集英社ゲームズが発売し、墓場文庫が開発を手掛けるNintendo Switch、プレイステーション5、PC(Steam)向けミステリーアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』。2025年2月13日に発売してから少し経ち、エンディングまでたどり着いた人も増えてきたころかと思います。
本稿では、発売直前に公開したインタビューに続いて、集英社ゲームズの林真理氏と、墓場文庫に所属するグラフィッカー・デザイナーのハフハフ・おでーん氏をお相手に、発売後のいまだから話せるちょっとディープな部分を深堀りするインタビューをお届け。
前回紹介し切れなかった裏話や、本作を開発する上で影響を受けた作品群、さらに本編に登場する都市伝説やストーリー後半のネタバレを含む見どころ解説など、盛りだくさんでお送りします。
インタビュー後半は各話数に登場する都市伝説や重要キャラクターなどのネタバレにも触れる内容となっていますが、この箇所の前に警告文を掲載しているので、まだ十分にプレイしていない人も、そこまでは安心して読み進めてもらえたらうれしいです。
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ハフハフ・おでーん
『和階堂真の事件簿』シリーズや 『都市伝説解体センター』を開発する墓場文庫に所属するグラフィッカー・デザイナー。実験的開発ユニット”スカシウマラボ”の一員でもある。好きなものはカレー、麺、パン、プロレス、ダンスミュージック、アメコミ、稲川淳二、80’s。(写真左・文中はおでーん)
林真理(ハヤシ マコト)
集英社ゲームズ・シニアプロデューサー。過去にはディレクター・プロジェクトマネージャー・アートディレクター・3DCGデザイナーなども経験しており、ディライトワークスでインディーゲームのプロデュースを手掛けていたことも。(写真右・文中は林)
【発売直前インタビューもチェック!】
期待の大きさに応えるべく、開発期間と予算を増やしてクオリティーアップ
――『都市伝説解体センター』の開発には3年かかったとのことですが、当初からこれくらいかかると思っていましたか?
おでーん
思ってないです! まったく思ってなかったですね(苦笑)。当初は1年半とか2年くらいで完成するスケジュール感を想定していました。
林
ゲームを発表して以降、皆さんからの評判がとてもよかったので、当初の計画から「もっと話を膨らませよう、絵も増やそう」と方針転換を図り、会社と相談して予算も増やしています。開発の難航によって期間を延長したとかではないですね。
いちばん難航したのはやはりローカライズに伴う調整(発売直前インタビューに掲載)でしたが、それ以外の部分では計画と食い違って苦労するようなことはなく、目指すべきクオリティーを追求できたように思います。集英社ゲームズと墓場文庫さんでほぼ毎週のように、多いときは週2~週3の頻度でミーティングを開いて、二人三脚で試行錯誤したのも、おおむね計画通り開発が進んだ要因だったように思います。
おでーん
もともとの想定から単純にボリュームが増えました。
林
BitSummitなどで試遊出展したときの評判もよかったですし、応援の声も多数いただいていて、社内での期待も高くなったことで実現できた部分だったと思います。
――おでーんさんたちにとってはかなり充実した3年間でしたか?
おでーん
もう最高でしたよ、はい。それは即答です。プログラマーはローカライズのときに地獄を見ているので、同意してくれるかわかりませんけど。
林
プログラムの部分はもともとひとりで作ることを想定したものだったので、簡単に誰かに手伝ってもらうというのも難しくて、ご負担をお掛けしてしまいましたね。
おでーん
グラフィックに関してroom6さんにお手伝いしていただいていたり、『Indomitable Blade』というゲームを開発している南部休みさんという方がシナリオのアドバイザー的に関わってくださったり。いろいろな方にご協力いただいているのですが、墓場文庫でなんとかしなければならないところはどうしても出てきますよね。
林
墓場文庫自体を(メンバーを増やして)大きくしようとかは考えてないんでしょう?
おでーん
いやぁ、うちのチームについてきてくれる人が果たしているのかどうか……? 悪ノリが酷いんですよ。脱線に次ぐ脱線で関係のない話をし続けたりとか。とにかくみんなうるさいので。
林
関西の人たちなので、お笑いっぽいノリになったときは長くなる傾向がありますよね。みんなボケを被せ始めるので(笑)。
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ミステリー小説、海外ドラマ、アニメ、アドベンチャーゲーム……『都市伝説解体センター』を生んだインスピレーションの源
――『都市伝説解体センター』の物語の作りとしては、1話ごとに独立したエピソードとして完結はしつつ、縦軸として全体を貫く展開や、それに伴う伏線のようなものが散りばめられているような構成ですよね?
おでーん
そうですね。
――話数ごとにスッキリした結末を迎えつつも、「つぎの展開が気になる! 先が知りたい!」と感じられる、1話完結モノと連続するストーリーの両方のよさが味わえる手法だと思います。
林
当初の構想段階から、『都市伝説解体センター』はドラマのようにエピソードごとに連続するストーリーを考えていました。1話ごとの満足度はありつつ、1クールぶんを最後まで見届けると大きなエンディングを迎えるようなものが作れればと思っていたんです。特定のエピソードの中で大きなクリフハンガーがあって、主題歌が流れて、次回に続く! という演出もその構想にもとづいて作りました。
――墓場文庫が得意とするミステリーに都市伝説を絡めたストーリーも特徴ですが、開発する上で、もともとの知識以上に文献を調べたりしたのでしょうか?
おでーん
やはり“都市伝説解体センター”の調査において事件と都市伝説の関わりを紐解くにあたって「この都市伝説の特徴は何か?」みたいなところは改めて勉強し直しました。これまでに作られてきた都市伝説をテーマとした創作物と内容が酷似するのも問題なので、そのあたりも目を通しています。
林
僕もこれを機に、知らなかった都市伝説をいっぱい覚えました。おかげで本屋にいても、ネットを見ていても、都市伝説に関わるものが目に付くようになりましたね。あとはミステリー小説も同様で、この数年でかなり読みました。
――ミステリージャンルにおいてとくに影響を受けた作品はありますか?
おでーん
僕が横溝正史と江戸川乱歩が好きなので、そのテイストは濃くなりがちかもしれません。彼らの作品は明治、大正や昭和初期が舞台だったりするので、そちらに寄り過ぎず、ちゃんと現代を描いたミステリーにするというのは心掛けています(笑)。
その上で、『都市伝説解体センター』の制作においていちばん影響を受けているのは京極夏彦さんだと思います。とくに『百鬼夜行』シリーズですね。妖怪に見立てた殺人事件に対して「その妖怪とはなんだったのか?」を調査して解き明かすのですが、この妖怪が都市伝説に置き換わったものに近いと言えるかもしれません。
それから影響を受けた作品で言うと、少し前に「いま開発中のゲームはこの3つの作品に影響を受けました」というツイートをしたことがあるんですけど……。
――“#私が作っているインディーゲームとその背後にある3つのインスピレーション(※)”というハッシュタグで、クリエイターさんたちが開発しているインディーゲームの影響元を明らかにするという流れがありましたよね。
※X(Twitter)の投稿に画像が4枚まで添付できることを利用して、ハッシュタグとともに“自身が開発しているインディーゲーム+影響を受けた3つの作品”の画像を投稿する、2024年5月に流行したムーブメント。もともとは海外のインディーゲームクリエイターの間で生まれたものだったが、インディーゲーム専門VTuberの“しろこりGames”さんの呼びかけにより日本のクリエイターにも波及した。おでーん
そのときは海外ドラマの『X-ファイル』と、海外アニメの『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』、あと小島秀夫さんが手掛けたアドベンチャーゲーム『スナッチャー』を挙げたんです。
林
実際に噂されている都市伝説を題材に事件が起きていく感じは『X-ファイル』ですよね。
おでーん
毎回おもしろい上に、シーズンごとに話数をまたいで話がつながっているところなども、『X-ファイル』を始めとした海外ドラマから受けた影響が大きいと思います。『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』も海外の都市伝説を取り入れたアニメで、子ども向けながらすごく出来がいいんです。『スナッチャー』はビジュアル面、サスペンス表現の見せかたなどに影響を受けていますね。
――林さんがゲームについて墓場文庫さんと意見を交わす際の考えかたに、とくに影響を与えた作品などはありますか?
林
いろいろありますが、阿津川辰海さんというミステリー作家さんの小説をいくつか読んでいて、とくに『バーニング・ダンサー』は異能力を持つ人たちが登場するおはなしだったので、空想上の要素を取り入れた本格ミステリーという部分には影響を受けたかもしれません。
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ネタバレ注意! 第一話~第五話に登場する都市伝説&ストーリー後半の見どころをクリエイターみずから解説!
※ここからゲーム本編に登場する都市伝説や重要キャラクターなどのネタバレがあります! これらの要素を事前に知りたくない人は、『都市伝説解体センター』を終盤までプレイしてから読むことを推奨します。
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――第一話~第三話については、発売前のインタビューで、登場する都市伝説はボカシつつ見どころを紹介していただきました。それぞれで登場するのは“ベッドの下の男”、“降霊術(ブラッディ・メアリー)”、“異界”だったわけですが、後半の話数である第四話、第五話に登場する都市伝説と、そのポイントについてもお聞かせください。
おでーん
第四話の事件は、“コトリバコ”という呪いの箱の都市伝説がテーマです。さらにその根源を辿って、因習村へと行き着くことになります。まさに横溝正史みたいな世界観へと誘われていくというストーリーになっています。
林
昔ながらの日本のミステリーみたいな空気感がすごくいいエピソードになっています。
――東京がおもな舞台になっている本作としては珍しく、田舎の村まで遠出するようなシチュエーションなのでしょうか?
おでーん
なんですけど、じつは本当の“呪い”はその村とは別にあったんじゃないか? というところにいたり、現実に引き戻されていく……という、最後まで先が読めない展開になっているんじゃないかと思います。
林
第四話で僕が気に入っているのは、それまでずっとあざみがジャスミンにお世話になっているんですけど、今度はジャスミンのことをあざみが助ける展開があるんです。ふたりの関係が深くなっているのがわかるシーンになっています。
――BitSummitのインタビューでも言及していたところですね。
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“コトリバコ”という呪いの箱の都市伝説がテーマとなる第四話。
おでーん
第五話のテーマは“ドッペルゲンガー”です。ホラーというよりはサスペンス寄りの展開です。それが、その後の大きな謎へとつながっていきます。
林
第五話は、第一話からずっと根っこにあった話が大きく展開されていく、山場のエピソードなんです。ストーリーがガラッと新しい局面を迎える転換点ですね。ここから一気に結末まで畳み掛けていきます。
あざみと周囲の人たちとの関係性も大きく変わっていきます。各キャラクターに裏の顔、ふだん見えているのとは違う立場があるのがだいたい見えてきて、それに伴っていろいろなことが起きます。
――プレイヤーにとってはそれまでのエピソードで愛着が芽生えたキャラクターたちに対して、その印象が覆ったりするのでしょうか?
おでーん
終盤で、愛着を持ったキャラクターになにかがある、かも!? といったところです、はい(笑)。大きなクリフハンガーが待っています。
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第五話は、話が大きく展開されていく山場のエピソード。
――物語後半における登場人物に関してはいかがでしょう?
おでーん
後半から新たに登場となる人物の中に、物語全体に関わるキャラクターはいません。ただ、第一話から顔出ししていた黒ずくめの怪しげな男が物語全体に大きく関わってきます。彼は富入順蔵という名前で、後半のエピソードを通してその正体や目的が明らかになります。
林
第一話であざみとジャスミンが車で調査に向かうとき、この様子を見ていた人物がちらっと映ったと思うのですが、彼がその富入です。
――体験版でも顔見せしていたあの人物が終盤で重要になってくるんですね……!
おでーん
もうひとり、物語のカギを握るのが如月努という人物で、彼はすでに亡くなっているんですけど、“とある事件”で冤罪の濡れ衣を着せられて、自殺に追い込まれてしまうという、悲しい背景を持つキャラクターです。彼もまた、物語の根源に関わってきます。超重要人物です。
――さきほど“世界で有名な都市伝説”と、“日本では知られているけれど比較的マニアックな都市伝説”を半々で採用したとおっしゃっていましたが(発売直前インタビューに掲載)、どの話数がどちらに分類されるのでしょう?
林
わかりやすいところでは、第四話に登場する“コトリバコ”は日本のネットを中心に広まったものなので、後者です。第五話の“ドッペルゲンガー”はワールドワイドに知られているものですよね。
――第一話の“ベッドの下の男”や第二話の“事故物件”も日本で広まっている印象ですが……?
おでーん
“ベッドの下の男”はアメリカ発祥と言われていて、この都市伝説をテーマにしたサスペンスものは海外でもけっこう作られているんです。
――あ、そうなんですか。へぇ~!
林
第二話に登場する降霊術“ブラッディ・メアリー”も海外ですよね?
おでーん
第二話はもともとテーマを“事故物件”に絞って作っていたんですけど、「事故物件って都市伝説ではないよね?」ということに気付きまして(笑)。
――たしかに“怪しげな噂”とかじゃなくて実際にあるものですよね。
おでーん
それで都市伝説としては“降霊術”、それも海外の方に楽しんでもらえる題材として、鏡の中から女性の霊が姿を表す“ブラッディ・メアリー”を取り入れたんです。こちらも映画化などされている都市伝説です。
第三話のテーマ“異界”はどちらかというと日本寄りです。とくに近年で有名な異界ものに“きさらぎ駅(※)”もありますからね。
※きさらぎ駅……電車に乗っているとこの世のものではない駅にたどり着いてしまうという都市伝説。インターネット掲示板・2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のオカルト超常現象板が発祥で、2022年にはこれを題材にした映画も公開されている。
――きさらぎ駅のような“公共交通機関を使っていたら異界に迷い込む”というのはけっこう日本独特なのでしょうか?
おでーん
海外でもなきにしもあらずなのですが、電車や、あとはエレベーターとか、移動手段を使っている中で知らない世界に迷い込むのは、けっこう“日本っぽい”話なのかなという印象です。民俗学にも“迷い家”という、突然目の前に現れた家に招かれるんだけど、もう二度と同じ家にはたどり着けないみたいな話があったりしますし。中国などにも似たような話はあるようなんですけどね。
――傾向として、アジアを中心に古くから広まっている発想という面がありそうですね。
おでーん
“妖精に出会って、知らない世界に連れて行かれる”みたいな話はスコットランドなどにもあるんですけど、“意図しないまま知らない世界に迷い込む”という話についてはそういうふうに言えるかもしれません。
――ありがとうございます。ここまで読んでいるのは『都市伝説解体センター』をガッツリ遊んだ読者さんがほとんどだと思うので、本作をクリアーした人に向けてメッセージをお願いできますか?
林
『都市伝説解体センター』をクリアーした方には、ぜひ感想をSNSなどに投稿していただけたらうれしいです。本作は発売前からファンアートを書いてくださる方も多くて、本当に感謝しています。ミステリーなので、これからプレイする人にはできるだけネタバレしないでほしいとは思いつつ、集英社ゲームズも墓場文庫もわりとよくチェックしていますので(笑)、愛を持ってプレイしてくださったことがわかるのは励みになります。
おでーん
まったく同じ気持ちです、はい。墓場文庫も、一丸となって3年間手塩に掛けて制作しましたので、感想をいただけると今後のゲーム制作の励みになります。『都市伝説解体センター』を今後ともよろしくお願いします。
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“ノストラダムスの大予言”世代が抱える、“都市伝説”や“噂”をめぐる現状への複雑な想い
――3年間、都市伝説を扱ったゲームを作り続けていると、「人はなぜ都市伝説に惹かれるのか?」みたいなところが見えてきたりするのでしょうか?
おでーん
けっきょく、都市伝説って“いい加減なもの”だからだと思うんですよ。怪しい噂を広めたとしても、責任を取らなくていいじゃないですか。
たぶん“妖怪”が広まったのも同じ理由だと思うんです。たとえば化け猫って“油を舐める”って言われているんですけど、なんでそう言われるようになったか考えたとき、家事をしている嫁さんがお姑さんに「油の減り早くない?」って言われて「きっと化け猫が舐めたんですよ」とか返してたんじゃないかなって(笑)。
――言ったら言いっ放しでも、誰にも“害がない”と思える範疇の噂、ということですよね。
おでーん
それが寄り集まってヘドロみたいになっているのがいまのSNSだと思うんです。ひとつひとつは誰にも大きな影響がなさそうに思えたとしても、不特定多数のいい加減さ、無責任さが合わさることで苦しむ人は間違いなくいますよね。そういうものに対する僕たちなりのアンサーが『都市伝説解体センター』だったりします。
林
都市伝説って「原因はこれでした」みたいな答えが絶対に出ないから都市伝説になっているんですよ。原因が明らかになったらそれはもう都市伝説ではないですから。ネス湖のネッシーも、「いた」とか「いない」とか確定した瞬間に単なる“事実”になっちゃうんですよね。わからないから、答えが出ないからその行間を楽しむのが都市伝説なんだと思います。
おでーん
僕たちって“ノストラダムスの大予言(※)”世代じゃないですか。自分たちの人生が変わってしまうのかもしれないとちょっとだけ思ったりしながら生きていたことがあったわけですよ。いまでもフリーメイソンとか、洒落にならないような陰謀論とか、「そんな馬鹿な」と思いつつも、頭の片隅でちょっとだけ不安を感じて、行動が左右されたり。「ロスチャイルド家の仕業なんや」とか言ってみたり。
※ノストラダムスの大予言……1999年に“恐怖の大王”の襲来により人類が滅亡するという陰謀論。ルネサンス期フランスの医師・占星術師であるミシェル・ノストラダムス氏が執筆した『予言集』を独自解釈したとある著書を発端に大流行した。真実であったか否かは皆さんご存知の通り。林
物事をぼかすための、ある種の“逃げ”という部分はあると思うんです。
――「そう言っておけば、ちゃんと考えずに済む」という気安さはよくも悪くもありそうです。仲間内で軽口程度に交わされるだけなら楽しい妄想ですが、いまはインターネットによってそれがシリアスな話題と接続されたり、数の暴力が働いて、誰かの人生を狂わせている局面はあるんだろうなと。
おでーん
僕やプログラマーをしているMOCHIKINさんは、そういう世代なこともあってか、いまの都市伝説とか、広義の“噂”を取り巻く状況にいろいろと思うところがあります。その想いを煮詰めたものが『都市伝説解体センター』には注ぎ込まれているんです。
林
ある種の“裏テーマ”ですよね。「いまのSNSってどうなの?」とか。昔は“美しい嘘”と言っていられた都市伝説に対して、いまSNSは汚い暴言をともなう言葉で溢れていて。それはゲーム内でも対比として描写されています。
おでーん
そういうものに対する日々の苛立ちから、「なんとか復讐してやりたい」という気持ちが……我々にゲーム開発をさせているのかも、しれませんね? みたいな。
――(笑)。
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おでーん
やっぱり僕らは「エンタメ作品を作りたい」という想いが根底にありますので、「社会に訴えたい!」みたいなゲームにはなっていないと思います。たくさんの人に楽しんでもらえるエンタメにするために、最大限やり切ったと言える3年間でした。
林
ミステリーって謎だったものが、受け手の想像を超えた結末を迎えるところに気持ちよさがありますよね。『都市伝説解体センター』にもその気持ちよさはあるのですが、一方の都市伝説は謎が謎のまま存在し続けるものなんですよね。“美しい嘘”と“汚い言葉”、“謎が解けるミステリー”と“謎のままあり続ける都市伝説”、相反するものを捻ってつなぎ合わせているところにこのゲームのおもしろさはあると思うんです。
――現実に対するさまざまな想いをつなぎ合わせたものを、エンタメとして楽しみながら解きほぐす……。それが、“解体”という言葉に込められていると言ってもよさそうですよね。
林
おぉ、いいまとめですね(笑)。
おでーん
それでいきましょう!(笑)