ジャニー喜多川氏の性加害問題、藤島社長の辞任を提言 特別チームが報告書

画像提供, Getty Images
日本ポップ界のスターを数多く生み出した故ジャニー喜多川氏が、創業したジャニーズ事務所の所属タレントに性加害を行っていたとされる問題で、事務所側が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」は29日、調査報告書を発表した。喜多川氏のめいの藤島ジュリー景子社長の辞任などを提言している。
「外部専門家による再発防止特別チーム」は調査報告書で、被害者に対する「金銭的賠償を含む救済措置を、ジャニーズ事務所は考えるべきである」とも提言している。

- BBC News Japan YouTubeチャンネルで関連動画を見る BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】

BBCは3月のドキュメンタリー「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(The Secret Scandal of J-Pop)で、喜多川氏から被害を受けたとする複数の人々の訴えを詳しく伝えた。
この報道をきっかけに、さらに複数の男性が虐待を受けたと名乗り出た。ジャニーズ事務所は5月、謝罪動画と関連の文書を自社サイトに掲載した。
しかし被害を訴える男性たちは、ジャニーズ事務所には償う責任があり、もっとやるべきことがあるとした。
喜多川氏はほぼ間違いなく、日本のエンターテインメント業界で最も影響力のある人物だった。同氏のジャニーズ事務所は何十年もの間、日本の「ボーイズバンド」市場をほぼ独占してきた。
同氏のキャリアには性的搾取の疑惑がつきまとっていた。その一部は民事裁判で、真実であることの証明があったと認められたものの、刑事事件として起訴されることはなかった。2019年に87歳で死去するまで、10代の少年たちをスカウトし、養成し続けた。
喜多川氏の葬儀は国家的な行事だった。当時の安倍晋三首相からも弔電が届いた。
同族経営がガバナンス不全の原因
「外部専門家による再発防止特別チーム」は、同族経営が「ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つ」だと指摘。
「ジャニー氏の性加害の事実を巡る対応についての取締役としての任務の懈怠(けたい)があることも踏まえ、ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があると言わざるを得ず、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべきと考える」としている。
再発防止特別チームは、元検事総長の林真琴氏、精神科医、臨床心理士で構成。5月にジャニーズ事務所によって任命され、喜多川氏をめぐる疑惑を独自に調査した。藤島社長だけでなく、被害を訴えた23人を含む計41人に聞き取りを行った。
その結果、「古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては、1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズ Jr.に対し(中略)性加害を長期間にわたり繰り返していた」ことが認められたという。
「性嗜好異常」
同チームはまた、「性加害行為の内容は、1970年代から2010年代にわたりジャニー氏から被害を受けた元ジャニーズ Jr.においても、驚くほどに似通っていることがヒアリングの結果から確認された。このように20歳頃から80歳代半ばまでの間、性加害が間断なく頻繁かつ常習的に繰り返された事実は、ジャニー氏に顕著な性嗜好異常(パラフィリア)が存在していたことを強く裏付けるものである」としている。
そして、「ジャニーズ Jr.の思春期少年に対して、長年にわたり広範に行われた性加害の根本原因は、ジャニー氏の個人的性癖としての性嗜好異常にほかならない」とした。
国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会も8月上旬、喜多川氏が数百人の少年を虐待していたとの調査報告を発表している。また、日本のエンターテインメント界には性的捕食者が処罰されることなく行動できる労働環境があると指摘した。
ジャニーズ事務所は29日、自社サイトに再発防止特別チームの調査報告書を掲載。「弊社は本チームの調査結果及び提言を踏まえて記者会見を実施する予定でおり、詳細につきましては別途関係者の皆様にお知らせする予定です」とした。
再発防止特別チームが提言した藤島社長の辞任についてはコメントしていない。
藤島氏は、喜多川氏の性加害を具体的には認識していなかったとしている。
しかし、特別チームは、藤島氏は「1998年3月の取締役就任前に既に出版されていた暴露本を認識していたほか、1999年10月に週刊文春で連載が開始されたジャニー氏による性加害の特集も認識していた」と指摘。
取締役に就任したころには、喜多川氏による性加害の疑惑について認識していたと認められるが、「性加害の事実について積極的な調査をするなどの対応はとらなかった」としている。