ディズニー新作「ベイマックス」制作の舞台裏--新技術で挑んだ「アナ雪」超える光の表現

Teena Hammond (TechRepublic) 翻訳校正: 川村インターナショナル2014年12月19日 07時30分

 映画「ベイマックス」では、抱きしめたくなるようなロボットがスクリーン上で世界中の観客を魅了しているが、真の主人公はベイマックスではない。このDisney Animationの大ヒット作の制作に活用された最先端テクノロジを開発したアーティストとエンジニアのチームだ。

 「ベイマックス」の制作には、そのDisneyチームが開発した光レンダリングソフトウェア「Hyperion」が初めて使用された。Walt Disney Animation Studiosの最高技術責任者(CTO)であるAndy Hendrickson氏は、Hyperionの開発には2年と2億コンピューティング時間を要し、「ベイマックス」の制作が始まったときはHyperionがうまく機能するかどうか誰にも分からなかったと語る。

 「こうした映画の制作には4年ほどかかる。われわれはHyperionを約2年で開発し、丸1年使用した。Hyperion開発の最初の1年は、これらの新しいレンダリング方法に本当に効果があるのかを確かめ、それを理想化および最適化する方法を把握するための実験期間だった。Hyperionの開発と使用は同時進行していた。それは理想的なやり方ではない。自動車を組み立てながら運転するようなものだ。最善の方法ではない。しかし、Hyperionがスクリーン上で見せてくれたアイデアとビジュアルがあまりにも印象的で魅力的だったため、『何としてもこれを実現させなければならない』と思った」(Hendrickson氏)

アーマーを装着したベイマックスに乗るヒロ。ベイマックスは映画「ベイマックス」に登場する抱きしめたくなるようなロボットだ。
アーマーを装着したベイマックスに乗るヒロ。ベイマックスは映画「ベイマックス」に登場する抱きしめたくなるようなロボットだ。
提供:Disney

 Hyperionこそが、「ベイマックス」に実写のような美しいイメージと深みを与えているものだ。同ソフトウェアが開発されるまで、Disneyは光をこのように使うことができなかった。Chris Williams氏とともに監督を務めたDon Hall氏によると、この光がベイマックスに透き通った輝きを与え、ベイマックスの内側で光が乱反射するのを可能にしているという。両氏はさまざまなテストを実施して、内側の骨格がよく見えるようになったベイマックスに観客がどう反応するのかを確認したところ、そのベイマックスが個性や魅力の多くを失ってしまったことに気づいた。ベイマックスは、柔らかく輝いているように見せる必要があった。

 「私が最初からこの映画で目指していたのは、極めて実写的な作品に仕上げることだ。『ベイマックス』は、カメラワークと照明効果を実写の水準まで押し上げ、可能な限りライブアクションカメラに近づけながらも、戯画手法を維持する好機に思えた」(Hall氏)

 「われわれは、この芸術的な杭を地面に打ち込んだ。ディテールは非常に豊かになり、キャラクターはとてもシンプルになるだろう。幸い、ちょうどHyperionの開発が完了したところだったが、テストは一度もしていなかった。誰もが試したがっていたが、Hyperionが過酷な制作スケジュールに耐えられるかどうかはよく分からなかった。『ベイマックス』はあらゆる面で難しい映画だった。Hyperionは単に機能しただけでなく、見事に機能してくれた」(Hall氏)

 しかし、ソフトウェアが機能するのかどうかはっきりしない状態で映画を制作するのは、「畏敬の念と恐怖を同時に抱かせる経験だった」とHall氏は言う。

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