何故「女だけの街があればいいのに」に怒り狂うのか

「女だけの街があったらいいのにな」そう呟いた女性のツイートが、今執拗にバッシングされている。

「女性専用の街」があったら夜の9時でも買い物に行ける。深夜早朝勤務もできる。なにより、ボーッとしながら散歩ができる。気を引き締めなくていいんだ、後ろ気にしなくていいんだよ、足音、自転車の車輪の音、バイクの音に振り返らなくていいんだよ。幸せすぎて涙出るね…。RT

— 紅茶walk (@ri12my) 2018年1月17日

 このツイートへの反応に関しては、各自リプライ欄を覗いてほしい。（あまりにもひどすぎて引用したくない）

何故このツイートで一部の男性たちはここまで怒り狂うのだろうか。

「あ～～性犯罪者うっぜぇ！男なんてほぼ全員性犯罪者だしもう男全員どっかの島で住んでてほしいｗｗ」

といった内容なら男性から反感を買うのもわかる。ただ件のツイートは、「日頃受け続けている被害から逃げるために、加害者側になりがちな性別の人間がいない街で暮らしたい」という、ささやかな願いではないか。

私は男性が「表現規制だのうるさいクソフェミムカつくから男だけの島を作って暮らしたい」と言っていても、グッドアイデアだね、としか思わない。（実際のミソジニスト男性は「クソフェミ死ね」となるのが大概だが）

考えても考えても、何故叩かれているのか理解できないので、いくつか理由と思しきものを考えてみようと思う。

炎上したきっかけ

何故こんな素朴なつぶやきが炎上したのかというと、以下のツイートがきっかけのようだ。

アパルトヘイトってご存知でしょうか。 https://t.co/QyrIJSnSy5

— 白饅頭（光属性） (@terrakei07) 2018年1月20日

 フォロワー2万人超のアカウントのツイート。「アパルトヘイトってご存知でしょうか。」いやこっちが言いたいわ！(笑)

「女だけの街に住めたらいいのに」は、「犯罪を犯す男どもをどこかに隔離できればいいのに」という意味ではない。被害が怖い人たちで集まって逃げられる街があればいいのに、という意味だ。「怖いものを隔離すること」と「怖いものから避難すること」の区別もつかない人たちによって炎上させられているようである。

主張のねつ造をしてまでたたく人たち

「女だけの街を作れば理想郷になる」と主張してる人については、女だけの職場に勤めたことがないんだろうな、という感想しかない。

— 深爪@新刊「深爪流」好評発売中 (@fukazume_taro) 2018年1月22日

 「女だけの街を作れば理想郷になる」なんて誰も言ってない。「女だけの街がもしあればむやみに警戒せずに出歩けるのにな」である。ただ警戒をせずに夜道をのんびり歩いてみたいだけなのだ、性犯罪が起きても被害者がバッシングされることの多いこの日本で、誰がその願いを責められる？

それに女だけの職場が酷い環境であると暗に言いたいのだろうが、それも酷い女性蔑視だ。男性だらけの職場でもお互いに蹴落とし合ったり、たまたま女性が昇進すれば嫌がらせを行ったりという話は往々にして聞く。性別の問題ではなく、「陰湿な人間」の問題だ。

一部女性による「女だけの町を作るべきよ！」という声が上がり、それに賛否両論あるみたいですが、三家本礼としてはアマゾネスタウンと名付けられた要塞的な町を期待したい。侵入した男はトラップの餌食となるか、女剣闘士との死闘を強いられます。

— 三家本礼 (@reimikamoto) 2018年1月20日

「女だけの町を作るべきよ！」なんて誰1人言っていない。「女だけの街がもしあればむやみに警戒せずに出歩けるのにな」である。これもまた、女性の発言を自分が叩きやすいように加工しているだけであり、悪質な捏造だ。

ちなみにこれも誤解がありそうだが、「女だけの街」と言っても全日本の女を一人残らず集めて強大なコミュニティを築き上げたいという意味ではなく、性被害に怯える人たちだけで、逃げたい人だけが逃げられる場所があれば…程度のぼやきだろう。

ここまで女性の発言を捻じ曲げてまで「女性だけの街」にヒステリックになる理由は何なのだろうか。

「女性が男性を排除しようとしている」という誤解

『女だけの街』という話は「犯罪被害などにあって、男性の姿を見るとフラッシュバックしてしまう、そういう女性のためのシェルターがあってほしい」という読み方と、「そもそも男性は危険なのだからいなくてすめばその方がいいのだ。それが当然の在り方だ」という2つの解釈があると思うんですよね。

— cdb (@C4Dbeginner) 2018年1月23日

 何故ここまで「女だけの街」を批判している男性が相次いでいるのか。そもそもツイートの内容を読み違えているのではないかという指摘である。

このツイートを読んでそれなりに納得がいった。批判する男性たちが極端に女性の発言を捻じ曲げているように見えるのも、単にあのツイートを読んで後者だと思い込んでいるからだろう。

しかし、ことの発端となったツイートを読んで後者の読み取り方をする人がそんなに数多くいることが信じられない。そんな読み方をする人間がこれだけ多いのであればそれはもう義務教育の敗北ではないか。

繰り返すが、今回の「女だけの街がほしい」というのは、性犯罪に怯えて自衛自衛に追われる日々に疲れたから、女だけの街があればせめて少しでも安心できるのにな。という意味でしかない。

積極的に男性を排除し女性だけの理想郷を作るべきだ！その実現に向けて動き出そう！など、誰も言っていない。

男性全員を犯罪者扱いするな、という主張

「”女だけの街がほしい”という発想は男性すべてを性犯罪者扱いしており、性差別に加担しているだけだ！」という意見もある。キレている男性の意見を見ると大方がこんな主張のようだ。

 「男性すべてが性犯罪者というわけではない」その主張には同意するまでもなく当たり前のことだ。そもそも男性すべてを性犯罪者扱いなどしていない。

ただ見分けがつかないのだ。毒のあるフグと毒のないフグは一般人には見分けられない為にフグの肝臓の販売は一律して禁止されているだろう。それは無害な毒をもつフグに対する差別か？いや違う。

見分けがつかないからこそ、被害に遭わないためにはすべてのフグに毒があるかもしれないと仮定しないと自衛すらままならないのである。

ちなみにこの話をすると「じゃあフグの知識を身につければいいのでは？」という男性がいるが、全くの見当違いだ。私の実体験、身の回りの友だちの性被害、日本中のいくつもの性被害データを集めても「性加害を行う男性の身体的特徴」など算出できはしない。

見分けられるわけがない。彼らは人畜無害な優しい男性の顔をして私たちに加害してくる。私も駅から家までの帰り道に知らない男性の足音がやまず、でも振り返ったら失礼かも、走ったら逆上させるかも、と思いながら気づかないふりをしていたらアパートの階段を登って玄関の前まで着いてこられたことがあった。

その男性は175㎝ほどの長身、細身の20代半ば、顔は怖くて一瞬しか見れなかったが一般的にはイケメンと評価されるだろうなと思うほどの顔面だった。ちなみにイケメンだったら良いんだろうという男性がいるがまさかそんなわけがない。その時は急遽引き返して逃げられたが、本当に怖かったし今でも毎日後ろを気にしてしまう。

毒を持つフグよりも遥かに見分けづらい性犯罪者から身を護るために毎日自衛し続けて疲れた。だから「あ～いっそ女だけの街になればこんなに気を張り詰めなくて済むのに。」と言いたいだけ。それの何が悪いんだろう。

彼らは本当に知らないんだと思う。性加害の実態を。

頭悪スギィ！！
女子校の周りに性犯罪者が折り重なってるとでも思ってんのかよ笑 pic.twitter.com/Z8cv1Q4lKG

— メルシィー@ぬんじんの下僕 (@merc1539) 2018年1月21日

 私はこのツイートを見るまで、女子校の周りに性犯罪者が集中しやすいのは日本全土の常識だと思っていた。私は共学出身だが、女子校へ行った幼馴染からよく女子校に現れる変質者の話を聞いた。体育の時間には必ず誰かがフェンスの外でカメラを持って構えているとかね。

大学では女子寮に中年の男性が裸で侵入したという話を耳にした。しかし、ニュースにすらならなかった。女性だけが集まる場所に現れる変質者は「よくあること」だから。

だからショックだった。これほどまでに「よくあること」なのに、ある男性からしてみれば「頭悪すぎ」と言いのけてしまえるほど不可解なことなんだ。知らないんだ。本当に悪気がなく「性犯罪ぐらいで」と言っているんだ…。

ここまでくると、「女性専用の街があればいいな」と思う人とそれを許せない人たちでは見えている世界が完全に違うとしか思えない。

怒っている人たちは知らないのだろう。女性が仕事帰り、学校帰りに道を歩くのがどれほど危険か。これほど日常的に男性からの被害がありふれていることを知らないから、「女だけの街に住みたい」という女性の疲れ果てた一言にここまで憤りを露わにできるのだ。

よく見る意見への反論

「黒人が怖いから白人だけの街を作ろうと言ったらどう思うのか」

まず男性を黒人に例えるのが間違っている。差別者が怖いから被差別者だけでどこかに逃げたい、と言っているに過ぎない。本当にこの通りだと思ったツイートがあったので引用させていただく。

（この話、男女で揉めてるようだからもうやめよと思ったが一つだけ。「女だけの街は、黒人が怖いから白人だけの街を作ろうと言ってるようなもので差別」という批判を見たけど、話が逆だよ。喩えるなら「白人に差別されたくないから黒人だけの街を作ろう」だよ。ちっとは考えてからもの言えやと思った。

— 大野左紀子 (@anatatachi_ohno) 2018年1月21日

この通り、白人=差別者、黒人=被差別者という構造を用いて例えるなら、男性=白人、女性=黒人だろう。日本はジェンダーギャップ指数が114位に転落するほど男尊女卑の構造が強い。

「力仕事のために男を呼ぶなよ？」

呼んだら意味がないだろう。むしろ何故呼んでもらえると思ったのか。もし特定の作業でだけ男性を街に入れることを許してしまうと「女だけの街」に合法的に入るためだけにその職を志す人もいるんだろうなとまで想像が及んでしまった。幼児に性的暴行を加えるために幼児保育士になった男性もいたくらいだし。

そもそも妄想話であって実際の運用のことなんて誰も考えていない。もしあなたが上司から理不尽な目に合わされたとして、Twitterに「あー上司がいなければもっと仕事しやすいのにな～」とつぶやいた時、「それは上司差別では？」「じゃあミスの尻拭いは自分でやれよ」「良い上司もいますよ。」「上司がイヤなら仕事を辞めろ、生活できなくなっても知らんけど」などと次々に言われたらどう思うか？

まごうことなきクソリプだし、もしただの愚痴にこんな返答をしてしまったら確実に友達がいなくなるから気を付けた方がいい。

「女だけの街でもレズビアンにレイプされたらどうするんだ。女だけなら強盗も殺害事件も起きないと思ってるのか！」

少なくとも力の差が極端にある人間に一方的に性的暴行を加えられ、被害者の自己責任だの服装がどうだの出歩く時間がどうだの見知らぬ人間にセカンドレイプされることはほぼなくなるだろう。

強盗や殺害事件については、完全になくなるとは思っていないが、その前に犯罪者の男女比を調べてほしい。ことさら性犯罪に関しては男→女への加害が圧倒的であり、その心配をしなくて済むというだけでどれだけ過ごしやすくなるのかは想像に難くない。

女だけの街について

色々な問題点を差し引いても、女だけの街、いいな、と思う。夜の0時を回っても「アイス食べにいきたいな」と思えばキャミソールに短パンのままコンビニに行ける。今の社会でそれをして、もし性犯罪にでも遭おうものなら「そんな時間に出歩いた女が悪い」「そんな服装をしていたからだ」の大合唱だ。

「女性だけの街に住んで夜も安心して歩きたい」という書き込みを見て、世の男たちは何も思わないのか？私はいたたまれない気持ちになったよ。酔っぱらって駅前で一晩過ごしたり、深夜に一人でコンビニ行ったり平気でしてきたからね。それが男の特権だという意識は今まで微塵もなかった。

— 吟味するスタンス (@outdated22) 2018年1月22日

こういう、女性の被害に気が付いて理解してくれる男性が多くいるなら、もしも被害に遭ってもひどいセカンドレイプを受けないような社会なら、「女だけの街が欲しい」という女性などどこにもいなかっただろう。

私たちが本当にほしいものは何なのか

「女だけの街が欲しい」というただの呟きがここまで炎上してしまったが、それを欲する女性が本当に求めているものは何か。

性犯罪におびえず安心して暮らせる社会

それだけである。