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AJAといえば、かつては小型コンバーター製品で人気のブランドだったが、Blackmagic Designと製品が競合することも多かった。最近はそれよりもカラーグレーディングやIP伝送系の製品に力を入れており、差別化を図ることに成功している。
余談だが、AJAの本社は米国カリフォルニア州のグラスバレーにある。グラスバレーと言えば大手スイッチャーメーカーGlassValleyの発祥の地で、かつては西部劇の時代に金鉱山で発展した街である。現在GlassValleyの本社はカナダのモントリオールに移転している。現在は製造拠点が残っているのみだが、AJAはグラスバレーの地元企業として頑張っている。
昨年のInter BEE 2024では、AJAのIPシステムソリューションをいくつか拝見することができた。現在AJAが行っているのは、従来のボックスタイプの製品の集約化である。
放送局などの大型設備では、基幹システム機材はラックマウントされるのが前提となる。これまでラックマウント製品は、要するにラックとしての横幅が決まっており、縦はいわゆる「U」単位でサイズが決まっているにすぎなかったが、このラックマウントシャシーおよびモジュールの仕様を共通化しようという動きが出てきた。
スイッチャーメーカーの老舗Ross Video社が開発した「open Gear」は、こうしたラックマウント型ビデオ・オーディオカード向けプラットフォームだ。オープン規格として仕様が公開されていることから、徐々にこの仕様に合わせたカード類が各メーカーから出始めている。AJAは多くの製品を、open Gear化しようとしている。
open Gear規格のカードは、共通の設定UI「DashBoard」で制御できるため、1のラックに複数の異なるカードを入れても、制御は1つのUIで可能だ。またDashBoardではカードの設定を吸い上げることができるため、不意なカードの交換でも、すぐに設定を書き戻すことができる。
「OG-ColorBox」は、カラーマネジメントを行う為のボックス製品として人気が高かった「ColorBox」を、open Gear対応のカード型にした製品だ。2024年のIBCで発表されたが、Inter BEE 2024では現物を見る事ができた。
もともとColorBoxは、撮影現場で色域変換してモニターしたり、カラー補正やLUTを作る、いわゆるオンセットグレーディングのための装置である。一方でカード型のOG-ColorBoxは、放送などのライブプロダクション向けに使用する製品となっている。リアルタイムのカラーコレクションや、Logの処理、SDRとHDRへのリアルタイム変換などを行う。
この背景には、ライブイベントでの中継・配信においても、シネマ用の機材が使われるようになってきたことが挙げられる。特に音楽ライブなどは、以前からシネマ調の表現が求められる傾向が強い。ライブイベントでは同時に多くのカメラが使用されるが、2Uサイズのopen Gearのラックに最大10台までのOG-ColorBoxがインストールできる。2Uで10台のシネマカメラがリアルタイムグレーディングできるということになる。
このOG-ColorBoxで実現したライブ用の機能は、ColorBoxに対しても無償のファームアップデートで対応する。
open Gear対応製品新製品としてもう一つ展示されていたのが、「OG-C10DA」だ。1 IN 9 OUTの、アナログの映像信号分配器である。30年前までは当たり前に存在した機材だが、SDIが主力になるにつれて徐々にラックマウント製品は減少し、もっと小規模な利用を想定したボックス製品が中心となっていった。
とはいえいくらデジタルになったからといっても、システムを組むとなると、まだまだアナログのBB(ブラックバースト)で同期信号を受ける機材も少なくない。特にカメラがそうだ。遠隔地同士での同期なら、PTPを使うか、1フレーム遅延するのを覚悟して引き込み同期したほうが早いが、ケーブルが届く範囲のイベントであれば、アナログ同期はまだまだ有効である。
こうしたときに困るのが、意外に大規模拡張できて集約密度が高いアナログVDA機材がないという問題である。「OG-C10DA」はopen Gearラックに入れられるので、他のカード類とまとめて設置できるのがポイントだ。アナログ映像以外にも、AES3-id(デジタル音声信号)やLTCも分配できる。価格も1枚9万4820円と、9分配もできるわりには結構安いのも魅力である。10枚入れても100万円ぐらいだ。この場合は1 IN 81 OUTの分配器になるはずである。
こうした製品が求められる背景には、ライブイベントの撮影・配信が次第に大規模になるにつれ、いつまでも「仮組み」では済まなくなったという現象がある。システム関係の機材を分かりやすく集約化し、ラックごと持っていくみたいな方法論になってきたからだ。単品のボックス製品をいくつもつないで、というやり方では、もはや対応できなくなったという事である。
放送だけにとどまらずネット配信の台頭により、ライブイベントをリアルタイムに届けることのパイが大きくなってきているという現状に対応する製品と言えそうだ。
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