「ゼルダの伝説」シリーズに似た雰囲気を感じた……みたいなことだったと思う。
一方で「ワンダ」を手にしたのは,十代のころよりはこじらせが落ち着いたというか,“一部分はさらに深まれど,それはそれとして物事を真っすぐ受け止められる人間”に成長していた(であろう)二十代前半。PS3リマスター版や上田氏の新作「人喰いの大鷲トリコ」の発売のタイミングなど,これまでも時おり「ICO」と「ワンダ」はプレイしているのだが,今振り返ってみるとそれぞれの出会いの印象は全く異なるものだった。
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「ICO」は,“気がつけば大好きになっていた”作品だった。村のならわしによって生贄に出された少年(イコ)を操作し,言葉の通じない少女ヨルダを導きながら迷路のような城の外を目指す。“手をつないで少女を導く”という部分に照れくささを感じつつも「この女の子を助けたい!」という,まっすぐ向き合いにくい自身の純粋さにも触れ,それはそれで恥ずかしくて悶絶する。そんな“こじらせのループ”にはまり,独特の操作性やカメラワークに戸惑いながらも不思議な世界を冒険するうち,気付けば作品の持つ独特の雰囲気に魅了され,終盤の展開やエンディングを迎えるころには夢中になっていた。
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思えば童話のような雰囲気やキャラクターモデルとその動きから,東欧のマリオネット劇やストップモーションアニメに近いものを感じていたようにも思う。「ICO」の発売前後のどちらか記憶があいまいだが,当時チェコやポーランドといった東欧のアニメーションのちょっとした流行があり,筆者も傑作選のDVDや単館系映画館で作品を楽しんでいたことは憶えている。いま考えると,そういった時期だったことや,絵物語のような説明書からの印象も強かったのかなと思う。
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「あの不思議なゲーム(=ICO)を作った上田さんの新作だ」と購入した「ワンダ」は,圧倒的なグラフィックスで描き出された世界を自由に歩き回れるところや,自身の何十倍もの大きさの巨像と一騎打ちするというゲーム性で,“一気に心を掴まれた作品”だった。巨像を退治する際の弱点を剣で突くモーションや,巨像が力を失い倒れ込む姿を見て,「この行いは本当に正しいのか」という複雑な思いを持ち,それでも次の巨像のもとを目指したことは忘れられない感覚だ。
そして「ワンダ」は,筆者のこじらせにまっすぐ刺さる作品でもあった。「失われた少女の魂を取り戻すため,古えの地で十数体の巨像を倒す」という,禁忌の儀式を執り行うかのような物語。そこから西洋の童話や寓話に似た部分とともに漂ってくる,日本の神話や民間伝承のような雰囲気が,神話や民俗学が好きだった筆者の心を震わせた。
また,自然に慣れ親しんで育った筆者にとって,地域によってガラリと変わる地形や植物,愛馬のアグロやフィールドのあちこちに生息する鳥やトカゲ,魚といった動物たちの描写は深い感銘を受けるものだった。巨像からは自然への畏怖,広大なフィールドからは自然の優しさが感じられる作品だった。
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思い出話は以上となるが,今回の企画で久しぶりにプレイした際,いままでにない新たな感覚があった。
それは,子を持つ親となってから初めて“親の視点”でプレイしたことで生まれたものだったと思う。「我が子もイコのように困難に立ち向かい,そしてワンダのように,何ものにも代えがたいもののため決断し行動するときがくるのか」と,(いま1歳半なので)まだまだ先の話ではあるが,2人の主人公と自分の子供の姿が重なり,こじらせていた時期の自分が信じられないくらい,素直に胸が熱くなったのだ。
多くの人が語る上田氏の作品の魅力を,ここでくどくど書くのは野暮というものだ。けれど,守り育てる者ができたなら,ぜひあらためて「ICO」と「ワンダ」に向き合ってみてほしいし,子供と一緒にプレイしてほしい。“かつてゲームで冒険をしていた”あのころとは違う感覚が生まれるはずだから。
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零 Zero 2001年12月13日発売
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2001年12月13日にテクモ(現コーエーテクモゲームス)から発売された「零 zero」は,多くのホラーゲームが西洋を舞台とするなか,日本を舞台に,日本の霊を題材にした純和風ホラーとして登場している。
とある地方を治めていた地主の屋敷と言われている廃墟で,行方不明になった兄を探すといった物語で,主人公は白い肌とミニスカートからスラリと伸びた足が美しい雛咲深紅(ひなさきみく)だ。
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「零 zero」は,先に登場した「バイオハザード」などと同じアクションゲームで,移動や屋敷内の捜索といった操作感も,これに近い。一方で,ゾンビの代わりに,心霊現象である“怨霊”たちが出現するのだが,これらは特殊な“射影機”で撮影することでダメージを与え撃退できた。
ただし,普通に撮影しただけでは大したダメージを与えられず,無駄にフィルムを消費することになる。高いダメージを与えるためには,怨霊をキャプチャーサークルに一定時間捉え,霊力のチャージを行ったり,ギリギリまで自分に引き付ける必要があった。
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このシステムは秀逸だった。プレイヤーは,「怖くて見たくないものを見続ける」ことになり,この状況にさせられることで,より深い恐怖心が引き出される。グロくて強い敵が出てくることの多い洋風ホラーとはまた異なった恐怖と面白さを味わわせてくれたのが「零 zero」だった。
物語の舞台となる廃屋敷内は基本的に暗闇なのだが,破れた障子や風,そしてろうそくや外から入り込む月明かりによって,何かが潜んでいるのではないかと思わせる怪しげな影が映し出される。
ゆらゆらと動く影は,プレイヤーの不安を強く掻き立て,放置された家具や飾られたままの着物から,何かが出てくるのではないかといった不安が広がってくる。
実際に霊が飛び出してくることもあるのだが,その頻度はほかのホラーゲームに比べると少ない。これもまた,ゲーム全編を通し,「何もいないのに何かが怖い」と思わせる仕組みとして機能している。
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一方,何かが出てくるのではないかと思わせておいて,「やっぱり何か出た!」という展開もある。屋敷には,浮遊霊などが多く存在しており,部屋に入ったり物陰を覗き込んだりすると,バッタリと鉢合わせしてしまうことがあるのだ。物陰に隠れるようにいる霊も多く,撮影することは射影機の強化にもつながるのだが,やはり怖いので出会いたくないのが本音である。
ゲーム中には,霊リストなるものが用意されており,撮影によってこれをコンプリートすることも,シリーズを通してプレイの目標になった。
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ストーリー的には兄を探す物語を進めるために,屋敷の持ち主であった氷室家にまつわる不吉な噂や伝承に関わる謎を解き明かしていくことになる。これは過去に行われた“惨劇ともいえる儀式”に関係するもので,恐ろしくそして,解き進むにつれ悲哀も感じるものになっている。
「縄裂きの儀式」と呼ばれる儀式は,首と四肢に掛けた縄を引き,その名の通り“裂く”もので,想像するまでもなく怖くて痛い。さらに儀式に使われる子供を選ぶための「鬼遊びの儀式」といったものも登場するするのだが,こちらは,内側に杭の付いた仮面で両目を潰された女性が,贄(いけにえ)となる子供たちと鬼ごっ子をするといった,これまた痛ましいものだった。
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こういった残虐さを伴う痛そうな感じは,本作と同じスタッフで開発していた「刻命館」シリーズに登場するトラップにも通じているように思えてならない。
今回,本稿の執筆にあたり自身が所有しているPS2本体とメモリーカード,ソフトにてプレイを行ったのだが,なぜかメモリーカード内にセーブデータが残っていなかった。データは消さないタイプの人間なので,何故だろうと思ったのだが,不明瞭な記憶をたどるうちに,ある事実に行き着いた。
ほかタイトルのセーブデータは,多くても数百KBなのだが,「零 zero」は1800KB以上とかなりのものだったのだ。それゆえ,別のゲームをプレイする際に,容量が足りずに削除したのであろう。
過去の惨劇がプレイヤーを追いつめる,というのはホラー系によくある話だが,過去のデータ削除が現在に影を落とすこともある……。などという経験を十数年後に体験することになるなど,当時の自分はカケラも思っていなかっただろう。
絶体絶命都市 2002年4月25日発売
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「絶体絶命都市」は,アイレムから2002年に登場したアクションアドベンチャーゲームだ。物語は「首都島」と呼ばれる架空の人工島が地震に襲われるシーンから始まる。「報都新聞」の記者である主人公は,地震当日にこの人工島にある「首都島支局」への転属を予定しており,そこへ向かう途中の電車内で被災してしまう。
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主人公は特殊能力を持っているわけでもないただの一般人で,そんな普通の人間が,本当に“絶体絶命”と思える状況でのサバイバルを強いられる。
それはもう,ゲーム開始直後に崖から半分落ちかけてる車に登らされたり,倒壊してる真っ只中のレストランの中を通らされたりと,ギリギリすぎる展開が目白押しだ。
物語を進めていると,主人公のほかにも取り残された生存者たちが存在することがわかる。中には,なぜ首都島がこんな状況に陥ってしまったのかという,物語の真相に関わる人物も登場し,終盤では銃器を所持した怪しい男たちに追いかけられるなど,ただの自然災害で片付けられる話ではないということが,次第に判明していく。
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本作の面白いところは,地震が起こるとコントローラが振動することだ。「何を当たり前のことを」と思うかもしれないが,主人公は大きな揺れがくると体勢を崩してダメージを受けてしまうため,その前触れとなる小さな揺れの時から「いつ来るんだ……」と身構えることになり,割と緊張感がある。
そして転ばないように恐る恐る警戒しながら進んだ結果,結局ちょっと揺れただけということも多く「来ないのかよ!!」とお約束のツッコミを入れることになる。
コントローラが振動すること自体はこの当時でも珍しいことではなかったが,コントローラの振動にいちいちここまで反応してしまうゲームというのはそこまで多くないだろう。
あと,忘れてはいけないのが“喉の乾き”システムだ。本作には体力ゲージのほかに喉の乾きを示すゲージが存在し,時間経過や,走ったりジャンプしたりといった激しい行動によって減少していく。ただ,給水所となる水道は結構な頻度で設置されているうえ,ペットボトルでかなりの量の水を持ち運べるので,難度ノーマル以下ならゲージが尽きることはそうそうない。このシステムを最大限楽しみたいなら難度はハードがおすすめだ。
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本シリーズ(というよりアイレム製のゲーム)の特徴には,「小ネタ」が多分に含まれるという点がある。それは,特に意味もなく調べられるオブジェクトや,物語の本筋には全く関係のないコレクションアイテム,ちょっとふざけて選んだらとんでもないことになる会話の選択肢までさまざまだ。
本作も例に漏れず小ネタが多く存在するのだが,その代表的なもののひとつが「コンパス」だ。
「コンパス」は常に画面右下に表示される,方角を示すアイテムだ。ゲーム開始時はごく普通のコンパスが表示されているのだが,ゲームを進めていると,マップのところどころでさまざまなコンパスを入手することができる。
コンパスの種類は全部で35種類あるのだが,「風見鶏」や「スワンボート」といった変わり種のコンパスに加え,「スペランカー」「ぐっすん」「激写ボーイ」「R-9」など,アイレムから発売されたゲーム作品のキャラクターたちのコンパスが数多く手に入るので,作品を知っていると本当に面白い。
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そしてなにより,アイレムゲーといえば会話の「選択肢」……と思っていたのだが,久しぶりにプレイしてみたら本作は意外とまともな選択肢が多く(それでも変な選択肢はあるにはある),絶体絶命都市2やその他のアイレムゲーほど多種多様な選択肢が登場していたわけではなかった。この時代のアイレムはひかえめなメーカーだったようだ。
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絶体絶命都市シリーズは,1・2まではサバイバルアクションの側面が強かったが,3からは専門家の協力のもと実際の災害マニュアルを収録し,地震や水害といった災害をテーマに,そこから脱出する人々を描くのが特徴となっている。1〜3のタイトルには,共通の登場人物がいるのも面白いポイントだ。
4は,2011年に1度開発が中止となり,2014年にグランゼーラが版権を取得したことによって開発が再開,紆余曲折を経て2018年に発売された。これまでのややシュールな雰囲気とは異なり,「被災地での生活」にフィーチャーし,シュミレーション要素が強くなった。今年(2020年)には絶体絶命都市4のPC版もリリースされるそうなので,まだプレイしたことがない人は遊んでみるといいだろう。
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