寄生虫のように体内に侵入し、徐々に内部から食い散らかして、死に至らしめる。進行する円高・株安が日本企業を蝕んでいる。耐え切れなくなったパナソニックは〝聖域〟と言われた本社社員のリストラに手をつけ、一度は政府に助けてもらったエルピーダが結局は破綻に追い込まれた。
経営者たちは焦りを募らせている。
「超円高が続くことは非常に厳しい」
「この超円高の状態が続けば日本の製造業は崩壊する」
6月4日、日本自動車工業会会長として記者会見に応じた豊田章男・トヨタ自動車社長はこう危機感を露にした。
しかし、その焦りをよそに、この日マーケットでは衝撃的な日本売りが発生していた。東京株式市場で日本株が売り浴びせられ、日経平均が年初来安値、TOPIXがバブル後最安値を更新。中でも日本を代表する製造業に売りが集中し、ソニー株は32年ぶりに1000円を割り込み、パナソニック株も32年ぶりの安値水準に落ちた。
せっかくの技術革新も、丹精こめて作った新商品も、円高・株安によって利益が吹き飛ばされる。もうお手上げ---。そんな声が聞こえてきそうな惨状だが、市場は容赦ない。
「6月危機がやってくる。日本経済を壊滅させる超円高・株安だ」
マーケットではそんなシナリオが語られ始めた。
というのも、実は欧州だけでなく、アメリカ、日本などを見渡すと、6月に危機の火種となるイベントが目白押しで、一つでも〝発火〟すればそれが即、さらなる日本売りを引き起こしかねないのだ。
6月4日の内閣改造後に記者会見した安住淳・財務相も、「この6月は世界経済にとってそれぞれの国の政治の決断が非常に重要な局面を迎える」と〝6月危機〟に言及している。
前章で見たように、国債暴落の危機も眼前に迫っている。超円安・株高、さらには国家破綻の危機。
参考になるのが欧州の現状だろう。6月危機の真相に立ち入る前に、まずは国家破綻寸前の国がいまどんな惨状に陥っているのかを見たい。これは日本の近未来図だ。
子供の治療費が出ない
ギリシャの不況の凄まじさを現地からレポートするのは、アテネ在住のジャーナリスト・有馬めぐむ氏である。