「『ピンで立つ』ことができていれば、どんな困難な状況も必ず乗り越えられる」
序文に登場するこの一文が、本書『人生を楽しみたければピンで立て!』(藤巻幸大、阿久津康宏著、あさ出版)の内容を言い表しています。つまりそれは、誰の真似をするのでもなく、自分が唯一無二のオリジナルであり続けるということ。成功するためには、自分の頭で考え、自分の志を貫くことが大切だというわけです。
さまざまなメディアでおなじみ藤巻氏の考え方を、ビジネスパートナーの阿久津氏が客観的に整理し、「誰もができる形」に整えた書籍。あらゆる角度から、人生をリスタートさせるためのヒントを提示しています。第1章「夢なき者に理想なし」から、いくつかの要点をピックアップしてみましょう。
会社の肩書きを一切捨てよう。何も残らない自分に気づくことがスタートだ(23ページより)
すぐに会社の名前を持ち出す人は、「自分は会社を取ったら何も残らない人間です」とアピールしているようなもの。そして、日本の社会はやたらと「肩書き」を重視するが、そんなものはなんの役にも立たないそうです。
大切なのは、肩書きではなく自分自身の個性を語ること。それが、ピンで立つということだからです。そして藤巻氏はここで、自分ができることを紙に書き出してみることを提案しています。「ピンで立つ努力を続けて、5つ以上、自分の個性を語れる人間になってほしい」という思いがあるからです。
会社は社員の幸福を考えてくれない会社のために働くな
自分のために会社と「契約」しよう
(27ページより)
会社が利益を追求するために存在している以上、人を雇う際にも「利益を追求するために必要な人手を確保しているにすぎない。だから、「会社のために働く」という発想はもつべきでないといいます。
大切なのは、「働くことで何を成し遂げたいのか」という「志」をもつこと。「志」をもたなければ、会社という脆弱なシステムのなかで、ピンで立って働くことなどできないそうです。逆にいえば、ピンで立っている人には「雇われている」という感覚がないのだとか。
コンプレックスはあっていいあるほうが人にやさしくなれる
コンプレックスを原動力にしろ
(31ページより)
いまでこそ成功者としてのイメージが強い藤巻氏も、小学生時代から伊勢丹に勤務していたころまで、コンプレックスの塊だったそうです。しかし心の底で「いつか見返してやる」と思っていたからこそ、ビジネスで成功できたのだとも感じているのだとか。
そしてそんな経緯をたどってきたからこそ、人生につまずいたことのある人は、自分はラッキーなヤツだと思った方がいい断言しています。理由は、痛みを経験している人間こそ強く、不遇な経験をしていればいるほど、人に対してやさしくなれるから。
居心地のいいラクな池に群れるヤツにはなるなラクに慣れると池から出られなくなる
(45ページより)
藤巻氏の持論は「池→湖→海」だそうです。ピンで立つためには池で群れているのではなく、池から湖、さらに海を目指して行動するべきだということ。そして、夢を持ち、ビジネスのフィールドを常に広げていく努力のできる人こそが「ビジネスマン」だといいます。
さらに大切なのは、会社の枠に縛られることなく人脈を増やすこと。いい人脈があり、いい人たちと付き合っていると、時代感覚が養えるからだそうです。
ルールは破るためにあるルールを変えられるのは君の本気だけだ
(48ページより)
会社には、コンプライアンスを中心としたさまざまな決まりごと、すなわち「ルール」があります。が、藤巻氏は「僕は、ルールは絶対に守らなければいけないものだとは思わない」といいます。むしろ、もしもルールがあるせいでチャンスを逃してしまいそうなら、思い切ってルールを変えてしまえばいいとも。
それは会社や上司に批判的な態度をとるということですから、すぐに成し遂げることは困難。しかし、誰だって最初から成功できるわけがない。変えたいルールがあれば、批判的でありつつも常に建設的な態度を持ち、何度もしつこく食い下がる。それくらいの熱意がなければ、前例のないことなんてできるはずがないといいます。
藤巻氏の主張が紹介されたあと、本書では阿久津氏が「藤巻流」の考え方を冷静に分析しています。つまり熱い主張と、それを見つめる視点がバランスよく並んでいるのです。だからこそ、学べることは少なくないと思います。
(印南敦史)