最近アメリカのメディア業界では、伝統的なメディア企業から離脱し、独立したり新興メディアに移ったりする著名ジャーナリストが増えているという。
ガーディアンのスクープ記者が移籍した先
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その代表的な存在が、ネイト・シルバーだ。いま大流行のデータサイエンティストの第一人者であり、2012年の大統領選では全米50州の投票結果をビッグデータ分析によって的中したことで話題騒然となった。シカゴ大学で経済学を学び、昔からオンラインポーカーで大金を稼いだりしていたというから根っからの「データマニア」なのだろう。
ニューヨークタイムズのサイト内でfivethirtyeight.comというブログを開設し、ここで世論調査や経済データなどの解析をもとに大統領選の予測も行うようになった。
そのネイト・シルバーが昨年、ニューヨークタイムズを離れてスポーツのテレビチャンネル最大手ESPNに移籍した。ESPNのスタッフになるということではなく、fivethirtyeight.comをESPN傘下のメディアとして独立運営していくという方向らしい。つまりはESPNに出資してもらって独立するというような形になっているようだ。
もうひとつの注目すべき動きとしては、英ガーディアンのグレン・グリーンワールドの移籍だ。彼はエドワード・スノーデン報道で一躍有名になったジャーナリストだが、eBay創業者のピエール・オミディアが出資する新しいメディアに参画するため、ガーディアンを離れた。
メディアブランドよりジャーナリスト個人のブランドへ
こういう動きが出てきている背景には、2つの要因があると私は考えている。
ひとつは、ジャーナリスト(ネイト・シルバーもデータジャーナリストとして捉えれば)の個人ブランド化が進んでいるということ。紙面というパッケージで読まれることが少なくなり、ソーシャルメディアやキュレーションメディアからのディープリンクで記事が読まれる「マイクロ化」が進むと、パッケージを持っているメディア企業よりも、記事単体を書いている記者個人のブランドの方が重要になってくる。・・・・・・この続きは「現代ビジネスブレイブイノベーションマガジン」vol067(2014年3月7日配信)に収録しています。